乾杯の後はどんちゃん騒ぎ。どう確認しても性別♂はオレと相沢しかいないという非常に嬉しい状況にもかかわらず,誰かとそう言うほのラヴい空気になんないのはナニユエか?
つうかナチュラルに女の子達は相沢周辺なのは一体どゆ
「ぶ!」
「わははははははは!何辛気くさい顔をしてやがるんだコラ!飲め飲め飲め飲めー!」
釈明を求めようと相沢に近寄ったのが運の尽き,思い切りウイスキーのボトルを口にぶち込まれるオレ。
「ん〜〜〜!!」
どむんどむんどむん。ノドに流れ込むグレンの濁流。スモーキーかつほのかに香る琥珀色の液体がむせかえらんばかりに胃の中へ。
「げほんがほんこのバカごほ!」
「あだ!」
反射的に相沢のアタマを殴るオレ。ばっきゃろコレ,マジできついんだぞ!
「痛いー」
頭を押さえながらも全然コタえてない様子の相沢。
けらけらと笑う相沢はもう完全に出来上がっちゃってるご様子。
#29
「…お,そ言えば潤菜ドコ行った?」
確か未成年の方がはるかに多いはずなのであるが,もう皆さん適度にお酒も入って会話やらなにやらに咲き誇る花も満開なご様子。
「高校生以下は,遠慮していただきましょうかしら」
という家長様の有難い一言で無礼講と相成る現在ではあるのですが,如何せんまだ中学生にさすがに飲酒は
「えー?名雪さんと七瀬さん,○×市立大の陸上部なんですかー?私も○×高校入ったら陸上はいろって思ってるんですよー?!」
「あ!すると後輩になるんだー?!」
「はい♪今度推薦で受かりましたー!」
「今でもたまにわたし高校にコーチに行くよ?それじゃ,一緒に走れるねー?!」
「わぁ!そーなんですね!来年からよろしくお願いしますー!」
きゃあきゃあと楽しそうなマイシスターと七瀬嬢に水瀬。
…新たな友好関係を築き上げてやがる。いいなー。
…見たところアルコールも入ってる感じではないのでソッチはひとまず安心かしら。
ま,大体どーせこゆ時に飲ませようとするなら相沢とかその辺だろうからヤツのクビにさえ鈴付けときゃいっかー。アレ…相沢は?
「あははーっ!祐一さん,全っ然飲みが足りてませんよーっ!!」
かわいらしくもシッカリと酒瓶を抱えているのは倉田先輩。相も変わらずころころと笑いながらはしゃいでいるものの,やってるコトは結構強引(相沢のグラスを空けないように飲ませ続けてる)。
「祐一,弱い…」
とは,頬に赤みはさしているモノの,酔っぱらいという表現とはほど遠い川澄先輩。
「う,うう,もうボトル3本目ですよどーなってるんですかこのウワバミねーさん達」
げ,もう,そんなに?!
「あー,『ウワバミ』はヒドイですよ祐一さん?さ,飲んで飲んでー♪」
「…美味しいのに」
おお,先輩ズにとっつかまってもの凄く飲まされちゃってますよ相沢さん。しかし,わかってたこととは言え強い強い先輩ズ。見ればそれ以外にもカクテルグラスその他が周囲に散乱。一体どれだけお飲みになっていますことやらやら。
「んじゃ,元気でなー?」
「う,裏切り者ー!俺を置いていくなー!」
「まあまあ,飲みましょ?祐一さん?」
「祐一,私たちと飲むのはイヤ?!」
おお,W攻撃。コレはかわせまい。せいぜいがんばりやー♪
さてさて,んじゃオレは美坂さんと友情を深めることとしましょうかねー?し,シタゴコロはないよ?ほ,ホントだよ?
「おーい,みさ…」
「…お姉ちゃん,祐一さんとはまだ別れないんですか?というかいい加減につきまとうのをやめませんか?!コトと次第によっては私,許しませんよ?」
「…あんたが許さなかったから何だって言うのよ?タダでさえドコで何やってんだかわかんないアイツに頭痛いってのに!」
その先には,なにやら険悪な雰囲気のシスターズ。さっき捨ててきた我が相棒がらみのオハナシであろうコトは日を見るより明らかだったり。
「…ソレは,もう,飽きられちゃった,ってことですかー?仕方ないですねぇ。祐一さんの心の隙間,このラブリーな私が埋めて差し上げましょう!苛烈な束縛を仕掛ける,安らぎのカケラもない恋人に,心許せるひとときを求めうる相手は皮肉にもその妹!ああ,なんて神は残酷な…」
「一人で盛り上がってるところ悪いけど,これほど理想的なプロ野球選手奥さん候補は他にいないと言うお友達からの好評価をいただいてるわよ?」
「ソレがリップサービスじゃないって言う保証はドコにもありませんよ?お友達には甘口な女の現実ってのから目を逸らしてるんじゃないですか?」
「うっさいわね!ちゃんと!シッカリ!全然フツーに!完璧に!アイツとはうまくいってるんだから!」
「ほほー,とてもそーは見えませんでしたけどねー?先程の祐一さんへの暴行の数々を見てるとー」
「…し・お・りー?ちょっと逢わないうちに随分巨大な口をきくようになったわねー?なんて言うかメガマウス並み?」
「そんな世界でも数例しか捕獲例のない珍魚と一緒にしないで下さい!…ふふふ,ソレよりも良いんですかお姉ちゃん?私,こないだの模試でお姉ちゃんの大学A判定だったんですよ?しかも推薦もらえちゃったんで,当然,受験しますからそのつもりで!さっき妄想と笑ったことを,絶対後悔させてあげますから!」
「ふふん,そのギガマウスは大学受かってからにしてもらいましょうか?」
「桁が上がってる?!」
「あと祐一の好みにはまだカップが3さいずは足りないみたいだわね?」
「…しっつれいですねー!!コレでもちょっとは大きくなったんですからー!!」
「足んない足んない!そんなんじゃぜんっぜん足りない!」
「じょ,女性の価値はソコだけじゃないんですよおねーちゃんっ!!」
「でも重要な要素よ!少なくとも祐一にはね?!」
「………!」
「……!………!!」
「………」
そりゃもう,いろんな意味ですんごい二人に,かけようとした声も凍り付き固まってるオレ。
「…あら,どしたの北川君?」
言い合いのイキオイもそのままに,適度に混じるアルコールも相まって非常に剣呑な目つきの美坂(姉)さん。
「…な,何でもありませんっ!サー!」
「…サー?」
「ノ,ノー,マム!」
「…ん,よろしい」
こ,怖ええー。すっげえ怖ええー。殺されるかと思ったー。
「あ,ダーツゲームとか有るんですねー?」
潤菜が壁に貼り付けてあるダーツに気が付いたのは,それから小一時間ほどが経過して,皆さんのひーとあっぷがそれなりに落ち着いてきたときのこと。
「あ,うん!今日は賑やかそうだって思ったから,部室から借りてきたの」
答えるは七瀬嬢。大学のサークルって結構色々揃ってるのね。
「ホラ,みんななんだかんだでイベント好きだし」
なるほどー。
「そうですね。せっかく皆さん揃ってることですし,ダーツ大会でもしましょうか?」
とは,ほんのり頬も桜色な秋子さんのご提案。
「優勝したら,何かご褒美準備しちゃいますから♪」
ソレも嬉しいご提…
「あ,そういうのじゃなくてですね」
ソレを制して七瀬嬢。
「実はあのダーツゲーム,刺さったところの番号でくじ引きして,ソコに書いてある内容のオハナシとかミニゲームとかをしないといけないんですよー」
あ,なんか昼のテレビ番組であったでっかいサイコロみたいな,あの。
「…あら,そうなんですか?」
「はい。せっかくですから,まず私から実演してみますね?場も盛り上げちゃいたいですしー♪」
「いいですね,それじゃお願いします」
「はーい♪じゃ,名雪ー?!ちょっと手伝ってー?」
「なになにー?」
七瀬嬢の呼びかけに,とたとたと走り寄ってくる水瀬。
「ダーツするよダーツ!さ,準備準備ー!!」
「えー?あれやるのー?」
結構ノリノリの七瀬嬢とは対照的に,ちょっと眉をひそめる水瀬。
「せっかくだからいーじゃん。ささ,早くぅ♪」
「でも,恥ずかしいよ…あれー」
おりょ,結構ご抵抗。んでも,『恥ずかしい』ってなんじゃらほい?
「ちょっと,名雪!」
「あ」
「えーとね,これはうまくすると…」
オレの視線に気付いたのか,水瀬の肩を引っ張る感じで部屋の隅でごにょごにょとご密談のお二人。
なんというか耳をそばだてても周囲の賑やかな嬌声も相まってよく聞こえない。
「………」
「…!…」
「…うん,わかったー」
なにやら覚悟を決めたっぽい水瀬は,胸前で可愛くガッツポーズ。七瀬は,何かワルダクミしてそうなほのかに黒い笑顔。
「…」
しかしながら,ソレの意味するトコロなんか全然解っちゃいない,オレ及びのんきな皆様(七瀬嬢と水瀬以外)なのであった。
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