Kanon大戦 〜第二次降魔戦争〜





雪が舞う。ゆっくりと柔らかく。街を白く彩り、寒さとともに降り立つ。
人々は白い息を吐きつつ街を行き交う。
そんな光景を、駅前で1人の男が見つめていた。

「7年振りか…」

男…相沢祐一はそうつぶやいた。





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第1話「雪の舞う都市」





『朝〜、朝だよ〜、あのヂャムはここの地下工場で生産されてるんだよ〜』

パチッ!
目覚まし時計を止めて祐一は起き上がった。

「今日から学校か」

そう言って、真新しい制服に着替えて部屋を出た。一階に下りてリビングに入る。

「祐一さん、おはようございます」

「おはようございます、秋子さん」

キッチンで水瀬秋子が朝食の準備をしながら挨拶をした。
水瀬秋子、水瀬家家主である。年齢不詳。聞いた者は存在し得ない。
祐一は椅子に腰を下ろし秋子に尋ねた。

「名雪はまだ寝てるんですか?」

「はい」

「あれでですか?」

「はい」

祐一は一階に下りる前に名雪の部屋の前で大量の目覚し時計の音を聞いていた。

(あんな音の中で眠れるのか?)

「眠れるみたいですよ」

「……………俺、声に出してましたか?」

「いいえ、出してないと思いますよ?」

祐一は黙った。何かを言いかけたが秋子の言葉がそれを遮った。

「名雪を起こしてきますね」

秋子はリビングを出ていった。

少しして秋子がリビングに戻ってきた。その後、眠そうなパジャマ姿の少女・水瀬名雪が入ってきた。
水瀬名雪、祐一の従姉妹、秋子の娘である。並大抵の事では朝、目を覚まさない。秋子がどうやって起こすかは機密である。作者の友人、こでポン(仮名)がなかなかにお熱なキャラでもある。
名雪が椅子に座る。

「おはよう、名雪」

祐一が挨拶をした。が、返事は無い。

「名雪?」

「………くー」

寝ていた。

「寝るな! 名雪!」

「うにゅ」

「うにゅ、じゃない」

しばし沈黙。

「おはよう、祐一」

名雪がやっと返事をした。そこへ秋子が朝食を運んできた。メニューはトーストとコーヒー。あとは通常のジャム、マーガリン。おそらく、某お米族が「がっくり」していることだろう。

「イチゴジャム〜」

名雪が嬉しそうにトーストにぬっていく。祐一はコーヒーに口をつけどうしようか考えていた。

(ジャムかマーガリンか)

とりあえず、1枚目はマーガリンにした。2枚目は食べながら考えるつもりなのだろう。
どうしようか考えていると秋子が突然、祐一に言った。

「祐一さん。とっておきのヂャムがあるんですが、試してみませんか?」

「えっ!!!」

反応したのは何故か名雪だった。

「お母さん、私、もう行かなきゃ」

そう言って、名雪は急いでリビングを出ていった。祐一は時間が無いのだろうと思って、

「すみません、秋子さん。時間が無いみたいなんで俺も行きます」

「あら、そうですか。残念です」

「今度お願いします」

「わかりました。いってらっしゃい」

祐一もリビングを出ていった。





家を出て祐一と名雪は学校に向かっていた。

「時間あるのに何であんなに急いでたんだ?」

祐一は名雪に尋ねた。当然だろう。

「祐一もあのヂャム食べれば分かるよ」

「?」

祐一は名雪の言っている事の意味がわからなかった。祐一は話を変えた。

「なんで急にこっちに来させたんだろう」

「さあ?」

名雪はそう答えただけだった。
相沢祐一は冬休みに入ってまもなく、両親に言われるがままにこの街に来た。冬休みだけかと思っていたが、そうではなく、転校届を出し、完全に「引越し」て来たのである。どうしてか理由を聞いたも答えてはくれなかった。

「でも、頑張ろうねっ」

名雪が笑顔で言った。

「ああ」

よく分からなかったが祐一はそう応えた。

(そういえば昨日、あゆにも同じようなこと言われたな)

あゆ…月宮あゆ、7年前この街で祐一と出会っている少女。羽リュックと呼ばれる特徴のある鞄をかるい、ダッフルコートを着ている、小学生ぐらいに見える少女。作者の友人、亮にいが最も萌えているキャラである。
昨日、祐一は名雪に街の案内を頼み商店街に行ったとき、月宮あゆとどいて、ドン、ベチャ、うぐぅ、という7年振りの再会をはたしている。その別れ際に「一緒に頑張ろうね」と言われたのである。

(一体何に頑張るんだ?)

祐一がそんな事を考えているうちに二人は学校に着いた。校舎に入り、名雪は祐一を職員室まで案内した。これは祐一が転校生だからである。名雪は祐一と別れ、教室に、祐一は職員室に入り、色々と指導を受けた。祐一は名雪と同じクラスだった。


朝礼が終わり、祐一は名雪と話していた。祐一は、自分と名雪が従兄妹同士であり、同じ家に住んでいることがばれている事はすでに気にしていなかった。
1人の少女が2人に声をかけた。

「おはよう、名雪」

「あ、香里、おはよう」

美坂香里、名雪の親友。まだ登場していないキャラの姉。学年主席。作者のKanonお気に入りの1人である。
祐一と香里は自己紹介を済ませ、香里が名雪に言った。

「彼がそうなの?」

「うん、そうだよ〜」

「わかったわ。でも、悪いけど私は一時出ないわ」

「えっ? でも、それじゃ…」

「あなたのお母さんに了承は得てるわ」

「そうなんだ…。わかったよ」

「ありがとう」

祐一は何の事だかわからなかったが、会話の最初の部分から自分のことであると言うことは分かった。祐一は名雪に聞いてみた。

「何の話だったんだ?」

「え、何でも無いよ〜」

笑顔で言い返された。こう返されると祐一も何も言えない。

「また後でね、名雪」

香里は席に戻った。祐一は釈然としなかった。





授業は終了し、放課後になった。
祐一が帰る準備をしていると、1人の男子生徒が声をかけた。

「よお、朝は挨拶できなかったからな。俺は北川潤。今後ともよろしくな」

「あ、ああ」

北川潤はそれだけ言うと教室を出ていった。
北川潤、男キャラ。説明終了。

(何だったんだ?)

祐一は首を傾げつつ名雪と教室を出た。が、

「あっ」

突然、名雪が言った。

「ごめん、祐一。私、今日部活だよ〜」

「そうなのか?」

「うん、ごめんね」

「いや、かまわないぞ」

「うん。……祐一、下駄箱まで行ける? この学校、結構広いから…」

「大丈夫だ。朝来た時に覚えた」

「なら大丈夫だね。ほんと、ごめんね」

名雪はそう言うと駆けて行った。

「商店街にでも寄って帰るか」

祐一はその場を離れた。





20分後。祐一はまだ校舎内にいた。

(どこだよ、ここ)

祐一は完全に迷っていた。目の前にはさっきも見た廊下が続いている。

「学校で遭難なんて笑い話にしかならねえぞ」

「その通りね」

いつからいたのか、祐一の背後で香里が言った。

「こんなところで迷ってるなんて、こんなので本当に大丈夫なのかしら?」

香里はつぶやいた。

「ん? 何の事だ?」

祐一は聞こえていたらしく、尋ねてみた。

「いいえ、何でもないわ。それより下駄箱まで送るわ」

「そうか? 助かるよ」

祐一と香里は下駄箱まで行き、そこで別れた。





夕暮れ、都市が紅に染まり始める時間。鳥が1列に並び飛んで行く。
しかし、それは鳥と呼ぶにはいびつな形のモノの列だった。





祐一は予定通り、商店街に向かっていた。特に用事はなかったが適当に見て回るのも良いだろうと考えていた。
祐一が商店街に入ってまもなく、

「祐一く〜〜ん」

声がした。直後、ベチャ。

「うぐぅ」

再び声がした。地面に羽が生えている。いや、羽を生やした少女が倒れている。

「何でこんな所で寝てるんだ? あゆ」

あゆは頭を上げる。

「うぐぅ! 寝てたんじゃないよっ」

「そんなことより、大丈夫か?」

そう言って祐一はあゆに手を差し出した。あゆは祐一の手を取り起き上がった。
「ありがとう、祐一君」

起き上がったあゆに祐一は
「しかし、ほんとドジだな。あゆ」

「うぐぅ、ドジじゃないもん」

「でも、昨日もこけただろ」

「うっ……、ぐ、偶然だもん」

「ほおー、偶然ねえ?」

あゆが黙った。返しようがないようだ。それを悟ったのか、祐一が切り出した。

「で、お前は何をしてたんだ?」

あゆはほっとして、答えた。

「祐一君を見つけたから走ってきたんだよ」

「そうじゃなくて、商店街で何してたんだ?」

「ボクはさっき来たところだよ。祐一君は?」

「俺も今来たばかりだ」

祐一は何をしようか考え、

「あゆ、たい焼き食べるか?」

「うんっ!」

「わかった。買ってくる」

「あ、ボクも行くよ」

2人が歩き出そうとした時、何かの電子音が響いた。呼出音のようである。
あゆが慌てて左胸の上側を触った。そこには妙な形をしたバッジのようなものがついていた。

「何かあったの?」

あゆが言った。

「はい」

秋子の声がする。

「説明するので戻ってください」

「うん」

「そこに祐一さんがいますか?」

「うん、いるよ」

「わかりました。2人転送しますね」

秋子がそう言うと2人の体が輝き、透けていき、消えた。





次の瞬間、祐一とあゆは妙な所にいた。様々な機械。この街の地図を映し出している巨大なスクリーン。地図は部屋の中央にある巨大なテーブルにも映し出されている。
祐一は自分の服が変わっていることに気付いた。白地に金の縁取りがされていて、軍隊の儀典などで使う礼服のようであった。それでいて身体にぴったりフィットして動きやすい。

「祐一さん、そこに座ってください」

秋子が言う。秋子も服装が違う。祐一とほぼ同じデザインだがメインカラーは黒である。

「は、はい」

祐一は言い、テーブルのひとつの席に座った。あゆと名雪も座っている。あゆと名雪の服のデザインは同じだが、祐一・秋子のそれとは違っている(ちなみに、祐一は大神仕様、秋子は帝都「1」仕様、あゆ・名雪は巴里仕様である)。メインカラーは、あゆは紅、名雪は青である。

「説明しますね」

秋子が話し始めた。

「公園に降魔が出現しました。数は5体です」

地図上、公園の位置に赤い光点が灯っている。

「噴水のある公園だね」

名雪が言う。祐一はあっけにとられていた。

「何なんですか? 降魔って」

祐一は聞いてみた。

「魔物です」

秋子が一言で答えた。

「詳しい事は今度話します。今は降魔の撃退を考えてください」

「撃退って、どうやって」

「祐一さんは刀を持ってるはずです」

「……。確かに俺の家には大太刀が2振りありましたけど」

「それです」

「でも、持ってきてませんよ」

「ここにあります」

そう言って、秋子は刀を2振り取り出した。
祐一の剣の腕はかなりのものである。流儀は二天一流。剣豪・宮本武蔵が創始した流儀である。

「これで戦ってください」

秋子は祐一に刀を渡した。

「これでいいですね。では転送装置のところに」

部屋の一角に妙な場所がある。一段高い台があり、床にはいくつかの円が描かれている。その台の上の部分だけ天井が低い。祐一とあゆが転送されてきた場所である。
あゆと名雪は台に昇り、円の上に立った。

「祐一さん、円の上に立ってください」

秋子が言う。祐一は言われるがままに立った。

「では、公園に転送します。気をつけてくださいね」

秋子が転送装置の前にある機器をあたり始めた。

「転送」

秋子がそう言うと、祐一・あゆ・名雪の3人の体が輝き、消えた。





3人は公園の入口にいた。
公園の広場に何かがいる。その姿は異様であった。鋭い牙が生えそろった巨大な顎、鉄のように硬い皮膚、四肢には羽根に尻尾―見た人間を心の奥底から恐怖させる醜悪な姿。

(あれと戦うのか?)

祐一は思った。相手は得体の知れない化け物である。それも5体。こちらは3人しかいない。どう考えても不利である。

「祐一、行くよ」

名雪とあゆが広場に向かって駆け出した。祐一も慌てて追いかける。

「『万雷』が5体だね。何とかなるよ」

あゆが言う。

「違うよ。『界雷』が1体混じってるよ」

名雪が訂正する。

「うぐぅ、ホントだ」

「でも、やるしかないよ」

「うんっ」

3人は広場についた。幸い負傷者は無く、皆、避難した後だった。3人に降魔が反応する。

「本当は祐一が指揮するんだけど、今日は私がするね」

「わかった」

祐一は覚悟を決めた。自分がこれから降魔と戦うことを受け入れた。
3人は武器を構えた。祐一は二刀、名雪は柄が身長ほどもある斧、あゆは武器らしいものを持っていない。

「あゆ、お前はどうやって戦うんだ?」

「大丈夫だよっ」

「大丈夫だよって、おま…」

「みんな、いくよ!!」

名雪の掛け声で戦いが始まった。





「はああっ」

名雪の戦斧が降魔に振り下ろされる。

ザシュッ!!!

降魔がよろめく。続けざまにもう1撃。

バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

降魔(万雷と呼ばれた)が1体消滅した。
名雪の背後に降魔が爪を振りかざしていた。名雪は気付いていない。

「名雪、危ない!」

祐一の大太刀が2つの鮮やかな弧を描いた。降魔がやや退いた、そのとき、

ドォォォォォォォォン!!!

降魔は突然爆発にみまわれた。あゆである。あゆの霊力は非常に強く、それを敵にぶつけているのだ。

「名雪さん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

降魔が2体、あゆの攻撃を受けたものともう1体が同時にしかけてきた。あゆの力は強力で命中精度も高いが、力が拡散しすぎて威力はあまり見込めない。さっきの攻撃では倒すことができなかった。

「あゆちゃん」

名雪が声をかける。

「うんっ」

あゆが応えて、降魔2体に同時に攻撃をする。時間を稼げればよかった。

「大いなる荒波の力を我が手に…」

名雪の周囲の霊力の流れが変わった。

『グロース・ヴァーグ!!!』

名雪が戦斧を大きく横に振るう。巨大な霊力の波が降魔2体を襲う。2体ともに吹き飛ばされ消滅した(2体とも万雷)。
降魔が1体、空から躍り出た。翼は伊達ではないのだ。降魔が名雪に1撃を振るう。突然の攻撃にも名雪は斧で受けたが力が違いすぎた。

「きゃあっ」

名雪は優に4メートルは飛ばされた。祐一が一気につめより斬る。2筋の銀光がきらめいた。降魔がまた1体消滅した。降魔は残り1体(界雷)であるが姿が無い。名雪は気を失っている。
界雷が上からしかけてきた。
あゆが降魔を狙う。1撃。が、降魔は速度を変えずに向かってくる。もう1撃。わずかに速度は落ちたが止まらない。

「あゆっ!」

降魔の爪があゆに振り下ろされる。あゆは霊力で障壁をつくった。降魔は破ることはできなかったが、力押しであゆを地面にたたきつけた。
界雷は祐一のほうを向いた。祐一は構える。界雷は万雷よりも攻撃力、耐久力に優れている。あゆの攻撃では致命的なダメージを与えられなかった。
祐一と降魔は同時に動いた。いや、祐一が降魔に合せたのだ。

「狼虎滅却」

祐一の二刀に霊力が宿る。

『快刀乱麻っ!!!』

ザシュッ!!!ズバァッ!!!

2撃。
不快なうめきとともに降魔は散った。
祐一は刀を納めて、近くに倒れていた名雪の傍に寄った。

「名雪、大丈夫か」

返事は無い。

「名雪っ」

「くー」

寝ていた。

「起きろ、名雪」

名雪はあっさりと目を覚ました。あゆもすぐに起き上がった。

「すごいね祐一君。ひとりで界雷倒しちゃうなんて」

「そうなの? 祐一、強いね」

よく分からないので祐一は適当に相槌を打った。突然、秋子の声が響いた。

「終わったみたいですね」

「うん、終わったよ」

名雪が応える。

「では、転送し…」

「あ、待ってお母さん」

名雪が慌てて止める。

「まだ『いつものアレ』やってないいんだよ」

「そうなの? わかったわ」

「うん」

祐一は何の事だか分からない。それについて、あゆが答えた。

「戦いが終わったらカーテンコールがあるんだよ」

「カーテンコール?」

「2人とも早く早く〜」

名雪が2人を呼ぶ。3人が並んだ。

「じゃ、いくよ〜……せーの」

『勝利のポーズ、決めっ』





戦闘を終え、祐一・名雪・あゆ、それと秋子の4人は水瀬家のリビングでお茶など飲んでいる。

「しかし、何だったんですか? あれ」

祐一は秋子に聞いた。

「第2話の最初に説明します」

「………分かりました」

祐一は納得したようにそれ以上何も聞かなかった。
あゆと名雪が何か話している。2人は突然祐一の方に向き直り、

「これからもよろしくお願いします」

と、可愛らしく言った。





第1話・終





次回予告

人間、そして降魔、2つの歴史は500年前から紡がれていた。
新たな戦士は病弱な少女、第1話では検査の為欠席。
祐一は真実を知り、戦いを決意する。80年前の出来事を繰り返さない為に。

Kanon大戦、第2話「人の歴史、降魔の歴史」





『白き雪に咲け、彩りの花たちよ』






<あとがき>

初めまして、紫月<SaKuLa/SaKuRa>と申します(シヅキ<サクラ/サクラ>と読んでくださいまし)。以後、お見知り置きを。  

このSS(SSと呼べる長さなのでしょうか?)を書いたのは一年半以上前(現在、2004/8/下旬)。受験が終わってしまって暇だったので書いたものですが、まさかこのような場に出すことになろうとは。全くもって予期していませんでした。

SSは読むばかりで書いたことがなかったので、とてつもなく稚拙な文章です(もっと勉強しますの許してください)。
読んでくださった方には感謝です。

この話、かなり長くなる予定です。作者は頑張ります。ええ、それはもう馬車馬になったかのように書く所存です。
今回、Rodmateさんの誘いにより、このような場に自らの作品を出すことが出来ました。
Rodmateさんにとてもとても感謝です。

(ちなみに、どうでもいい話。作者はKanonでは、舞・さゆりん萌え。)







第2話へ
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