6/なみださがしのおはなし。

どこかにあるはず、
        みつけたいもの。






ぼくには、さがしているものがありました。
あてもなく、ただひたすらに。

どこかにあることはわかっているのです。
でも、それだけ。

近いのか遠いのか、高いのか低いのか、ちいさな手掛かりさえありません。



見つけたいのは、なみだ。
昔にふとした拍子で失くしてしまい、行方のわからなくなった、ぼくのなみだ。

大切でした。でも、手離してしまいました。
失くしたことに気づいた時はもう遅くて、それから今まで必死に見つけようとしていました。ひとりで。


その頃には半ば諦めかけていて、探すこと自体をやめようとしていたのです。











ある日突然、会ったことのない少女が現れました。
彼女はぼくの手を取って走り出します。
「どこに行くの」と訊ねてみても、答えは返ってきません。

これまで一度も通ったことのない道を、ぼくたちは駆けていきます。
たくさんの景色を過ぎ、ようやく彼女は止まりました。


そこは一面真っ白な世界で、ところどころに扉があります。それは地平線の向こう、ここからは見えないずっとずっと先まで続いているように思えました。


「ここには何もかもがある。あなたのさがしものも、きっと見つかるよ」
「…………うん、そうかもしれない」

ぼくは彼女の言葉を信じました。本当に見つかるような気が、しました。











ふたりで、ぼくの失くしたものを探し始めました。
ひとつずつ扉を開けては、違うと知って閉める。その繰り返しです。
何度も何度も、様々な色や形や大きさをした扉に触れて。


そして、ついに見つけました。

どこにでもあるようなこの小さな扉の向こうに、ぼくのなみだはあるはずなのです。



でも。



開けるのは、なぜか躊躇われました。
大切だけど、本当に必要なのかどうか、本当にぼくが探していたものなのかどうかがわからなくなったのです。

「…………ぼくは、しあわせだから。だから、なみだなんて、いらないのかもしれない」

口に出してみると、ああ、確かにそうなんだ、ぼくはしあわせなんだ、と強く感じました。


―――――― それでいい、と思いました。


そっと、扉から手を離すと、彼女は心配そうな顔で。

「…………いいの?」
「うん。今は、なみだがなくても、いい」
「わかった。でも、いつかあなたが必要だと思ったら、ここに来てね」

彼女は笑いました。


だからぼくも、笑いました。











これから先、ぼくが望むその時まで、なみだは拾わないまま。


でも、もう見つけてはあるから、彼女はあそこで待っているから、いつの日か。





また、ちいさな"なみださがし"をしよう。