「いえーいこのへたくそヤロー!」

露骨に凹みのポーズを取ってる相沢。ついつい出ちゃうはお囃子代わりのノノシリの言葉。

「うるせー!酒とか入ってっから手元が狂っただけだっての。次はキメ」

がばっとたちあがって向き直り力説の相沢。オーマジだマジ♪

「残念ながら男の子は一投だけね」

すかさず冷たい一喝で七瀬嬢。そう,ココでは彼女がルールなのである。

「えー?!」

「しかも的外しちゃったから拒否権剥奪の上一気飲みね♪」

何かものすごい色をしたカクテルグラスをずずい,と相沢に突き出す七瀬嬢。有無を言わさないその眼光の鋭さがまことに剣呑な感じ。やべえ,逆らうな相沢。殺されるぞ!

「ええー?!」

あまりに毒々しい色のソレはさすがに飲むのをためらわれる感じではあったのだが

「さー!じゃ,飲んでね?」

「ぷわっぷ!うぷ!」

口付けた瞬間にすかさず鼻をつままれて,うっかり開いた相沢の口にどむんどむん流れ込んでいく特製カクテル。

「あう」

ぱたん,とそのまま意識を失った風味の相沢。

「うっわー,何飲ませたんだ一体」

「ごらんの通りのカクテルよ?色はアレだけど,味は絶品♪」

ホントかよソレ。

「ただし,成分の7割はスピリタス(アルコール分90%超の強力なウオッカ)だけどね?」

「うわ」

「…きゅう」

相沢は目を回したように壁際に横たわる。

「はい,そんじゃ次!次!おーっと!北川君も外したねー?飲んで飲んでー♪」

「ひー!」

そーこーしながらも,異様な雰囲気のダーツゲームは着々と進行していくのでした。





#31





「えーと,『8』ね?名雪ー!クジちょんだい?」

「はーい」

そして自分の番で,ダーツの数字を確認しつつ水瀬にクジを受け取る七瀬。

「…えーと,どれどれ?お,出ました女王様ゲームー!!」

ぱー!っと満面の笑みを浮かべながら七瀬嬢。心なしか目が笑ってないような気もしないではないアタリがちょっと怖いが

「きゃー♪いやー♪」

水瀬は水瀬でわざとらしいんだかなんなんだか判断つかない妙な盛り上げ方。

「む−,じゃまですねおねえちゃ…えーなになに?なにするんですかそれ?」

相沢を構おうと姉ともみ合いになってた美坂妹が姉の目を逸らそうととりあえず水瀬に乗っかったご様子だが

「あ,まさかそれって王様ゲームみたいなのじゃ…」

不穏当な単語に思わず口をついてしまうオレ。

「すとーっぷ!北川君?分かってるのならなおさらしゃらっぷよん?」

相変わらずにっこりと笑ってない目でちっちっち,と立てた指を左右に動かす七瀬。

「えーと,で,どーすんの?」

「ふっふっふっふ。わかってるでしょ?こゆときはやっぱりキ・ス・し・か・な・い・で・しょー?!」

どこぞのお笑い芸人みたくタメをつくって,ポーズをしながら七瀬嬢。

「きゃああああああああああああ♪」

「キス」に反応した女性陣,こんどは手をつなぎ合って大喜び。

「おっけー♪しかもちゃんとく・ち・び・る・と・く・ち・び・るだよー?!」

好反応にノリノリの七瀬はさらにとんでもないことを。

「いやああああああああああああああああん♪」

「って何盛り上がってるんだそれって力一杯拒否すべきコトじゃ」

「えーと,女のひとと女のひとになる可能性が高いかとは思うんですけどもー」

思わずツッコむ,オレとこの中で割と冷静なまいしすたー。

「…うるさいわね!ちなみに私と名雪は既にキス済みよ!」

聞く耳持たない,といった風情の七瀬嬢はなにげに爆弾発言ってええええええええええ?!

「えええええええええええええええええっ?!」

「同じ部活で同じゲームさんざんやらされたんだもん。そーゆーコトの一回や二回!しかもご丁寧に舌まで入れさせられたわよ!」

なんかもう,凛々しいくらいに開き直る七瀬嬢。つい振り向いた先の水瀬は,かたくなに視線を合わせようとしない(でもほっぺは真っ赤)。

「イチゴ味でしたけどさ!」

「ええええええええええええええええええええええええええっ!!」

驚愕の一同の驚きの声は微妙に妙な熱気をはらんでいる。というかオレの股間にもなんか妙に変な熱気がってイヤ,イカン!ユリーな展開に憧れるあまり脳に妄想が!裸の水瀬と七瀬が(妄想しすぎ)!

「だからもう,失うものは何もないわよ!さー,とゆコトで,次から言うカラーボールを持ってる人は覚悟してくださいねー?!」

ヤケ気味なのかなんなのか判断つかないがもう暴走モード入ってる七瀬は止まる気配もなく。

「…コレってうまくいけば祐一さんと,しかもお姉ちゃんの目の前で合法的(?)に…」

「…そんなコトさせるワケないでしょーがこのバカ妹!いざとなりゃあたしがゴーインに!」

「…祐一と」

「…祐一さんと」

「…舞?恨みっこ無しよ?」

「分かってる,佐祐理…」

「相沢さん…」

オレの後ろで小声がちらほら(誰が誰かは言わなくてもイイかも)。っていうか潤菜!?そんなダメだぞ!こんな座興でちゃらちゃらとキスとかおにーさん許しませんよ?!ましてや相沢相手なんて!そんなそんなそんな!←錯乱中

「7番とー」

ななばんかー

………。



ん?

7?

「…」

はた,と見てみるボールの中には「なな」と大きめに数字が!

「え?オレ?!」

思わず上がる快哉!え?!!マジマジマジマジコレって掌中の玉?!!!

「ちょ,ちょっとまってよ,7番確か相沢君のはずじゃ」

「何で北川君なのー?」

「し,知らないわよ!大体確認役は名雪でしょー?!」

「ど,どうするんだよー?」

「仕方ないじゃない最悪あなたの番号は外したげるから,じゃ,行くわよ?」


なんかごにょごにょ言ってる舞台側の声が舞い上がるそのときのオレに聞こえてみようはずもなく。だ,だってさ,キスだよ?クチビルとクチビルだよ?しかもみなさんキレイドコロばっかりだよ?空くじ無し豪華景品な感じなんだよ?!

「…9番!」

そして読み上げられる運命の番号!,さーだれ?誰なの我が愛しの君は?!

…しーん

「えーと,誰ですかー?」

えー,そんなー?!や,やっぱオレはだめなのー?相沢とじゃなきゃやなのー?←動揺中

「倉田さんは?」

はい,と見せるその番号は『1』。あーん!お嬢様ー!お嬢様ああああ!

「川澄先輩?」

『3』。いやあああん!あの迫力のすたいると童顔は実はかなり!かなり好みだったりするのにー!

「秋子さん?」

『5』!あ,ああっ!け,結構熟女も良いなーとか思ってたのにー!

「潤菜ちゃん?」

『2』。倫理的に問題あるけど他の何処の馬の骨に奪われてしまうくらいならいっそ!いっそこのオレが!←シスコン魂百まで

「美坂さん?」

『4』!!あーん!たとえ相沢のものだっていいからー!一回だけでいいからー!←語弊あり

「栞ちゃん?」

『6』!何よりも美坂と同じ遺伝子だし全然ウエルカムなのにー!!

「私…はちがうか。8番だし。えーと,名雪?」

と,水瀬に振る七瀬。うう,こんな暴走女だけど見てくれは水準どころか彼女にして連れ回せたら最高な感じなくらい素敵に良いのにいいいいいいい!

そんな水瀬はふるふると首を振りながら,『10』…うう,水瀬ならかなり鉄板でファーストキス(異性相手)だと思ったのにいいい!

………。

…。

…アレ?

…って,ちょっと,

…ちょっと待て。

「残るは…」

…壁際にぐったりともたれかかるそいつの手の中から七瀬嬢がもぎ取って確認した番号は…。

『9』

「相沢君だ…」

え?…ちょ,ちょっと待って?!何で確率1/10を外しちゃうの?ってかそんな可能性頭の片隅にも考えてなかったよ?!

「くす♪…コレって奇貨ってヤツ?」

…にっこりと,イヤ,にんまりと笑う七瀬。

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「んふー?」

腰を抜かしてすくりーむなオレに,じりじりとにじり寄ってくる笑顔の七瀬。

「んふふふふふふ♪」

「ろーじーな世界だね?」

「そだね。コレはコレで良いね♪」

同じくにっこりと取り囲んでくる水瀬をはじめとした女性陣。

「き・た・が・わ・くーん♪」

「いやーん禁断且つ背徳の」

「美少年同士のお耽美な!」

「勝手に盛り上がってんじゃねーよ!」

じょ,冗談じゃねえ!一歩また一歩と後ずさるオレに,包囲網は徐々に狭まってってイヤあああああああああああああ!本気でいやあああああああ!

「やだー!断固拒否するー!!」

いーやーだああああああああああ!

だって!だってオレまだ!

「往生際悪いよー?」

にっこりと笑ってオレの腕を取る七瀬。

「そだよ?決まったことは,守らなきゃ♪」

がしっとオレの左腕をホールドの水瀬。

「そ,そだ!きょ,拒否権!」

「だーめ♪北川君もう拒否権ないんだよ?」

あ,ち!ちきしょ!

「じゅ,潤菜!た,助け…!」

救いを求めるように輪の外にいる妹に声を!お前だって自分の兄が男なんかと

「…わ,私何も見てませんから!」

露骨に目を逸らすまいしすたーってコラ!テメー肉親の窮状を見て見ぬ振りってそれでも家族かー!

「裏切り者おおおおおおおおおおおお!」

叫びながらも大量のアルコールに力が入らないオレのカラダ。こ,コレがまさか狙いだったのー?

「み,美坂!良いのかお前自分の彼氏が男なんかと!」

「…ま,同性だしノーカンかな?」

…目を合わせようとしない美坂姉。お,お前それでも相沢のハニーか!ってアンタ,相沢が変な道に目覚めてもイイって言うのか!ってか相沢!お前もちゃんと抵抗を!

「すー」

っていやあああああああああああああああああああ熟睡?!

「さー♪」

「さー?!」

…必死の抵抗も及ばず,女性とは言え数人がかりの腕力に既に抗える筋力のないオレに相沢の唇が近づいてきて

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ♪♪♪」























「………」

思い出したくもないよな宴の夜は更けて,ココは身も凍えそな真夜中の家路。

「…」

…気まずい。陵辱にあった後の背中を妹に見られながら帰るのはひっじょーに気まずい(さすがにあれ以上のことにはなんなかった)。

「…えーと,お兄ちゃん?」

沈黙に耐えかねて口を開く裏切り者のまいしすたー。

「ま,まあ,長い人生の青春の一ページだと思えば」

「うわーん!うるさーい!よりによって男にキスを奪われるなんてそんな一ページなんかドブにでも捨てた方がナンボかましだああああああああああー!!」

「お,お兄ちゃん?!落ち着いて?!」

始めてだったのにー!!!ファーストキスだったのにー!!!!!!!!!!(飲み屋のおねーちゃんとかのぷろの人はのーかうんとで)

「…ま,まあそのうち良いこともあると思うよ?生きてれば」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああん!」

「まーコレもまたもーちょっと経ったらきっとイイ思い出に」

「なるとか思えるほどオレは大人じゃねーよちきしょおおおおおおおおおおおおおお!!」

「わー!お兄ちゃん!ソレ電柱だから!死んじゃうからー!気を確かにー!!」

…額から血をだらだら流しながら,妹にこんな形で慰められることになるとは思いもよらなかった,ソレはいろんな意味で凍えるよに寒い,12月の夜のことでした。

その後おうちで記憶がなくなるまで飲んで泥のよに眠ったことは言うまでもないよね。

くすん。

ひっく。←寂しげ







30話にもどるー。    32話につづくー。



Back