「はいはい皆様ー!宴もたけなわでございますがー!!」

元気の良い声に振り向いてみれば,ソコには適度にお酒も入り,両手を顔の前にかざし上機嫌の七瀬嬢。

「ますがー!」

とは横で続けて水瀬嬢。コチラの方も,なんというか七瀬さんにノリを合わせてイイ感じ。

「?」

お二人が司会業(?)に回っちゃったのでオレの横でちょこんと座ってノンアルコールカクテルをちうー,とストローでいただきつつ二人をご注視のマイシスター。

「ちょいとこちらにご注目くださーい!」

ぶんぶんと手を振り回して七瀬嬢。

「さーい!」

ポーズまで合わせて水瀬嬢。なんか,こうテレビで見るタレントさんとかでそーゆーのがいたよな,とか思いつつ。





#30





「はい!せっかくこうやって皆々様お集まりのトコロ,ただただ飲んで終わらせるのはもったいないとゆコトで,ゲームなんかしてみたいかと思いますー!」

「ますー♪」

ソレはもう指先までぴったりと,な対称系。す,すげえシンクロぶり!これだけでなんかもうお金とか取れそーな感じ。

「さあ,祐一さん!来年はもうこんな地獄のような思いをしておねーちゃんなんかと付き合ったりしなくても,私がちゃんと身の上から身の下までしっかりとお世話させていただきますから!」

そのトイメンには飲んじゃいけないのに飲んでるのか,頭に血が上りきってるのか知らねどぷんすかな感じの栞ちゃんが相沢の左手を。

「何ですってー?!そ,そりゃ今は忙しくてあんまりお部屋の掃除とか行ってあげられないけど来年にはちゃんと近くのお部屋に引っ越してバイトも減らして目覚ましから伽の相手までしっかりとこなすんだから大きなお世話よー!」

右手側には何げにとんでもないことをわめきながらその姉君。

「あははーっ!舞?負っけませんよぉー♪」

とは,相沢の首にじゃれつきながらにこにことワイングラスを掲げてこくこくと倉田先輩。あー,あーっ!い,良いなあ!相沢あああああ!!

「…私も,負けない!」

こっちはこっちで相沢の右足に腕を絡ませつつ升に日本酒の川澄先輩。この角度だと見えそで見えないデニムミニスカから覗く引き締まった生足フトモモがまぶしいやらなんやらで微妙に

「おにーちゃん,やーらしー」

外すに外せない視線に入るツッコミに振り向いてみれば白い目線のまいしすたー。それはなんかもう,虫とかそゆのを見るときのあの冷たさの!

「あ,バカ,コレはちが」

「…あれだけあからさまなチラ見で違うは無いと思うけどなー?」

な,なんて目聡いんだまいしすたー!…で,でもそゆコトは人様に聞こえるよに言うんじゃねえ!ほ,ほら,兄にもやはり世間体とかそゆのが

「はーい,そこで修羅場ってる仲の良いご姉妹も仲良く飲み比べてるおねーさま方もケンカ寸前の兄妹もみんなまとめてこちらへ注目プリーズ?」

多分,いや絶対聞いてなかったと思う,相沢を巡ってやり合う美坂シスターズもすでに飲みまくりの先輩ズもこの時点でようやく七瀬嬢のアピールに気づく。

「あ,ちょっとこら!祐一!ハナシまだ終わってないのよ?」

「おーおーおーおー,ねえねえ何やんの何やんの?」

コレ幸いと美坂シスターズと倉田川澄先輩コンビの間から抜け出て七瀬嬢の元へ音速で相沢。

「お,おまえさっきまでべろんべろんだったじゃん?」

「そんなんパツイチで醒めたわ!そんなんよかげーむげーむ!」

ってかアカラサマにソレ,現実逃避だよなー。ま,何となくわかんないでもないけどもさ。

「はーい,それでは皆様ゲームに先立ちましてー」

「ましてー」

「まずココのカラーボールのくじを引いてくださいませー。中に番号の入った紙が書いてあるので,ソレを人に見せたりしちゃダメですよー?」

と,七瀬嬢のご説明の中,水瀬嬢が差し出して回るのはいわゆるガチャポンの透明の部分までシールされて中の見えないカラーボール。

「はい」

「ほい」

「はい♪」

「あ,はい」

差し出されるままにみんなボールを取っていく。

「はい。それじゃ,みんなボールが行き渡りましたねー?それじゃ,ルールを説明しますー」

七瀬嬢が,ダーツ前に戻った水瀬に目配せしてホワイトボードをでぃすぷれい。

ぽこぽこきゅっきゅ,とルールらしきものを書き出していく。

「さて,みなさんこれからダーツをしていただきますけれども,ちょこっとフツーのダーツと変わってるのは,真ん中に近いからと行って特に得点が高いわけではないってコトですね。ど真ん中はまた別なんですけど」

「ふんふん」

「えと,的には番号が振ってあるのが分かるかと思いますが」

同心円状の丸目になってるのはフツーのダーツと変わらないんだけど,的自体がかなり大きなアタリはぱーてぃげーむ用と言った感じ。あと不自然なくらいカラフルだし,何よりも大きくランダムに1,2,3と番号が振ってあるのが印象的だ。

「順番にダーツを投げてもらって,番号の大きな人から順番にくじを引いてもらい,ソコに書いてあるとおりのコトをしてもらいますー♪」

にこにこと七瀬。わー,と小さく水瀬も拍手で盛り上げようとしてるが何が楽しいのか正直よくわかんない。

「ちなみに,拒否権は女の子3回,男の子1回ねー?」

「…ちょっと待て拒否権って何だ?」

にこやかに流されようとした微妙に不穏当な単語に反応の相沢。

「まーまー,相沢君,パーティーなんだし細かいことは無しってコトで!座興よ座興!」

「そだよ。男の子が細かいコト,言っちゃだめだよー♪」

「う」

え,ええ?!そこで引いちゃうの?だいじょうぶか?あの笑顔なんか黒いぞ?七瀬なんか今ちょこっと舌とか出してたし!

「さー,それじゃはじめましょー!」

「ましょー!」

…なんか不安だにゃー

ちゃーっちゃーちゃららーらーちゃーっちゃちゃらららら♪
…およ?携帯の着信音?

誰だろこんな時に,と,とりあえずディスプレイを確認するとソコには

『まいかちゃん』

…………←血相鮮やかに変化

「あー!ちょっとまてっ!どこ行くんだ北川!」

「あーちょっとごめんよすぐ戻るー!」

事と次第によっては戻ったりなんかしないけどな,とか思いつつ音速で部屋の外に駆け出すオレ。

「いやー!!ひとりにしないでええー!」

うっさい!お前なんかソコで美坂の嫉妬地獄でも食らうがイイさ!





水瀬家のリビングのドアを閉じるが否や,軽く一つ深呼吸をして電話に出るオレ(この間ふぁいぶこーる位に納めた自信がある)。

「…はい,もしもし?」

「あー,どうもですーこんばんはー♪神楽坂ですけどもー」

あーもう,なんてかわいいお声なんでしょうか!

「お,こんばんはー!どしたの舞佳ちゃん?」

極力冷静を装いつつちょっと嬉しい感じを演出してみたりしつつ気のない風を装ってクールな感じをってごめんなさい心臓とか結構バクバクですやっぱすげえうれしかったんですぅっ!

やっぱ無理!顔とか歪む!押さえるの無理!

「あ,えとですねー,香里…美坂さんに連絡とれませんか?ちょっこと年明けのバイトのスケジュールの確認しないといけなくなっちゃったんですけどー,急ぎのメール打っても携帯入れても相沢君の携帯に連絡入れてもダメだったんで,北川君なら何とかなんないかなー,と思って」

あ,なるほど,ありゃたしかに二人とも連絡取れないっぽいもんなー。

「うん,今二人とも近くにいるから呼んできてみるね」

「わー,ありがとー♪」

電話の向こうは心底嬉しそうな声。オレに用事じゃなかったってのは期待はずれだったけど,やはり舞佳ちゃんの喜んでるときの声ってのはいいもんだよー。

「ん,ちょっと待っててね?」





あとは音速でとって返して部屋の中。盛り上がる女性陣の中で比較的不機嫌な美坂にその旨伝えて携帯を渡し,部屋に戻るオレであった。ちょっと,残念ではあるけども。





「…と,いうわけだったんですよねー?」

「…うー,酷いよおかーさん,そーゆーお話は拒否権使ってよー…」

入るソコには微笑ましい感じで笑うみんなと秋子さん。部屋の隅では膝を抱えて壁に体育座りで床にのの字の水瀬嬢。

「およ?どしたのアレ?」

「…『自分の家族の恥ずかしいハナシ』で秋子さんの名雪ネタな?もー名雪怒るの怒らないの!ってあた!あたたたたたたたた!!」

「もー!祐一きらーい!!」

話そうとする相沢にそうはさせじと手近なぬいぐるみとかをぽんぽん放る水瀬さん。

…な,なんだったんだろう?気になんないと言えば嘘になるが,帰ってこない美坂もそのお相手の舞佳ちゃんもちょこっと気になったり。

それからは,倉田先輩の高校時代の失敗したハナシやら我が妹の即興小話,川澄先輩のじゃぐりんぐや美坂妹の即興俳句とかもうどー言うセンスでバツゲームを考えてんだか何でこんなんで盛り上がるのかさっぱりわかんない展開楽しい時を過ごして気がつけば相沢の番とかに。

「んー,これをあれに投げれば良いんだな?」

「そだよ」

「…ど真ん中に投げると,何か良いことあるの?」

「あるかもね?」

「おーし」

そこはそれ,コントロールが生命線の横浜スカイレイダースの中継ぎエース,相沢のプライドをくすぐるそのシチュエーション。結構酒が入っててもうまくいっちゃうのかどーか。

「どーらっしゃー!」

気合い一閃相沢の投じたダーツが刺さったのは,

「あ,大ハズレ」

「のーーーーーーーーーーーーー!」

…的の外でした(拒否権剥奪らしい)。









29話にもどるー。    31話につづくー。



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