| ひとりでいたい、と思う時がある。 理由は様々。辛い時、悲しい時、場所も時間も選ばず、誰とも顔を合わせたくなくなる。 孤独とは違う、小さな寂しさ。 あたしには縁のない気持ちだと思っていたんだけれど。 今、あたしはひとり部屋の中に閉じこもっている。 たった、ひとことだけ。 事の発端は四時間ほど前。 放課後、いつものように彼を待っていた。 一分、二分…………五分、十分。 用事は掃除だけなのにいつまで経っても来ないので、探しに行こうと思った時、彼が出てきた。 声を掛けようとして、走り出そうとして、その瞬間隣にいた人に目が止まった。 上級生。確か、倉田佐祐理さん。 彼女と一緒に歩く彼は、笑っていた。優しく笑っていた。 気づいた時には、彼とは逆の方向に駆けていた。 告白をされたのは、二週間前。 「好きだ」なんてありきたりな言葉を、あの相沢くんから聞くことになるとは思わなかった。 あたしの返事はイエス。 ……だって、明日自分から告白しようと考えていたんだから。 それから、ささやかに"お付き合い"をすることになった。 朝一緒に登校するのは無理だけど、昼食を二人で食べて、放課後には並んで帰って。 まだ小さな一歩だけど、少しずつ歩み寄っていけばいい。そう思ってた。 あの光景。 彼があたし以外の女性に微笑みかけるのが、嫌だと感じた。 その笑顔は、あたしだけに向けていてほしい。 …………ジェラシーなんて、持ってないと思ってたのに。 「ただいま」も言わずに玄関のドアを開け、乱暴な足音を立て階段を駆け上がる。靴は蹴り飛ばすように放った。 きょとんとした栞の横を通り過ぎ、部屋に入ると同時に扉を思いっきり力任せに閉めた。 ドア越しに聞こえてくる栞の声。 「どうしたの、お姉ちゃん?」 「何でもないわ。……………………今は一人にして」 ほとんど何も答えずに、言葉ひとつ残して、跡から聞こえてくる声を無視しベッドに倒れ込む。 天井を見て、大きくため息をついた。 妙に覚醒した頭。不貞寝してしまうにはしばらく掛かるみたい。 それでも視界を塞いで、何も目に入らないようにした。 今聞こえるのは、アナログな針時計の定期的な音だけ。 ちくたくちくたく、メトロノームが動いているよう。 目は冴えたまま、眠気も訪れない。 どれくらいこうしていたかもわからず、ただ閉鎖的な空間に響く、時計の作動音を知るのみ。 長らく、その行為に埋没していた。全て忘れるために、あの感情を消して明日からはまたいつもと変わらない日々を迎えるために。 不意に、ドアが開いた。 入ってきたのは…………相沢くん。 「……一人にしてって、言ったのに」 小さく呟く。 でも、その声を彼は無視して、 「なぁ、香里…………………………ごめんな」 突然謝った。 「何が"ごめん"なの?」 「…………見てたんだろ? 俺と佐祐理さんが一緒にいたところ」 ぶっきらぼうに訊くと、彼は思いがけないコトを口にする。 どうやら、走り去っていく後ろ姿を見られたらしい。 彼の顔を見る。バツの悪そうな、しかし真剣な表情。 こちらの全ては向こうにお見通しな気がして、少し嫌な気分になった。もともと不機嫌だったのに。 「……………………それが、何なのよ」 「言い訳は後でする。…………ひとことだけ、先に言わせてくれ」 彼は少し息を吸って、部屋の窓を開けて顔を出して、叫んだ。 「俺は、美坂香里を一番愛してるからなーっ!!」 エコー。 ちらっと外を見ると、通りすがりの人々が声のしたこちら側を凝視している。 ――――――自分の顔は、すぐに真っ赤になった。 …………ホントにもう。 やっぱり彼は凄い。このもやもやした気持ちを、一瞬で取り去ってしまうんだから。 「どうだ?」 自信満々といった様子でそんな台詞を吐く彼の顔を、こちらの表情が見られないように俯いてからごついた。 「それじゃ言い訳。掃除が終わってそっちに向かう時、佐祐理さんに呼び止められたんだよ。ちょっと荷物が重いので運ぶのを手伝ってほしいってな」 「あたしのために断るぐらいしなさいよ」 「困ってる女性を放っておけないのが男の性ってもんだろう?」 「はぁ…………どうしてこんな人を好きになってしまったのかしら」 これからも少しずつ、何度も衝突していくのだろう。 そして、その度に乗り越えて歩み寄っていく。 ……まぁ、とりあえずは一歩前進ね。 Rodmateさんページ開設記念ってことで、こんなモノを書いてみたのですが如何でしょうか。 ダメっぽいのはわかってます。駄作なのは痛いくらいに知ってますから気にしないんです。 とりあえず補足説明すると、一応舞シナリオも少しこなしてるんですよ。 時期的には栞エンドの三週間ほど後、卒業・終業式の少し前。 舞シナリオにも触れているので、佐祐理さんとも祐一くんは面識があるみたいです。 しかし一応香里さん一筋になってもらいました。頑張れ香里さん。祐一くんは鈍いぞ(ぉ こんなモノでも受け取ってくだされば幸いです。 ではでは、またー。 Back |