| 馬鹿って悪い意味? 良い意味? それは馬鹿の種類にもよりますよね。 彼らはどっちの馬鹿でしょうか。 平凡?な男子高校生の日常 「えっと、キミ達は何故ここにいる?」 久瀬は問いかけた。 ここは彼の通っている学校の一室。 ごく一部の人しか入らない生徒会室。 久瀬はまぎれもなく関係者である、生徒会長なので入るのが当たり前。 しかし目の前にいる人物達はここで仕事をする責務があるわけでもなかった。 「そりゃドアを開けて入ったからに決まっているだろう」 彼の友人北川潤は答えた。 「よし、みんなそろったしそろそろ行くか」 同じく彼の友人の相沢祐一が言う。 「じゃあこの書置きを置いていけば問題無しだね」 これまた友人の斉藤が言う。 「どこに行くんだ?まあ僕はあと30分後に生徒会の会議だから関係ないが」 「おまえも参加決定してるけど気にするな、行くぞ」 「よし、被疑者を確保」 祐一と北川がそれぞれ久瀬の腕を取りひきずっていく。 彼の目には斉藤が机に置いた紙に書かれた内容がこの部屋で見た最後の光景だった。 『悪徳会長は預かった。返して欲しければ、たまには会長無しで仕事を片付けてみろ。 彼はこの年で栄養ドリンク愛用者になっちゃうぞ。 by 愛の怪盗ラブリーボーイズ』 普段の彼ならやらなきゃいならないことを放り出すことは出来なかったが、何故か彼らしくなく 何も言わずにそのまま出て行った。書置きを見てからおとなしくなったのだ。 「よし、飛ばすぞー!」 斉藤の声で始まった。 ここはバッティングセンター。 時には少年が練習し、時には仕事に疲れたお父さんが汗を流しに来る。 男と女の二人連れもいる。 どこにでもある娯楽施設だった。 「やれやれ・・・」 久瀬は無理やり連れてこられた立場だったが、それなりに楽しそうだった。 これでも休日には彼らは4人でミニ野球をやるのだった。 「おりゃー!」 すかっ。 「どーだー!」 ぼこっ。 「あたれっ!」 ギュイーーーン! 久瀬のとなりにはすでにMYカードを使って楽しんでいる祐一の姿。 120kmというなかなかの球速でやっている彼。 あたることは少ないようだが、あたるとかなり飛んでいる。 「よっと」 キィィィン。 「はっ」 カーン! 「・・・」 シュぃぃぃー! そのとなりでは左打席の110kmで打っている北川。 器用なことにどちらの打席でも打つことができた。 ミート中心で空振りが少ない。 「・・・」 ギュイイイーン! 「・・・」 ガキッ! 「・・・」 ブンッ。 一番端では斉藤が140kmという高速のところで打っている。 さすがスポーツマン。それでもなかなかのあたりをたまに出す。 久瀬の実力だが・・・。 打ち終わった他の人の反応で推測してみよう。 「おい、たぶんめがねずれてるぞ」 祐一。 「だよな、ボールから離れすぎ」 北川。 「靴のかかとでも踏んでるのかな?」 斉藤。 だいたい彼の実力がわかるようだ。 性格上か、どんなスポーツをやらせても攻撃面はしょぼく防御面が優秀という彼だった。 「僕が楽しいからいいんだよ!」 ま、それももっともである。 彼が一通り楽しんだ後、バッティングセンター恒例の板抜き大会が始まる。 ※板抜き 某番組でやっている、ピッチングで番号のかかれた板を当てる競技。 今はだいたいどこのバッティングセンターにも置いてある。 「よし、一番少なかったやつ罰ゲームな」 「じゃあこれ終わったらカラオケ行って、そん時にランダムで番号入力してそれを必ず 歌いきるっていうのは?」 相沢の提案に嬉々として北川が案を出す。 「また罰ゲームかい?」 久瀬が問う。 このメンバーで何かやると必ず罰ゲームがあるような気がした。 「久瀬は負けるのが怖いんだよね」 斉藤がさりげなく挑発。 これだけなら久瀬は聞き流して回避していたが、 「悪徳会長はえらそうだけど実はびびり・・と。メモメモ」 「ご町内の皆様〜。こちらにいらっしゃるのが、勝ち戦しかしないうちのガッコの悪徳会長 様です。どうぞ悔い改めさせてくださ〜い」 「・・・キミ達には負けないよ」 相沢祐一・北川潤の両コンビ。 なんて人を煽るのがうまいヤツラなことか。 順番を決めるジャンケン。 ・・ ・ あいこが3度続いたあと、相沢→斉藤→久瀬→北川の順となった。 「よし、俺から行くぜ。針の穴を通すコントロールを見せてやる」 相沢振りかぶって第1球!! 「・・・あいつは糸通しつかわなきゃ糸通せないタイプだね」 斉藤が絶妙な一言。 その声に惑わされ、相沢は大きく外した。 「おい、こら!しゃべるな!」 「集中してればそんな雑音聞こえないと思うぞ」 抗議するも、久瀬のもっともな指摘に沈黙した。 結局13球中3球命中。 「ちっ、昨日のうちわ千回扇ぎ対決の傷が響いてるな・・・」 ばかだった。 「じゃあ次行くね」 斉藤の番になった。 「あ、あそこにUFO!!」 「チャック開いてるぞ!?」 命中。 「うんち踏んでるぞ!」 「昨日コンビ二で昆布煮頼まれたんだ」 命中。 スポーツマンの斉藤には祐一・北川の妨害も役に立たず、結局5球命中。 「ちっ、耳栓なんてしやがって」 北川が言う。 完全な負け惜しみだった。 さて久瀬の番。 打撃とは違い、スローイングはめっきり普通である。 やはりここも外野との勝負になりそうだった。 「バッティングセンターでピッチングするなよー」 「会長はスポーツ禁止だぞ」 命中。 集中していた。 こうなるときついのが祐一だ。前日の疲労と外野の声によって今一番危ない位置だ。 そして、久瀬・北川の実力ならば3球以上は確実に当てるだろう。 どうする? 彼は頭の中で考える。これ以上無いほど真剣に考える。 彼の顔に笑みが浮かぶ。 そしてゆっくりと久瀬に近づいた。 彼はすでに振りかぶっている。 「あそこにいるの佐祐理さんじゃないか?」 「!!」 的をそれる。 「・・・どこにいるんだ?」 久瀬が引きつった顔であたりを見渡す。 「すまん。よく似た別人だった」 「・・・」 視線の届く範囲に女性はいなかった。 久瀬は気を取り直して次の球を投げる。 的をそれる。 「あははーっ」 「あははーっ」 祐一・北川のダブル攻撃が続いた。 この調子でラスト2球まで続け、結局その間は最初の1球以外当たっていなかった。 斉藤があきれた様子で見守っている。 まるで保護者だった。 「ふぇ〜」 「ふぇ〜」 祐一・北川が言う。 しかし命中。 やっと雑音に慣れてきた。 「よし、気分を変えて舞の真似をするぞ」 「川澄先輩か〜」 その間に久瀬が振りかぶる。 「あはは〜っ」 的をそれた。 「「倉田先輩かよっ!!」」 「それは倉田さんだ!!」 祐一以外の全員がツッコミを入れた。 久瀬は舞の真似に対して瞬時に用意身構えたが、もう一度佐祐理がきたので過剰に反応してしま、 その結果外してしまった。 「久瀬は2枚かー。3枚当てれば大丈夫だな」 言って、北川が代わりに用意しはじめた。 「おう。がんばれよー」 ここでは祐一は普通に応援していた。 そのことに対して久瀬は聞く 「何故彼の邪魔をしないんだ?」 「おまえの罰ゲームのほうがおもしろいから」 「あははは」 祐一の答えに斉藤が笑う。 彼も祐一の意見に賛成のようだった。 結局北川は無難に4枚当てて罰ゲームは久瀬になった。 『それでは第37回久瀬ランダムソング大会inカラオケボックスを開催します』 マイクごしに祐一の声が部屋に響いた。 「いつ37回もやったんだよ・・・」 斉藤が律儀にもつっこむ。 「イエーーイ!」 北川はアルコールも入っていないのに妙なテンション。 「・・・」 久瀬はいかにも頭が痛くなる、といった風に頭を押さえていた。 『ではランキング1位の斉藤君からリクエストをどうぞ』 「えっ!僕か・・・」 いいながら本も開かず適当に番号を入力する。 画面に表示される曲名は、あきらかにこの年代の男の子が知るような歌では無かった。 ちゃららららー♪ いかにも古めかしいイントロが流れる。 「ほら、久瀬マイク持てって」 「ちゃんと歌えよー」 とりあえずマイクを持って歌おうとする。 『おとこはーふねにー・・・?』 歌えるはずもなく。 久瀬はチャンネルに手を伸ばす。 祐一・北川・斉藤ががっちりガード。 もちろん半笑いで。 「おい、キャンセルは不可だ」 「全く、久瀬がそんな負け犬だったとは」 「逃げるのは感心しないよ」 『おんなはー・・・だから・・・ー』 結局歌うはめとなり、盛り上がるはずもなく、放置プレイと相成りました。 ・・・ ・・ ・ 無駄に長かったその歌がやっと終わった。 「おーうまかったぞー・・・」 ぱちぱちぱち。 適当な言葉となげやりな拍手。 どれだけこの場が寒いものであったか想像できるだろう。 最初に提案した祐一と北川までテンションががっくり下がっていた。 『・・・気を取り直して2番北川歌いまーす!』 「「おー」」 祐一と斉藤がなんとかそのノリに戻る。 久瀬はさすがにダメージがでかく、まだ放心状態だったとさ。 歌うにつれて、この部屋のテンションはぐんぐんとあがってきた。 アルコールは入っていないはずだが、ひたすらハイテンション。 あの久瀬でさえ、テンションはかなり高い。 マイク争奪戦が勃発していた。 『こっいはしーたごころー♪』 「おい、北川マイクを取るな!」 「おいおい、相沢右ストレートはやめろよ・・・」 「マイクだけに、マイクタイソンもびっくりなストレートだな」 「「「・・・・・・」」」 久瀬が慣れないギャグを言ったため、一気に氷河期に突入した部屋であったとさ。 一同がカラオケボックスから出た時は、みんな声がかすれていた。 (みんなつかれたなー) (この声ひどいなあ) 祐一と斉藤が話している。 (僕もひどい声だ) 久瀬が嘆く。 みんな本当に叫びすぎたようで一日二日で治るようなものではなかった。 それに北川がなにか思い出したようである。 (おい久瀬。おまえ明日全校集会で話すことあるんじゃなかったか?) (・・・・・・しまった!) 次の日のさらに久瀬は風邪を併発して、全校集会でみんなの爆笑を引き出してしまいましたとさ。 あとがき どうも、けけです。 またまた馬鹿カルテットの話です。 笑う箇所は少ないかもしれませんが、たのしんでくれれば幸いです。
|