はじめは、本当に些細なきっかけだった
Kanon 3次創作ストーリー
precious memories
written by ruiford
本当にくだらないと言われるかもしれない
けど、私にとっては大切な事
だって、人生初めての経験だったから
遅すぎるって言われるかもしれないけど私の大切な初めてだから
忘れたくないって思う
それにいい思い出にしたい
願望ばかりが頭の中を駆け巡っていつも出口は一つ
あの人の笑顔
今更だけど、忘れないようにこのことをしっかり残しておこうと思う
あの、桜が舞う日の事を……
つらい時期を乗り越え、ついに花の大学生となった私は浮かれていた
友達も受かり、みんなで和気藹々とこの先の事をどこまでも期待していた
映画やドラマで見た夢のキャンパスライフ
そんなのを楽しみに、新たな学生生活を夢見ていた
きっと他の学生も同じ
みんな学科のガイダンスって言ってるのにわいわいがやがやおしゃべり
私たちもそんな例に漏れずに友達と話していた
内容はもう覚えてない
その後の事が衝撃的過ぎたから
多分サークルどこ入るとかそんな感じだったと思う
授業を決めるガイダンスだから何の授業取ろうかって話だったかもしれない
そんな中、ガイダンス始まってもう数十分経ってからホールの扉が開いた
誰も気にしない
みんな自分の事に夢中だったから
だけど私だけ違った
その人が隣に座ったから
遅れてきたのに眠そうな表情で全くあせる事も無く座って話を聞いている
――なんなんだろ、この人?
第一印象はこんな感じだったと思う
不良って言う人かなとか、遅れてきたのになんでこんなに落ち着いてるのかなとも思ったけど
でも、それ以上に雰囲気が変な感じだった
ただボーっとしてる
横に座ってる私の事なんか最初からいないみたいに周りを気にしないで
「ねぇ、祐佳、聞いてる?」
「あ、ごめん! なに?」
その人をジッと見てて話を聞いてなかった
それくらい私にとっては不思議な人だった
ファーストコンタクトはその後すぐだった
私たちの会話が途切れた瞬間
「なぁ」
その人が私に声をかけてきた
「今日なんで集められたんだ?」
彼は話の内容はおろか、何故来たのかさえわかってなかったみたい
私は盛大にずっこけた
表現が古いかもしれないけどだってその通りだから
「え、えっと今日は学科のガイダンスで授業の取り方とか単位認定のこととかを聞く日で……」
「ふーん……」
たったそれだけ
ふーんで終わり、ありがとうも無し
でもどうしてかはわからないけど腹が立ったりしなかった
この人にはそれが自然なんだって思えた
「えっとプリントもらった? これ入口で配られてたんだけど……」
「え? あったのかそんなの。ごめん、見せてくれないか?」
「いいよー」
なんていうのかな
彼の空気が人を呼び寄せるような優しい空気
隣で話していてなんとなく居心地がよかったからか私もすぐに自分のペースを取り戻せた
横では友達がニヤニヤしてた
「祐佳いきなりナンパぁ?」
とか言われてすっごく恥ずかしかった
でも、彼は全く気にしてない(聞こえてない)ようでジッとプリントを見てたから私も無視した
でもそんなことを言われたら少しは意識してしまう
背は高いよね……
真面目な顔も結構かっこいいし……
そんなことを考えていたのがいけなかったのかもしれない
「ありがとな」
いきなりこっちを向いての感謝の言葉と柔らかな笑顔
不意打ちだった
その瞬間が私のはじまり
漫画的な表現なら顔が一気に真っ赤になって彼の顔を見れない状態だった
彼が何か言っている
鼓動が邪魔をする
何かわからない
誰一人知る者がいないままに時間が過ぎる
私のこの胸のドキドキを……
この人には勝てない
自分のペースをすぐに乱されてしまう
ううん、乱されるどころじゃ済まない
自分が自分でなくなっちゃいそうになっちゃう
−俗に言う「一目惚れ」というやつだったんだろう
その後の私は客観的に見たら面白いものだったと思う
「で、えっと……名前、聞いてもいいか?」
「か、神楽坂っ! 神様が楽しい坂に祐佳です!」
「俺は相沢祐一。まぁ、適当によろしく」
「ゆ、祐って字一緒ですね!!」
「へ?」
「じゃあ歳一緒なんだな」
「ですね!!」
「だから敬語で話さなくていいって……」
なんか完全にパニック状態
私でも思う、完全に変な子だったと
そのときは確かそれくらいの話しかしなかった
でも初めての授業で再会してあの印象はいい意味で壊されていった
「よっ」
大学生活始まって始めての授業
みんな真面目に話し一つせずに教師とホワイトボードを見つめてる
もちろん遅刻なんかしてる人はいないと思ってた
けど、いた
あの相沢君だ
まさか初日から遅刻なんてするとは思わなかった
さらには顔にある綺麗な紅葉
遅れてきてそれが普通のように隣に座って挨拶する相沢君
「そ、それどうしたの!?」
先生に見つかったら厄介だから二人とも小声で
「まぁいろいろあってな……。で、教科書買ってないんだ。見せてくれ」
あの大人しい印象はどこへやら、彼はかなりフランクな性格だったらしい
フランクっていうと好い様聞こえるけど、ぶっちゃけ適当だ
もう意識は全部相沢君の顔に向いてしまって授業どころじゃない
「聞いていい?」
「内容によるな」
「……それ彼女、とか?」
「……ん〜、まぁ、そんなところだ」
あの頃は何故かはわからなかったけど、これには結構ショックだった
自覚したのもこの後だった
ああ、私、相沢君に一目惚れしちゃったんだって
でも、このときはわからなくて……
「そうなんだー……」
それでもすぐに喧嘩しちゃったんだと思ったら自分にもチャンスがあるんじゃないかって打算しちゃうオトメゴコロ
完全に恋するモード一直線
「そこ、私語は慎むように」
「す、すいませんっ!」
「ったく……」
教室中を笑い声が包む
ヘビーな衝撃を受けて青くなったり、恥ずかしくて赤くなったり、忙しい私の肌
それに比べて相沢君の心臓の強い事で、全く応えてない
なんか悔しい、うぅ……
さっきのお礼にと半ば無理矢理にお昼を相沢君と一緒する事に
もう紅葉は消えていて、聞いても答えてくれなかった
「もぅ! 相沢君のおかげで酷い目にあった!! 賠償を要求する!」
「だから昼飯奢ってるんじゃねーか……」
さっき聞いたけど取ってる授業はほとんど同じで嬉しかったりしたけど許してあげない
今日こそは私のペースに持ち込むんだから
「俺、バイトしてないから金銭要求はきついって……」
正直少しでも会える時間があるのは嬉しい
だからこのときも……
「じゃあ、私がバイト紹介してあげるよ!」
「え?」
「私短期バイトしてるんだけど、時給も結構いいし、拘束時間短いからいいよっ!」
「ホントか?」
食いついてくれたっ♪
「うんっ♪ 私の紹介なら問題ないと思うし、一緒にしよっ! 一人だったから心細かったんだー♪」
正直に言えば私の紹介だから問題ないなんて事は無い
私も実はこのバイト始めたばっかりだ
でも、繋がりを増やしたい一心でついちゃった嘘
友達が一緒に付き合ってくれなかったから一人でしてるから心細いのは本当
「じゃあ、頼もうかな」
「やったーっ! これからよろしくねっ♪」
思わず嬉しくて相沢君の手を握っちゃう
盾にぶんぶんと握手
「ちょ、神楽坂っ!」
「じゃあ、これからの記念に私のエビフライあげるーっ!」
「俺の金だよっ!!」
「あはははっ♪」
初めてお互い素を見せた時間
一緒のランチタイム
周りには恋人同士に見えたかもしれない
ううん、そうだったらいいな
まだ見たことも無い相沢君の彼女に抵抗してみる
だって、私はあの笑顔に惹かれてしまったんだから
「あー、もうっ! お前には飯抜きだっ!」
「あーっ!! 私のエビフリャー定食ーっ!!」
「俺が全部食ってやる!」
「ひどーいっ! 私のーっ!!」
男の子とこんな風に笑ったことなんて今まであったっけ?
って思うくらい楽しい時間
意地悪なところも見た
真面目なところも見た
そして、そんな姿を見るとさらに魅かれていく
「こ、こらっ! ひっつくなっ!」
「あははっ♪」
こんな私たちの出会い
この後なんだかんだ一緒になる機会を神様がくれたんだけど、この日と出会った日見た笑顔を私は忘れない
相沢君がどんどん本性を見せていくにつれて心許されてるんだってさらに好きになる
だから代返とかレポートも小テスも出欠表の記入とかなんか彼に尽くしちゃう
それでも振り向いてもらえない辛さの鑑合わせ
でも、隣にいれるこの幸せを手放したくない
素っ気無くてもどこかで私は特別扱いされてるって感じるからバイトから授業まで何かと面倒見ちゃう
あーあ、私も酷い男に捕まっちゃった
けど口で言うだけで本心ではそんな事微塵も思ってない
それに……
「まだ負けてないもんねっ!」
明日はバイトラスの日だ、明日が終われば給料も入る
そしたら相沢君とご飯でも行こう
きっといつものノリで押しちゃえば何だかんだ言っても来てくれるはず
じゃ、この辺でいいよね
ってことで私のPCの日記にパスワードをかけて保存しておく
いつかこの想いを再確認する為に
「相沢君、好きだよっ♪」
いつか彼の前で面と向かってこのセリフが言えたらいいなと思いながら、私は眠りについた
Turn to the story of 『Tomorrow Meets Resistance』
〜Fin〜
Back