準急“ながら”

著:鮎川哲也  角川文庫

本作は、作品の中に時刻表を用いた、いわゆる「時刻表ミステリー」と呼ばれるものである。実際に読んでみるとよく分かるが、1ページをまるまる使って時刻表の一部分を掲載しており、本文中では、刑事らがその時刻表をもとにして犯行方法などを議論している。

そのため、時刻表を読み慣れていない読者は、本作を読むに当たって多少の困難を強いられることになるかもしれない。

また、単純に時刻表を読んで理解するだけでなく、そこに記されている列車名そのものを眺めていても、なかなか面白い。なぜかというと、本作の時刻表を読むことによって、作品が書かれた当時はどのような列車が走っていたのかということなど、現在との多くの違いを知ることができるからである。本作は、ただのミステリー小説ではなく、鉄道史に関する資料としての価値を持っているのである。

 鉄道好きの私にとっては、本作はとても面白く感じられたのだが、一つだけ気になったのは、この物語の発端が、隕石の落下だということである。日本の鉄道という、非常に正確で、秩序に満たされたものが犯罪の舞台となっているのに、なぜそこに、隕石の落下という、どう考えても偶然としか思えない出来事が絡んでいるのかということに、私は若干の違和感を覚えたのだ。しかし、これは逆の考え方もできる。隕石が落ちるという偶然が、犯罪の解明に繋がり、必然の塊である鉄道トリックに結びつく。偶然のはずなのに、必然に繋がっている、その面白さに、私はまた惹きつけられた。


紹介者:ν村


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