僕は久瀬。
高校3年生だ。
友人曰く、

「裏で何かやっていそう」

「明らかに株で儲けているだろう」

「眼鏡をかけていれば悪役専門のプロダクションにスカウトされそう」

などという何故かいいイメージの無い人間であるようだ。
そして友人に関わらず家族以外のほとんどの人の評価がこんな感じらしい。

さらに今の僕の顔なら裸足で逃げ出すとまでは行かないまでも、思わず道を譲りたくなるらしい。
ただ眉間にしわを寄せて困っているだけなのだが。

「で、どうするんだ久瀬?」

となりにいる北川が言った。
僕らは下校中。
彼に僕の悩みを話したところ、一緒になって考えてくれた。
いいやつだと思う。だけど、いつ暴走するのか気が気でない。

彼+相沢祐一は決まった答えが出てこないフェルマーもびっくりな数学者泣かせな
方程式だと思う。いや、ほんとに。

「うーん・・・。やっぱ避けられないのか」

「でも綺麗な人だったんだろ?」

「だけども自分の意思では無いし、まだ僕は高校生だ。さすがに早すぎると思う」

明日、次の土曜日に僕は父親によりお見合いをセッティングされてしまったのだ。
必死に拒否したが、すでに約束済みで日時がすでに決まっていたらしい。
ボイコットするという手もあるが、さすがにそこまで子供な僕でも無い。

僕は今アパートで一人暮らしをしている。
別に家から遠いわけでもない。親が社会勉強のため、と放り出したのだ。
僕の親はそれなりに裕福な部類に入る。
ちょっと大きな商売なんかをやっていて、この街ではちょっとした有名人だ。
彼は地元でかなりいいイメージで通ってはいるが、中学時代までの僕との仲は最悪だった。
高校になって少しは修繕されたが。

しかしまれにこのように問答無用の難題を押し付けてくる。
父の屈折した優しさだとは思うが、さすがに屈折しすぎるのもどうかと思う。

「じゃあすんなりと断れよ」

「だけど僕にできるか・・・」

「ま、どうにでもなるさ」

そこまで言って彼と別れた。

が、後に僕は彼にこのことを話したのを強く後悔した。
別れたときに彼の邪悪な笑みに気づいていれば釘をさすこともできていたのかもしれないが。

僕は自分のアパートに戻り準備を整えた。
そしてそのまま迎えの車にのって本宅に戻り、就寝した。


























「準備はいいか?」

「はい、父さん」


着替えが整い、応接間のほうへと向かう。
今回の見合いは久瀬の本宅でやることになっていた。

襖を開けて中に入る。
相手の父親と着物で着飾ったきれいな女の人がいる。

相手は写真よりもはるかに美人であった。

一瞬目が合う。

柄にもなく少しどきりとした。
プロフィールを見たかぎりでは、あちらは僕より2つほど年上のそうだ。
今は大学生であり、この縁談がまとまっても大学には行く気ということらしい。

形式的な挨拶を済ませて席につく。
ここでもまた、形式的に話が進んでいく。
僕も彼女も何もしゃべらず、親同士だけで話がはずんでいた。

やはり頃合を見て、正式に断りの返事を僕の口から切り出すべきだろう。
とりあえずこの話がキリのいいところに行くまで待とう。

などと思って窓の風景になんとなく目をやった。

気のせいだろうか?
明らかにあやしい5人組が今慌てて隠れたように見えたのは・・・。
隠れた木の茂みから見慣れた金髪のアンテナが見えているのもぼくの目の錯覚なんだろうか?
眼鏡を外し、目をこすってからもう一度目を凝らす。

不幸なことに見間違いではなかったようだ。
頭が痛くなってきたのが自分でもわかった。
いくら番犬やガードマンがいないからといって、不法侵入するとはありえない・・・。

「失礼。お手洗いに行ってきます」

言って僕は席を立った。












(おい、久瀬がこっちくるぞ!?)

(・・・・・たぶん気づかれた)

(舞がそういうんならそうですよ)

(なんでばれたんだ?)

(・・・・・・君の頭の毛じゃないかな?)


「で、なんのつもりだ?」

ビクッ!!!
彼ら5人が一斉に身を震わせた。

「おう、久瀬。奇遇だな」

「・・・奇遇という意味を知っていて言っているのか?」

相沢は悪びれた様子もなく開き直った。
全くこの男は・・・。
なんていうか全然行動が読めない。

「誰が主催かはわかっているんだけどな」

言って北川を見る。
少し気まずそうに、だがやはり悪びれた様子はなかった。

「ま、久瀬のことを思ってのことなら仕方が無い」

「あははーっ。それは北川さんの台詞じゃないですよー」

「・・・佐祐理の言うとおり」

一番疑問なことが一つ。
なぜ倉田さんや川澄さんまでいるのだろうか?
斉藤がいるのは相沢・北川に連れてこられたとすぐにわかるが、何故こんなところに
彼女達がいるのだろう。

「あ、何で佐祐理さんや舞がいるのかと思っただろう?」

相沢は妙なところで鋭い。

「・・・それはそうだろう。君らみたいなのは首を突っ込みたがるが、彼女らが来る理由が無い」

ほんとに疑問だ。
何故だ?実はまだあのことを根に持っているとか?
いや、彼女らはそんな人ではない。

そんな考えを一瞬でも持った自分を恥じた。

「百花屋で相沢と北川と作戦会議開いていたときに偶然会ったんだよ。
内容を話したらぜひ行きます、と」

斉藤が説明してくれた。
いや、ちょっと待て。

「実はお前も乗り気なのか?」

「うん。なかなか」

・・・一般人だと思っていた斉藤まで相沢と北川に毒されたようだ。
だけども彼女らが来た理由が未だにわからない。

「なんで先輩達が来たのか、って思っているだろう」

「・・・そりゃそうだろう。思わないほうがおかしい」

北川が言うが、少し顔がにやけている。
僕の経験から言えば、この顔の時は何か含みがある時なのだが・・・。


「ふぇ・・。久瀬さんは佐祐理達が迷惑でしたか」

「・・・人の家の敷地に不法侵入するのはあまり褒められたことでは無いと思いますが」


「で、迷惑なのか?」

これまたにやにやした相沢が言う。迷惑だとは思っていない。僕のことを思ってのこと
らしいので単純に嬉しい。
それにしても、わざとぼかして答えたのに本質をずばり聞いてくる相沢には脱帽する。

「迷惑だとは思ってない。素直に嬉しいですよ」

「・・・最初からそう言う。久瀬は素直じゃない」

川澄さんには言われたくはなかった。

「なあ。なんか君のお父さんがちょっとそわそわしてるぞ」

「あ、悪いけど戻るよ。君たちも僕のことは構わずにせっかくの休日を楽しんできてくれ。
だからみんなはすぐに解散してくれ」

斉藤の言ったとおり父さんがお茶を一気に飲み干したり、しきりに後ろを気にしたりしている。
さすがにこれ以上戻るのが遅くなると疑われるのでそろそろ戻ることにした。

あ、結局理由を聞いていないな。


















「すいません、遅くなりました」

「ちょっと遅すぎないか?」

「申し訳ないです。緊張してしまって・・・」


とりあえずいろいろと言い訳をして席につく。
窓の外を見ると、やはりと言うか全員が残っていた。
あのメンバーは常識が集団疎開してしまっているらしい。

またいろいろと話が始まるが、外が気になってしまいそれどころでは無かった。

また不審な動きが始まる。

『どうだ?断れそうか?』

わざわざスケッチブックなんかを用意してこっちとコンタクトを図っている。
いつ父さんにばれるか気が気でない。

(い・い・か・ら・か・え・れ)

口を大きく開き口パクでこっちの意見を伝える。

『そうか・・・。無理っぽいか。こっちから応援を送るか?』

全く伝わらなかった。
明らかにあっちが動けるように解釈されている。

(来るな!おおごとになるぞ)

ふと見合い相手を見ると僕のほうを訝しげに窺っている。
僕の視線に気づいたのか、後ろを見やる。

・・・明らかに怪しい五人組がばっちり脳内映像に刻まれたことだろう。

「どうかしたのか?」

「ええ・・。あそこに人影が・・」

彼女の父にもばれたようだ。

『今から見合いをぶち壊す』

絶体絶命。なんてタイミングでそんな文字を出すんだ。

「すいません、僕の友人です・・・」

観念した。ここまで来られると隠しようがない。

「おい、どういうことだ!説明しろ!!」

やはり父さんが顔を真っ赤にして激怒している。

「すいません・・・。ちょっと席を外します」

「申し訳ない。少し席を外させて貰います」

父さんと一緒に彼らのほうへ向かう。
その最中ひたすら怒鳴る父さんに、僕は平謝りするしかなかった。

途中で足を速めて、父さんより先に彼らのほうへ向かう。



「おい、すぐ帰るんだ!父さんが来てしまう」

僕の必死の呼びかけに彼らは大胆不敵にも腕組みなんかをして、待ち構えている。
馬鹿ばっかりだ。

「おい、君たち!何をしている。常識はずれにもほどがあるぞ!」

それは確かに否定しない。不法侵入して、見合いをぶち壊すなんて普通じゃない。

「ふっ・・・。子供の意見を無視して見合いをセッティングするのは常識なのか?」

「全くだ。親が勝手に進める縁談なぞ言語道断」

それももっともだ。

「え、えーいうるさいわ!人の家のことにとやかく子供が口出しをするんではない!」

それも一理ある。
さっきから肯定してばかりだ。・・・僕は主体性がないのかもしれない。

「久瀬のおじさま、久瀬さんは立派な大人ですよ。きちんと意見も言うことが出来る
立派な方です」

「倉田の娘さんか。何故君までここにいる?あいつがみたら泣くぞ」

「お父様は関係ありません。お父様が泣こうと泣かまいと、佐祐理は自分の意思で行動
します。久瀬さんも同じだと思います」

倉田さん・・・。彼女は大人だ。きっちりと自分の意見を言える。
僕の場合は考えるだけ考えても、意見を言うことができないだろう。
年が一つ違うだけでこうも違うものなのか。

「む・・・。なかなかいいおる」

「おじさまもわかっているんでしょう?」


「・・・子供に諭されるとは私も年を取ったものだ。佐祐理くん。お父様によろしく言っといてくれ」


まさか僕の父を説得するとは。
僕がそう安心するより先に父さんが僕に言った。

「しかしお前が一人の大人ならきっちりと責任を取れ」

「はい、わかりました」


初めて父さんに認められたようで嬉しかった。
どんな責任でも取ってみせようと思う。



僕と父さんは見合いの席に戻った。
そして今度こそ5人は帰っていった。

















































「きっちりと自分の口で正式な断りを入れろ」

それが父さんの僕に対する責任の取らせ方だった。
あのあと、席に戻った僕達はひたすらあのことに対して謝った。
そして僕の口からはっきりと断りの意思を告げた。

見合い相手のほうも乗り気ではなかったようで、僕と同じような境遇だったらしい。
見合いは中止になったが、その後はとても和やかに話をすることができた。
父さんとも以前よりかなり仲が良くなった。


そのことを僕は彼らに話している。

「だけどどうして倉田さん達はあそこに来たんだ?」

男4人で甘味屋に入るのもどうかと思うが、僕らは百花屋にいた。
相沢以外みんな甘いものが好きなので(僕も含めて)別に気にはしていない。

「本人の口から聞いたらどうだ?」

相沢は言って窓の外をみた。
僕もつられて外を見ると、そこには倉田さんと川澄さんの姿が。
二人に手を振られたので、僕らは振り返した。

彼女らが店内に入ってくる。となりのボックス席に座った。

「倉田先輩。どうして見合いの席に来たのかこいつに話してやってくださいよ」

北川が僕が気になっていたことをずばり聞いた。

倉田さんがにっこり笑って口を開く。


「久瀬さんのことが気になって、心配になったからですよ」

え・・・?
僕は胸の鼓動が早くなるのを確かに感じた。
それはどういう意味だろうか?続きを聞きたいような、聞きたくないような妙な気分になる。

「な、なんでですか?」

一秒が無限にも感じられる。
生徒会選挙の時もここまでの緊張はしなかった。
























「なんか弟みたいで放っておけないじゃないですかーっ。
なんか久瀬さんはかわいいですから心配になっちゃったんですよ」

は?

「どうした、久瀬?・・・ククク」

「なんか期待したか?・・・ぷっ」

「倉田先輩からこのことを聞いた時はさすがの僕でも笑っちゃったよ」

相沢・北川・斉藤が言う。

「あの全校悪人ランキングで常に上位に入る久瀬が佐祐理さんにかかれば『かわいい』だもんな。
・・・・・うぷぷぷぷぷ」

なんか一気に体中の力が抜けたような感じだ。
顔が火照るのを感じる。

えーと倉田さんは僕をかわいい?
弟みたい?
そして全校悪人ランキングとは?


僕は結局悩むはめになるらしい。

「ふぇ?佐祐理はなんかおかしいこと言いましたか?」

「いや、倉田先輩最高!!」

北川が笑いをこらえながらサムズアップ。




「・・・みまみま」

そして川澄さんは我関せずといった感じで黙ってイチゴサンデーを頬張っていた。

























あとがき

どうもけけです。
今回は久瀬くんの一人称で書いてみました。
ひっかかるところがなく読んでもらえたなら幸いです。










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