四人の男が血走った目で一つの机を囲んでいる。
その中心からは何分かごとに大きな音が漏れている。
それこそ、そこら辺のマンションでは隣の部屋から苦情がくるくらいのもの。
しかしここはある程度設備のいいマンション。
オートロック式であり、防音設備もいい。
密会をするのにはちょうどいい空間だった。


その空間にはどこか異国の地の人の声で音色を奏でられており、時折四人の発する音と
その中心から不規則に出ている騒音が無ければとても安心するトコロである。
無機質な白い壁に囲まれているそこ。
耳を澄ませば時間が進むことを知らせるカチ、カチという音が聞こえる。



男達の周りにはいくつもの空き缶が転がっており、そのほとんどが
アルコールの類だった。
近くのテレビには、物騒なものを持った男と女が映り、
なにやら機械が接続してある。
その映像は何回も何回も同じことを繰り返しているようだった。




一人の男がふいに声を出す。
それをかじったことのある人間でなければわからない意味の言葉。

この地に住むものが成長過程で一般に覚える言語とは明らかに異なっていた。

彼が声を出したとき、残った男はあからさまに顔をしかめた。
彼はつぎつぎとこの国の言語とは違うものを並べ立てている。

その言葉が終わったあと、三人の男は棒状のものを彼に渡す。

そして、また部屋は騒音に包まれた。



























ドキッ!男だらけのパジャマパーティー



























ことの始まりは一人の男からだった。

「よし、今日は久瀬の家で騒ぐぞ」

「は?」

久瀬と呼ばれた男はそのような間抜けな返事を返すしかなかった。

脈絡もなく突飛なことを言い出す相沢祐一という目の前にいる生物の発した音に
理解ができなかったからだった。

「だ・か・ら!泊まるんだよ。北川と斉藤も誘って」

なるほど。泊まる。単語は理解できた。
しかしどういった過程でその単語が出てきたのかはわからない。
久瀬は眉を潜める。

「はぁ?君はなにをいきなり言い出すんだ」

別に断る理由は久瀬にはなかった。
今日は彼らの苦痛の源の、俗に言うテストが終わって羽を伸ばしたい気分だったから。
しかし、いきなり決定された事項に聞き返さずにはいられなかった。

「遊びたかったから」

相沢の希望だけが簡潔に籠められたその言葉。
久瀬は諦めた口調で問う。

「拒否権は?」

「無い」

きっぱりとそれこそ気持ちいいくらいに断言する相沢。
彼は久瀬の一挙一動にはすでに全く興味を失い、ポケットから携帯電話を取り出し
ボタンを押す作業に取り掛かっていた。


コール音。


何回かその音が繰り返された後に声が返ってきた。

『どうした?相沢』

「緊急召集。大量・多種のアルコールと考えられる限りの娯楽道具を持って久瀬の家に集合」

『オーケー、ボス。了解だ』

「連絡網だ。斉藤にも伝えること」

『うい』


会話が終わり、相沢は携帯を元のところに戻し、再び久瀬に声をかけた。

「ということだ」

言って、にんまりと笑う。
その顔は新しいいたづらを思いついた子供のような純真無垢なものだった。

彼は久瀬が何かを言う前に再び言葉を紡ぐ。

「じゃあ俺も一旦家に戻る。後で行くからちゃんと開けてくれよ」

言って、彼は来た道を引き返していった。







無鉄砲・無計画。
熱血漢で情に厚い。

それが久瀬から見た相沢祐一の評価だった。

実はこのように突発的に何かが起こることは珍しくはない。

むしろ段取りを踏んで事を起こすより多いくらいだ。
そしてそのことを迷惑と思わない久瀬であった。

いつからこんな性格になったのか。
ずいぶん明るくなった。

帰途を辿りながら彼はそんなことを思う。

親しいものを除いた生徒一般の久瀬生徒会長の認識は微々たる違いはあったにせよ、
同じようなものだった。

クール、冷静沈着、何を考えているかわからない。
会長キャラ、裏で何かやっていそう。
などなど。
しかし今では親しいもの達と一般の生徒達との認識は変わらないものとなっていた。
彼は理解している。
変わり始めたのはさっき別れたあの男のせいであると。






















相沢に呼ばれた北川と斉藤は大きなリュックをそれぞれ背負って、高級そうな
マンションの玄関にきていた。
そしていつもの部屋番号を呼び出す。

「おい、さっさと開けろ。君の大親友の北川様と斉藤様が来てやったぞ」

金髪のほう、北川がそう呼びかける。

『はぁ・・・』

ため息がインターフォンごしに聞こえる。
そして玄関が開いた。

久瀬はこの高級マンションに一人暮らしだった。
彼の父親は地元の有力な富豪であり、その費用も家から出ているとか。
しかし一般的な家庭に住む斉藤や、オンボロアパートに一人暮らしの北川が
うらやむことはなかった。
彼はあまり幸せな生活を送ってきたとは言えなかったから。

最近はめっきり平凡で幸せになってきたようだったが。
























10分後、相沢もマンションの玄関に到着する。
そしていつものように久瀬の部屋番号を呼び出す。

「よっ。俺だ。あいつらはもう来てるか?」

『ああ。10分ほど前に来て好き勝手やってるよ』

「りょーかい」

開いた玄関に入り、彼は久瀬の部屋を目指した。





















「ソロモンよ。私は帰ってきた!!」

久瀬の部屋の居間に入るなり、相沢は大きな声を張り上げた。
そして、それに答えるものはいない。
久瀬は新聞を読んでおり、北川・斉藤の両名はテレビゲームに夢中だった。

「おっ?しっかり持ってきたようだな」

出だしのネタがすべったことを気にせず、ゲームをプレイしている二人に話しかけた。
画面から目を離さずに体格の良いほう、斉藤が言う。

「うん。この家にはこういう類のものが無いからさ」

「ほんと。よく久瀬はこんなつまらない部屋で生きていけるよな」

斉藤の言葉に北川が答える。
二人がプレイしているテレビゲームの本体・ソフト共に斉藤が持ってきたものだった。

「趣味はひとそれぞれなんだからいいじゃないか」

久瀬が拗ねたように言う。
ここにはそのようなこの年代が使う娯楽道具がないかわりにたくさんの本棚があった。

「で、何持ってきたんだ?」

相沢が問う。

「テーブルゲーム、格闘、シューティング、アクション、一通りのものは持ってきたよ」

答える斉藤。
画面ではロボットが表示されており、右側の画面の斉藤のロボットのほうに
《YOU LOSE》の文字。

そこで二人が始めて相沢に目を向けた。

「そして燃料のほうは?」

「ばっちりだ。チューハイ、ビール、カクテル、何でもござれ」

今度は北川が答える。
彼らは未成年のはずなのだがこれはどういうことだろう。
深く追求することはないが。

「日本酒が無いようだが」

ビニール袋を漁っていた久瀬が非難の声をあげる。

「おまえの趣味は渋すぎるんだよ。日本酒なんか高くて買えるか」

「むぅ・・・」


久瀬は再び新聞に目を戻そうとする。
が、それを阻止して相沢は久瀬をテレビの前に連れてきて宣言した。








「これより第6回パジャマパーティーを開催する」
「「おーーーーーーーーーーっ!」」




久瀬はやはりため息をついた。
























「と言ったのは良いが、俺達は夕食がまだだ。どこかに食べにいこうと
思うがどうだろう?」

「異議なーし」

相沢の提案に答える斉藤と、うんうんと頷く北川。
そして財布の中身を確認する久瀬。

「僕はあんまり今お金はないんだが・・・」

久瀬が財布を持ちながら言った。
あまり無駄遣いをしているようには見えない彼だったが、
やはり使うものには使っているようだった。

「無駄遣いのしすぎだな」

北川がやれやれといったふうに言う。

「僕は趣味の読書にお金をかけただけだ。今回もこういうことがあるってわかって
たらしっかりとその分は残していた!」

「ま、久瀬が金を官能小説に使おうとアダルト漫画に使おうと
ヘアヌード写真集に使おうと知ったことではないがな」

「ぼ、僕はそんなものには使っていないぞ!相沢!」

久瀬は思いっきり反論してから気づいた。

彼らがわかっていて僕をからかうのはいつものことだ。
わざわざ本気で否定してもしょうがないな。
だけど彼らといると本当に調子が狂う。
沈着冷静な僕はどこに行ったんだろう・・・。

そしてはぁ・・・とため息。

「まあまあ。バイキング形式の焼肉1時間食べ放題の店があるからそこいこうぜ。
あそこなら一人につき夏目さん一枚でカタがつく」

と、北川。彼は貧乏一人暮らし純情派のせいかそういう店についてはかなり詳しかった。

「ん。そうだな」

「反論はないよ」

「僕もそこなら助かる」


「よし、行こうぜ」


全員の意見がまとまったので、彼らは夕食を取りに出かけた。



























1時間半後

彼らは久瀬の部屋に戻ってきていた。
夕食という名の地獄絵図から戻ってきた4人だった。




食べ放題の焼肉屋に4人で行く、それはどれだけ危険なものなのか。
食べ放題という魔力につられて無理をしてしまう。
さらに焼けた肉は早い者勝ちというルール。
そんなわけで楽しいはずの夕食の場は無法地帯と化した。

「おい!北川!それは僕が焼いた肉だ」

「早いもの勝ちだろ?ノロマが悪いのさ」


「斉藤、おまえちょっとは遠慮しろ!」

「ごめん、相沢。体が大きいからちょっとだけの量じゃ足りなくてね」


などなど。
野菜を食べるものは一人としておらず、早いもの勝ちで食べるため、生焼け
がかなり多かった。肉と白飯だけをむさぼり食う若者だった。

さらにはいたづら大好きの相沢と北川が、久瀬が追加の肉を取りに行っている間に彼の
椀の中のご飯をモノスゴイことにして久瀬を噴火させるまでした。

モノスゴイことになったご飯というのはあまり説明したくは無いが、

普通の白米に、塩コショウ、焼肉のタレ、アロエの汁、ドレッシング、コーヒーシロップを
かけたものだと思ってもらえれば理解はできるだろう。

結局その処理を賭けたジャンケンが勃発し、斉藤が餌食になった。
処理した後でトイレに駆け込んだのは言うまでも無いだろう。
















久瀬の部屋では真剣勝負が行われた。
人生をシュミレートするテレビゲームのボードゲーム。
よくもまあここまで性格が表れるものだ。

相沢はひたすら妨害ばかりする。
北川は良くも悪くも普通。
久瀬は1歩2歩、と先を読んで行動する理性派。
斉藤はひたすらマイペースに我が道を進む。

やはり人生送りバントが効を奏したか、北川が一位でクリアとなった。
斉藤が2位、それに久瀬、相沢と続いた。



「へへーん、ざまーみろ久瀬め」

「くっ、ハンムラビの教えをうけるがいい」

「うわっ。復讐とかするなよ!」


「お、株で儲けたぞ」

「北川手馴れてるなあ」


な感じの会話がゲーム中にあった。
どれが誰の言かは性格を考えればわかるであろう。
























さらにその3時間後に今に至る。
彼らは卓を囲んでいた。


彼らは集まるたびにこの催しをする。


すなわち賭け麻雀。
千円20円で賭ける。
安いかもしれないが、彼らは学生であり、大負けするとその月は苦しくなり、
勝つと小遣いにちょっと余裕が出るという適したレートだった。


やはり、性格の違いからだろうか?
彼らの上がる手には大抵のパターンがある。

相沢は高い手を狙う。ドラを抱えることはもちろん、あまり食ってこない。
アガることは少ないが、アガれば一気に上位へ。

北川は食いを多用。トイトイが好きであり、場を荒らす。クイタンありのルールなので
時に無類の強さを発揮。

久瀬はともかくきれいな手で攻める。
三色、一通、ホンイツなど。
一番玄人の麻雀をする。
大負けはまず無かった。

斉藤は早上がりが得意。
リーチのみ、チートイツ、ピンフなど。高い手は少ないが、アガる回数は一番多いだろう。


彼らはいつも徹夜で麻雀をする。
麻雀をやり始めると、ぐいぐいとアルコールが入ってく。
最初はかなりのテンションで始まるのだが、やはり徹夜で長い間やるからだろうか?
夜が明けるころには皆無口になる。
ただ義務のように黙々と続けるのであった。

「ツモ、リーチ、ジュンチャン、三色」

久瀬がアガる。
他の三人は顔を少ししかめながら無言で点棒を渡す。
そしてまた無言で次へ。

牌が混ざる音の他に音は無く静寂が満ちていた。


















夜が明けたころに麻雀はお開きとなり、皆その場で雑魚寝した。

結果としては最後に相沢が国士無双十三面待ちというとんでもないことをやらかし、
大逆転で一位。

久瀬がコンスタントにアガっていたので二位。

アガるのも多かったが、振込みの多かった斉藤は三位。

オーラスまでトップだった北川は、最後に相沢に役満をアガられ大逆転で四位。

なんともまあ、とんでもない麻雀であった。
























みんなが起きたのは昼過ぎであり、みんな起きてすぐに帰っていった。
もちろん片付けなんてものはすることは無しで。



学生時代、恋愛がメインではない。
男同士で馬鹿騒ぎするのが一番思い出に残ることであろう。

なんていう、らしくないことを考えながら
部屋の片付けが終わった久瀬は再び眠りに落ちていった。
























あとがき

読んでくれた皆様こんにちは。駄作SS書きのけけです。
見ての通り男だけのむさい話です。ジャンルはほのギャグでしょうか・・?
楽しんでもらえたなら嬉しいです。

けけでしたー。
アデュー(手を振りながら)








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