Little Busters! Short Story

The disciplinary committee works−恋戦突破 疾走乙女−

Prologue An emergency manhunt


「どうかしら?」
放課後の家庭科室。椅子の1つに腰掛けている佳奈多が、テーブルを挟んで座っている理樹と鈴にそう尋ねる。二人はちょっと待ってとばかりに頷くと、目の前の皿からクッキーをそれぞれ1つ摘み、口の中へと放り込む。
「…もぐもぐ…ごくん。うん、うまいぞかなた。」
「ごくん。…うん、僕もそう思うよ。オレンジのクッキーなんて見たことなかったけど、美味しいよ。」
「…そう、よかった。」
二人の評価を聞いた佳奈多、ほっとしたように笑みを浮かべる。
「付き合わせてしまって悪かったわね。ちょっと事情があって作ろうと思ったんだけど、私柑橘系はアレルギー持ってるから、自分では食べられないのよ。だからちょっと心配だったけど、上手くいったみたいで安心したわ。」
「そう恐縮しないでよ。僕たちだってこんな美味しい試食なら大歓迎だって。ね、鈴?」
理樹がそう鈴に振ると、鈴はちりん、と髪留めの鈴を鳴らしつつ頷き。
「うん。でも、こまりちゃんとかだったらもっと詳しくアドバイスできたんだけどな。あたしたちだとうまい、まずいしかいえない。」
「そういえばそうだね。小毬さんとか来ヶ谷さん、それに西園さんだってお菓子作るの僕たちより上手いのに、なんで僕たちだったの?」
「んん…。」
理樹の質問にたいし、佳奈多はやや口ごもり、
「確かにね…的確なアドバイスならそうかもしれないけど…このクッキーについては、自分自身だけの工夫で作りたくてね。神北さんや来ヶ谷さんには敢えて頼まなかったのよ。」
「?」
回答の意図が今一つ掴めず、首をかしげる理樹だが、その隣の鈴が、
「そーだな、せっかくはるかの誕生日にあげるんだからそのほうがいいな。こまりちゃんやくるがやだとどうしてもあいつらの作り方もまじってしまう。」
「―――――――ぶっ!」
鈴がさらりと言った言葉の内容を理解した瞬間、佳奈多が狼狽して吹き出してしまう。
「わっ! 汚っ!」
「ご、ごめんなさい! …って、棗さん、なんで葉留佳のためだって解ったの!?」
顔を紅潮させて、鈴に掌を向けた両手をめちゃくちゃに動かしながら佳奈多が訊き返す。対して鈴は何事もないように、
「はるかが最近、こまりちゃんやクドにペパーミントティーの淹れ方を教わってる。これはふたりの誕生日にかなたにごちそうするつもりだと思ったから、かなたも同じこと考えてるんだと思ったんだが…違うのか?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
まるきり図星を指されて、真っ赤になってテーブルに突っ伏す佳奈多に、何故佳奈多がそんな行動をするのか理解できないで首をかしげる鈴。そしてその二人を苦笑しつつ交互に眺める理樹と、一気に場の雰囲気が照れくさいものになる。佳奈多がなんとか話題を変えようと口を開きかけたその瞬間、がらっと音を立てて家庭科室の扉が勢い良く開け放たれた。
「委員長! こちらにいたんですか…って、何してるんです?」
三人が見ると、入り口に立っていたのは、恐らく一年生と思しき男子生徒。理樹と鈴にはなじみのない顔だが、左腕に装着された深紅の腕章が、彼の正体を雄弁に物語っている。
「…な、なんでもないの、気にしないで…。それより、そんなに息を切らして、私のことを探していたみたいだけど、何か緊急事態?」
そう問い返されたその風紀委員、一瞬場の空気に当てられてぽかんとした表情を引き締めて、
「そ、そうでした。緊急事態です! 校内で恐喝事件発生!」
「何ですって!?」
がたん、と椅子を蹴るほどの勢いで立ち上がる佳奈多。そのままその風紀委員の目の前に近づくと、
「発生はいつどこで? 被害者は誰、というより無事なの?」
「発生は30分ほど前、巡回していた副委員長が発見しました、被害者は一年の女子で、現在風紀委員室で保護してます。」
「そう…初動はよくやったわ。あとは委員室で訊きます。」
そう言ってつかつかと廊下に出て行こうとした佳奈多。ふと振り返ると、
「直枝理樹、棗さん。悪いけど緊急事態だから失礼するわ。そのクッキーは悪いけど持ち帰ってくれない?あとでまた意見聞かせて頂戴。」
さっきまでとは打って変わった、素っ気無し愛想なし配慮なしと揶揄されるも一顧だにしない、風紀委員としての表情でそう告げるや否や、二人に背を向けて廊下を駆け出していた。


Chapter 1 Preparation


「…で?」
「何?」
「なんだ?」
呆れたように尋ねる佳奈多に、質問の意図がわからないとばかりに訊き返す理樹と鈴。佳奈多はそれに対し、青筋を少し浮かべて、
「…だから、なんで貴方達まで風紀委員室に来てるのか、って訊きたいのよ、私は!」
怒鳴られた理樹と鈴、少々首をすくめつつも、ひるまず言葉を返す。
「だ、だってさ。誰かがひどい目にあったってこの耳で聞いて、それじゃ風紀の皆さん頑張ってで終わりじゃあまりにも薄情だし、僕たちにだって出来ることが…、」
「ないわ。」
理樹の抗弁をぴしゃりと封じた佳奈多。それに続けて、
「違反者を取り締まれる生徒は風紀委員だけ、それがこの学校のルールなのよ。考えてもみなさい…誰もが違反者を自由に取り締まれたらどうなるか。だから、風紀委員以外にはその権利は認められていないの、だから、気持ちは嬉しいけど、貴方達がそうするなら私たちとしては貴方達のことも取り締まらなければならない。分かって頂戴。」
と、今度は噛んで言い含めるように説明する。それをじっと聞いていた理樹と鈴だったが、佳奈多が言い終わった瞬間、今度は鈴が口を開く。
「それは違うぞ、かなた。」
「…棗さん!?」
「あたしたちは別に、かなたと一緒にとりしまりをしたいわけじゃない。一般の生徒としてできることは無いか、と訊いているんだ。」
「…ぐ。」
別に風紀の仕事の邪魔になるから何もしなくて良い、と突っぱねることも出来るが、特に鈴に、真正面からそう言われて無碍に断ることなどできなかった佳奈多。暫く鈴の目を見つめたあと、ふぅ、と溜息をつき。
「…分かりました。じゃあこれから被害者の子に話を聞くけど、風紀として聞くんじゃどうしても威圧的になってしまってね、話しやすいようにフォローしてくれるかしら?棗さんに直枝理樹も。」
「わかった。」
「うん。…で、この子だね?」
と、理樹が部屋の隅の椅子に腰掛けて俯く女生徒を指し示す。時折肩を震わせしゃくりあげるその一年生の胸ボタンは乱暴に引きちぎられ、スカートの裾は鋏でも入れたのか、ギザギザに切り裂かれていた。
「かなた。」
「うん?」
女性徒に声をかけようとした鈴が、ふと振り向いて佳奈多に声をかける。
「…この格好じゃかわいそーだ、だれか予備の服をもってないか?」
その提案を聞いて、佳奈多ははっと一瞬絶句し、
「――そこまで考えが回ってなかったわ。ごめんなさいね、ええと、貴女…、」
「…――――――です。」
努めて優しく声をかけた佳奈多に、か細い声で自分の名前を告げる女生徒。
「ジャージは持ってきてる?持ってるなら一年の委員に取りに行かせるけど。」
その問いに、ふるふる、と首を振るのを見て、佳奈多は溜息をつくと、室内に居た女子の風紀委員達に呼びかける。
「悪いけれど、誰か予備の服を持っていないかしら?この子、こんなぼろぼろの服じゃ外に出られないでしょ?」
その問いが発せられた途端に手を挙げ、
「あ、私が持ってるのお貸ししますよ。」
と申し出てきたのは、眼鏡を掛けてぶかぶかの制服を羽織った小柄な女生徒。
「ん、お前も風紀委員なのか?」
鈴が尋ねると、その女性は
「ええ、そうです、楓って呼んで下さい。棗鈴さんですよね?」
「え?あたしのこと知ってるのか?」
知られてることに少々照れくさいのか、頬を紅潮させつつ尋ねる鈴だったが、
「はいです、お隣の直枝理樹さんと一緒で、我が風紀委員会の最重要監視対象であるリトルバスターズのメンバーをこの私が忘れるわけありませんですよ。」
「う゛…。」
嬉しくない知られ方だと分かり、突如憮然とする鈴を横目に、
「ほらほら、楓さんも棗さんもこちらの彼女を放っておいて漫才を始めないこと。…ほら、とりあえずこれに着替えて、お茶でも飲んで落ち着いたらお話を聞きましょう。」
佳奈多がそう割り込んできて、楓が持ってきた制服を女生徒に渡し、ロッカールームに案内する。ややあって、着替えて出てきた彼女はこころもち落ち着いた様子で、
「あ、あの…ありがとうございます。正直、風紀委員ってもっと怖い方々だと思ってたんですが…、」
そう頭を下げるのを、楓が制して、
「お礼には及びませんですよ、私たちはあくまで“善良な一般生徒の味方”ですから。ですよね、委員長?」
「ええ。だから校内の秩序を乱さない限りは怖がることはないわよ。それで、悪いけど貴女が被害にあった状況を聞かせてくれるかしら?」
「は、はい。でも…、」
楓と佳奈多の発言に安心したような女生徒だったが、ふと理樹と鈴のほうに視線を走らせ逡巡する。
「…あれ、あたしたちの顔になんかついてるか?」
「違うよ、僕たちは風紀委員じゃないから話していいかどうか迷ってるんだよ。」
理樹のひそひそ声を聞いてか聞かずか、佳奈多がそうしている女生徒に言うには、
「この二人なら安心して頂戴、この二人、騒ぎばっかり起こす問題児グループの一員だけど、基本的にお節介で善良なタイプだから、彼らに聞かれたからって貴女に不利に働くことはないわ。」
と、褒めてる振りして貶しつつフォローを入れるが、理樹と鈴もそれに反論せず、それを受けて女生徒に話しかける。
「そーそー、あたしたちはにおー、“悪をせーばいするせーぎのみかた”な連中だから、ぜんぜん信じてくれていーぞ。」
「そうそう…って鈴、におー、って何さ。」
「いちおーと言うにもちょっと足りないから、1を2にしてみた。」
「また新語考えたのか…、流行るといいねそれ…。」
「…うふっ。」
そんなやりとりを目の当たりにして、緊張がほぐれたのか、女生徒がくすりと吹き出す。それに怪訝そうな表情をした二人の後ろから佳奈多もくすくす笑いながら、
「ありがとう二人とも、お陰でこの子も随分話しやすくなったみたいよ。」
と、声をかけるも、不思議そうな顔で佳奈多を振り向く二人。その様子を訝った佳奈多の脳裏に、ふと一つの可能性が浮かぶ。
「もしかして貴女達…今の、素でやってたとか?」
「かなた、だからなんだそれは。理樹がへんなこと聞いてきたから答えたのがなんで可笑しいんだ?」
「あ…そ…。」
やや釈然としない表情ながら、気を取り直した佳奈多。椅子を持ってきて女生徒の斜め脇に座る。
「…今なら話せる?辛いだろうけど、話せるだけ話して頂戴。」
佳奈多の言葉に、女生徒は小さく頷くと話し始めた。



「…ずいぶん、こわかっただろうな。」
「そうだね…。」
女生徒の話を要約するとこうだった。クラスメイトの1人がある日、上級生から自分たちの派閥に入れと強要されて悩んでいたので担任に相談したところ、その場は収まったものの今日いきなりその上級生らしき生徒二人に校舎裏に呼び出されて、口出しするなと脅された。断ったらシャツのボタンを引きちぎられて、スカートを少しずつ鋏で切り刻まれはじめ、風紀委員が通りかかったから事なきを得たものの、その上級生は逃げるときに彼女の携帯電話を奪っていったらしい。
「…そう、それは災難だったわね。」
一段落ついたところで、佳奈多がそう呟きつつ女生徒の肩にそっと手を置く。
「入学したばかりで、そんな目に遭うなんて…でも、うちの学校の生徒がそんな連中ばっかりじゃないから、ここで尻込みしないでくれると嬉しい。」
「…はい。」
その返事を、穏やかな微笑みで受ける佳奈多だったが、次の瞬間顔をあげたその表情が一変する。
「楓さん!」
「はいです!」
「該当者をピックアップ!」
「了解!」
鋭い声で、傍らの楓に指示を飛ばす佳奈多。楓も撃てば響くように返事をすると、限界まで用紙を綴じこんだ分厚いファイルを取り出すと、ものすごい勢いでめくり始める。
「ねえねえ二木さん、あれって…?」
「あれは楓さんの秘密兵器、4月以降の学内での問題行動について全て記録してある、言ってみれば“閻魔帳”よ。」
「全部あのファイルに収まってるんだ…、すごいなあ。」
「もっとも、半分以上があなた達と葉留佳で埋まってるんだけどね…とにかく、前科がある相手なら彼女の目から逃れるのは不可能よ。」
そう佳奈多と理樹が話している間に、記録を辿っていた楓の指があるページで止まる。
「…ありました!2−D、高宮さん、勝沢さん!このお二人は以前にも似たような恐喝を行っています!」
「あの二人か…以前は来ヶ谷さんにちょっかい出していたこともあったわね。…普段は特に問題なんか起こさないのに、全く、誰かと群れてないと不安なのかしらね…?」
案の定だったのか、楓が列挙した名前を聞いて溜息をつきつつ呟く佳奈多。
「だからといって、こんなことゆるされないぞ、人を泣かせて作った友達なんてくちゃくちゃじょーだんじゃない。」
鈴がそう割り込んでくると、佳奈多も鈴に向き直り、
「その通りよ、風紀としてもこんなことを見て見ぬ振りはできないわ。」
宣誓するような調子で答え、ふと表情をやや和らげて女生徒の方に向き直る。
「ええと、貴女…1人で寮まで帰れる?」
「あ…だ、大丈夫です。」
「それじゃ、難しいかもしれないけど今日のことはあまり気に病まないでね。大丈夫、明日には犯人に土下座させてあげるから。」
「は、はい…?それでは、失礼します…。」
そういうやり取りをした後、女生徒が退室したことを確認すると、、
「それでは楓さん、皆に召集かけるわよ!」
「はいです!」
言うが早いか、制服のポケットから腕章を取り出し、左腕に装着する。瞬間、二人の顔が一気に引き締まる。
「では、佳奈多さん、放送室に!」
「ええ!」
理樹と鈴のことなど既に目に入っていないような様子でそうやり取りをすると、二人揃って廊下へと出て行く。鈴と理樹も慌てて後を追った。


Chapter 2 Mission start


「誰だね、今は電子ピアノの調律中だから立ち入りきん…おや、誰かと思ったら佳奈多君ではないか。」
二人の向かった先は放送室。重いドアを開けた瞬間、中からそう声をかけられる。
「あれ、校内放送の時間でもないのにどうしたんですか、来ヶ谷さん?」
「え、来ヶ谷さん?」
佳奈多の背後でやり取りを聞いていた理樹が顔を出すと、確かに室内には難しい顔をしてなにやらコンソールを操作している唯湖の姿。
「む…?楓君は風紀委員だから佳奈多君と一緒に来ても不思議はないが…理樹君に鈴君も加わるとは珍しい組み合わせだな。」
首を傾げつつ呟く唯湖に、
「きちんとした理由はありますが、説明は少々長くなるので後回しにさせてもらいます。それより、緊急事態です、悪いけれど放送室を使わせてくださいませんか?」
「今すぐか?それは困った、何しろこのピアノは少々癖があって、調律を途中で止めるとはじめからやり直しになってしまうのだよ。あと30分ほど待ってくれるわけにはいかないかね。」
佳奈多の申し出に、唯湖がそう難色を示す。その時、
(…?)
理樹が唯湖の口調になにやら違和感を感じ、思わず隣の鈴を振り向くと、鈴も怪訝そうな表情で佳奈多の肩越しに室内を覗き込んでいる。
(…理樹、くるがやは本当に困ってるのか?)
(鈴もそう思った?なんかわざと言ってるような気も…。)
二人がそんなことをひそひそ囁きあってるのをよそに、佳奈多が再び口を開いて言うには、
「タイミングが悪いときに来てしまったのはごめんなさい…でも、今は善良な一般の生徒を被害にあわせた犯人を捕まえなくてはならないの、この埋め合わせは必ずするから今は譲ってください。」
同時に両手を前で重ね合わせて、深く礼をしたのには却って唯湖のほうが面食らったらしく、
「…ほう…?…分かった、そんな事情なら調律は後回しにしよう、私は退室するから好きなように使ってくれたまえ。」
そう言っててきぱきと機材を整理すると、佳奈多の横をすり抜けていく唯湖。佳奈多はその背中に、
「え…?…あ、ありがとう来ヶ谷さん。」
その言葉には片手を上げて返し、そのまま後方の理樹たちのほうへとやってくる。
「来ヶ谷さん、やけに素直だったね今のは。」
「…理樹君、君は普段私をそういう目で見ていたのかね。まあそれはさておき、あそこで以前の佳奈多君みたいに風紀委員の権限でも振りかざしてきたら少々からかってやるつもりだったがね、今の彼女の言動からは“今放送室を使用することが必要”だということが伝わってきた。私とてそれを茶化す気はないさ。」
ふふ、と微笑みつつ言う唯湖。
「そうだね。なんか二木さん、前と比べてなんかこう…大人になった、って言うのかな、随分変わったよね。」
「そーだな、でもくるがやも変わったぞ、あそこであっさり折れるなんて。」
「ふふ…まぁ、死に際で踏ん張ってれば、人間嫌でも変わってくるということかな。」
どこか遠い目をして呟く唯湖に、二人は怪訝そうに、
「…死に際?」
「なんだそりゃ?」
「まあ、言葉のアヤだ、深く考えないでくれ…お、始まったぞ。」
問いには答えず、廊下のスピーカーを見上げて唯湖が呟いたその瞬間、いつもの放送チャイムとは違う、カーン、カーンと鐘を叩くようなチャイムが聴こえてきて、それに続けて佳奈多の声が響いてきた。
“風紀委員に連絡します。至急放送室前に集合してください、繰り返します…”
「ん?聞いたことのないチャイムだな。」
「緊急招集のチャイムか、私も存在は知っていたが実際に聞くのは初めてだ。」
と、放送室前で喋っていると、あちらこちらから1人、また1人と、緊張した面持ちの生徒が集まってくる。その腕に例外なく付けられているのは深紅の腕章。
「みんな風紀委員なのか、ずいぶんいるんだね。」
「ひーふーみー…20人もいたのか。」
「クラスから2人ずつ選抜だからな。都合で集まれないのを省いてもそのくらいはあるさ。」
3人がそんなことを喋っている間にも続々放送室前に集まってくる風紀委員達。そして彼らが放送室前に整列したとほぼ時を同じくして、室内から佳奈多と楓が出てくる。
「急に呼び出してごめんなさい。既に知ってる人もいると思うけど、約45分前に、校内で一年の女子が二年生の女子二人に恐喝されかかるという事件が起きました。」
その言葉を聴いた瞬間、風紀委員達の表情が固くなり、隣同士ひそひそと囁きあう。
「はい傾注!それで、犯人はD組の高宮さん、勝沢さん。一度呼び出しをかけて、応じればよし、応じなければここにいるメンバーで追跡をかけます。」
『はい!』
揃った返事に、満足そうに一度頷く佳奈多、そして傍らの楓を振り返り、
「楓さん、呼び出しをお願い。5分たって動きがなかったら行動を開始します。A班は私、B班は楓さんの指揮に従って、普段の訓練の成果を発揮して下さい。」
と説明している中、放送室内では楓がマイクに向かって話し始めていた。



「…あーちくしょー、何よあの風紀の奴、ジャマしてくれちゃって。」
「だから、程々にしようって言ったじゃない、かっちゃん。あたしらだって連中に目付けられてないわけじゃないんだからさ…。あ、ひょっとしてさっきの風紀召集…。」
「考えすぎでしょ。連中、来ヶ谷とか三枝とかそっちの連中優先だから、よほどのことでない限りあたしたちには…、」
チャイムが勝沢と高宮の耳に入ってきたときは、丁度二人が部活動中や、それ以外でも校舎に居残っている生徒が行きかう廊下を歩きつつ、そんなやり取りをしているときだった。
“風紀委員からの呼び出しです。二年D組、勝沢さん及び高宮さん、至急風紀委員室まで来てください。繰り返します。二年D組…、”
『!!』
話が大事になっているのを今更ながら認識し、驚愕しつつお互いの顔を見合う二人。ややあって、
「ど…どうしようかっちゃん。さすがに逃げたら後が怖いかも…?」
と、不安げな声で問う高宮に対し、勝沢は強い調子で、
「何言ってんの高宮!どうせ風紀の連中でしょ?簡単に逃げ切れるのにわざわざ自首してやることもないって、連中も忙しいんだから今日乗り切れば諦めるでしょ、このまま隠れてやりすごしましょ!」
と、自信満々に返すので、高宮も結局そうすることにした。



「…佳奈多さん、5分経過です。」
「結局勧告は無視したわね…それでは風紀委員出動!」
『はい!』
放送室から顔を出した楓の報告を受け、集まった風紀委員に佳奈多が号令をかけ、風紀委員も揃った返事でそれに応える。
「直枝理樹に棗さん!ついてきたければ構わないけど、廊下は走らないでね!」
そう言い捨てて、廊下を速足で歩き出す佳奈多に、集合した委員のほぼ半数が追随していく。理樹と鈴もそれに引っ張られるように早足で付いていく。
「…ぬー?あいつら、歩いてるくせに速いぞ。」
「速足って言うんだよ。でも、確かに速いや…それに全く隊列が乱れないなんて…。」
「あいつらもくちゃくちゃ普通じゃないじゃないか…あ、あっちの奴らも動くみたいだぞ。」
鈴の言葉に振り向くと、いつの間にか放送室から出てきた楓が、残りのメンバーを率いて、佳奈多たちとは反対側のほうへと進んでいくのが見える。二人は彼らの背中を見送ると、改めて佳奈多たちを追いかけ始めた。


Chapter 3 Getting reinforces


「…!かっちゃん、風紀の連中、動き始めたよ!」
「ふん、相も変わらずあんな大人数で来やがって。今は授業中や休み時間と違って皆あちこちに歩いてるからね。アレだけの人数じゃ身動き取れないわよ。」
慌てる高宮に対し、落ち着き払って中庭から校舎内を覗き込む勝沢。彼女の言ったとおり、最初こそスムーズに動いていたが、廊下を不規則に歩く生徒にぶつからないようにとスピードはかなり落ち込んでいる。
「ホントだ、アレくらいなら逃げ切れそう!」
「だから言ったでしょ?あいつら、最近は三枝葉留佳とか来ヶ谷唯湖とツルんでる連中さえ捕まえられないんだから、大したことないって。」
その嘲弄が聴こえたのか否か、ふと外に視線を向けた佳奈多と勝沢の視線が偶然合ってしまう。
(…う、いくらなんでも少々マズいか?)
勝沢がそう思った瞬間、佳奈多の右手が真っ直ぐ真上へ伸ばされる、そしてそれと同時に、佳奈多の良く通る声が響き渡る。
「目標発見!これよりフォーメーションSに移行!」
同時に、佳奈多が駆け足で駆け出すと、後続の委員も彼女の走行ルートをなぞるように走り出す。
「…おおお!?なんだこの動きは?」
「佳奈多さんの後を皆が正確に付いて行ってる…なるほど、佳奈多さんさえどこかで引っかからなければ混雑してる中でもスムーズに進めるわけか…でもこれ、よっぽど訓練したんだな…まるで蛇みたいな…あ、だから“S”か!」
ぽん、と手を打って納得する理樹に、駆け出しかけている鈴が叫ぶように声をかける。
「おい理樹、いつまでも考えているな、あいつらにおいてかれるぞ!」
「う、うん!」
鈴に促されて、再び先に走り出した彼女に追随するように理樹も廊下を走り出した。



「おや?」
今日は何をして遊ぼうか、と廊下をぶらぶら歩いていた葉留佳が、廊下のはるか前方がなにやらざわついていることに気付き、身を乗り出してみると、よく見知った一団が群集の間を縫うようにこちらへと流れるように進んでくる様子を目にする。
「あれ?お姉ちゃん、今日はまだはるちんは問題起こしてないですヨ?」
先頭の佳奈多にそう話しかけるも、佳奈多はスピードを緩めず、
「今日は貴女じゃないわ、葉留佳。少々洒落にならない事件が起きちゃって、出来れば当局に知られる前に抑えたいから急がせて頂戴。」
そういいつつ、葉留佳の前を通り過ぎていく。数秒の間、状況が理解できずその場できょとんとしていた葉留佳だが、我に返ると、
「お姉ちゃん、これ持っていって、役に立つよ!」
言葉と同時に、佳奈多に向かって何かを投げる。反射的に受け取った佳奈多がそれが何かを確認すると、
(…新聞紙?)
新手の悪戯かとも思ったが、それにしては芸がなさ過ぎる、と改めて葉留佳を見ると、にやりと性格の悪そうに微笑みつつ、両手で何かを絞るような動作をする。
(…あ!)
その動作でひらめいた佳奈多、片手でそれをひらひらと振って葉留佳に謝意を示しつつ、既に身体は中庭への昇降口に到達していた。


Chapter 4 The capturing tactics


「は、速え!なんだあの動きは…?」
「も、もう捕まっちゃう、ここにいると危ないよ、かっちゃん!」
いつの間にか先頭の佳奈多が中庭に現れた…かと思うと、それに続いて次々と風紀委員がこちらへ向かってくることに狼狽する二人。慌てて立ち上がると、
「かっちゃん、こちら!」
「ど、何所に行くんだよ、高宮…?」
「焼却炉から校庭へ抜けるよ!あそこはゴミとかガラクタいっぱいだから逃げ切れると思う!」
「おお、さすがー!よし行こうー!」
そう言うと風紀委員に追いつかれない先にと校舎間の細い通路に飛び込む二人。しかし、
「…ふふ、予想通りに動いてきたですよ。B班出動、フォーメーションA、組むですよ!」
渡り廊下の入り口で様子を伺っていた楓が二人の姿を認め、号令をかけると周りの委員がいっせいに動く。楓の前に屈強な男子委員が二人並び、そこを頂点に他の委員が斜め後方に、矢印を描くように並び、そのまま一斉に動き始める。
「…校庭に出られると当局にもばれて大事になってしまうのです、なんとしても中庭で確保するですよ!」
その言葉通り、焼却炉を挟んで勝沢、高宮と反対側に現れた矢印は、校庭へ抜ける通路を確保するように二人の前に立ちはだかった。
「げーっ!副委員長!?」
性別を疑われそうな口調と表情で絶叫する勝沢。その叫びに反応するかのように、人間矢印が二人へと穂先を向け、
「捕まえるです!」
『ラジャー!』
楓の号令一下、二人に向かって殺到する。勝沢はいち早く飛びのいたことが功を奏したか、なんとかやり過ごすことが出来たが、
「確保!」
「きゃっ!」
高宮が避けきれず、委員の片手をつかまれると同時にもう1人に反対側の腕を固められてしまう。
「…は、離してよっ!」
「高宮!…こいつ、離しやがれっ!」
逃げかけた勝沢が振り返って突っ込むと、高宮を捕らえている片方にしがみついて引き倒す。
「かっちゃん、ありがと!」
「いいから、早く逃げ…!?」
そのまま高宮の手を引いて逃げだそうとした勝沢だったが、ふと周りを見回すといつの間にか周りの逃げ道ことごとくを固めている風紀委員の姿が目に入る。
「…くっ!囲まれたか…!」
「かっちゃん…どうしよう、どこに逃げても捕まえられそうだよ…。」
唖然とした二人が、それでも逃げ道を作れないかと周囲を見回していると、彼女らを囲んだ委員の中から一人、歩み出てくる。
「フォーメーション8…古代中国の戦記映画のパクリなんていわないで頂戴ね…。ここから逃げ出すのはほぼ不可能よ、観念なさい、勝沢、高宮。」
「二木…。テメ、いつの間にこんな芸当が出来るように?」
苦々しげに佳奈多に尋ねる勝沢に、佳奈多はふ、と笑みを浮かべると。
「そりゃ、貴女たちより遙かに厄介な連中を取り締まるために訓練してるんだもの。以前ならともかく、今の風紀委員は貴女達相手に後れを取ることは無いと思って頂戴。」
そう言ってから、ぎゅっ、と表情を引き締め。
「既に逃げ道は全部塞いだわ。一応忠告しておくけど、勝沢、あなたやり方は良くないけど、今高宮助けたみたいに友人思いなところは嫌いじゃないの。だから、おとなしく投降してくれれば悪いようにはしないわ。」
「…誰が!お前らの言うことになんか…!」
勝沢、佳奈多を睨みつけてそう返しつつ周囲を見回し、誰かが忘れていったのか清掃用のブラシを見つけるとすばやく拾い上げ、
「どけよお前ら!」
「わあっ!?」
高宮を背後に庇いつつ、大きくブラシを振り回して強引に逃げ道を塞いでいる風紀委員をどかしに掛かる。
「か、かっちゃんダメだよ暴力は!怪我でもさせたらかっちゃん退学なっちゃうよ!」
「あたしはいいんだよ、それより高宮のほうこそ、ここで捕まったら推薦流れちまうだろ!?ここはあたしがなんとかするからお前はうまく逃げろ!」
「そんな…かっちゃんを置いていけるわけないでしょ!?」

「――――台詞だけみればくちゃくちゃいい話なんだけどな。」
「それなら最初から恐喝なんてするな、って話だよね…。」
いつの間にか追いついてきた鈴と理樹が、そう囁きあいながら様子を見ると、モップを振り回して風紀委員を追い払いつつ、勝沢がじりじりと佳奈多の方へと向かって行くのが見える。
「まずい…いくらかなただってモップと素手じゃかなわないぞ。」
「…どうしよう…割り込んででも止めたほうが…。」
と、二人が勝沢のほうへと駆け出そうとしたとき、
「待て、今急いでも間に合わない、却って奴が捨て鉢になって暴れだしたら逆効果だぞ。」
という制止の声に振り向くと、そこには、
「謙吾!?どうしてここに?」
「どうしてもなにも…部活に行こうとしたら廊下でなにやら騒ぎが起こってて、付いてきたらこの状態だったということだが。」
予想外の姿に驚愕して尋ねる理樹に、何事もないように答える謙吾。
「…けんどーぶはくちゃくちゃ暇なのか?」
「悪かったな。…それより、連中のことだが…二木なら大丈夫だろう。」
「謙吾!?…そんな、相手は武器持ってるんだよ!そんな楽天的な…、」
と、食って掛かる理樹を制して、謙吾が続ける。
「落ち着け、まあ見てみろ二木の様子を。」
そう言われて二人が佳奈多の方に目を向けると、武器を持った相手が迫っているにもかかわらず落ち着き払った様子で相手を見据えつつ、
「…さて、葉留佳に借りを作るのは癪だけどね…。」
と。先刻葉留佳に渡された新聞紙を広げると、固く棒状に丸め、それを竹刀を持つかのように中段に構える。
「…あれは、新聞紙ブレード!」
「二木さん、あれ知ってたのか…。」
二人が解説しているのをよそに、その構えのまま勝沢を待つ佳奈多。やがて目の前に勝沢がやってくると、
「…ほんと、美しい友情だこと。それでなんで他人は泣かせてでもサル山に引き入れようとするかなあ…。まあいいわ、最後通牒よ、武器を捨てて投降しなさい、素直に言うこと聞いてくれれば風紀だって鬼じゃないわよ。」
「…信じられるか!そんなこと信じるより、お前さえ潰しちまえば後は烏合の衆だろ、そうするのが確実ってもんだ!」
叫ぶように答えると、モップを改めて構え、佳奈多に迫っていく勝沢、佳奈多はそれに対してまったく動じず、
「喰らえ―――!」
と、振りかぶったその瞬間、
「ほう、以前と比べれば迷いのない良い構えだ。あの構えなら全国レベルだな。」
謙吾の呟きの通り、振りかぶった隙を逃さず大きく前に踏み込んだ佳奈多、
「――――小手ッ!」
ぱん、という鋭い音とともに弾き飛ばされたモップが、離れたところに落ちてからからと音を立てる。そして元のところには新聞紙の刀を斜めに振り下ろした格好で静止する佳奈多と、その足元に転がり、左手の甲を右手で押さえて苦痛の呻きを漏らす勝沢の姿があった。


Epilogue Her works goes on


『どうも申し訳ありませんでした、どうも申し訳ありませんでした…。』
翌日。
風紀委員室で、件の下級生を前に何度も頭を下げる勝沢と高宮の姿があった。
「ほらその調子、あと20回、しっかり謝りなさい。」
困惑している下級生に構わず、二人に声を飛ばす佳奈多。
「あ、あの…そろそろ許してあげても…。」
「ダメ。昨日の一件は貴女が許しても風紀としては簡単に放免とはいかないわ、せめてペナルティはきっちり受けてもらわないと。」
そう言うと、更に二人を促す。そして規定の回数謝罪したことを確認すると。
「…よろしい、それじゃ楓さん、今回のことは記録から消しておきなさい。」
「え、良いんですか佳奈多さん?」
「被害者の子がそう希望してるんだから仕方ないでしょう?私としてはこう言うことは好きじゃないけど…こんなことで処分受けて、後々の人生まで狂わせたんじゃ私としてもちょっとね。」
と、渋面の中で微笑むという複雑な表情を浮かべつつ、佳奈多が楓の確認に答える。
「…え?」
「…それ…本当?」
その発言を聞きつけ、思わず顔を上げた勝沢と高宮、呆然としつつ下級生の方へと振り向くと、
「…いいのかよ…?あたしら、アンタのこと…、」
「そうだよ、別にあたしたちを憐れんでるならそんなこと…。」
「いえ、そうではなくて…先輩方、できるなら私と友達になって欲しいのですが…。」
『はァ!?』
予想の斜め上の申し出に、同時に驚愕する二人。
「…アンタ、大丈夫?フツー酷い目に遭わされた相手に友達になれって…。」
と、片手で頭を押さえつつ高宮が問いかけるも、
「…正直、今でも怖いですけど…なんかお二人のお互いの様子みてると、そんなに悪い人じゃないのかな、とか…あ、でも、上下関係なしの友達なら、ですけど。」
と返され、二人は唖然としてお互い顔を合わせる。
「あらあら、これは予想外の展開ね。」
「そうですね…確かに今回は罰則を適用しないで却って良かったかもです。」
そういいつつも、半ば予想していたような佳奈多が、唖然とする楓を促し、三人を退出させる。何所となく微妙な距離を取りつつ並んで去っていく彼女らを見送ると。
「さ、お二人とも出てきなさい。こちらの予想とは違ったけど、上手くまとまったんじゃない?」
委員室の奥に向かって声をかけると、陰に隠れていた鈴と理樹が出てくる。
「うん、たしかに予想外だったけど、良い形でまとまったんじゃないかな。」
「そーだな、でもかなたもなんか前とは違うな。」
「あら?何所が違うのかしら?」
鈴の一言に、不思議そうに問いかける佳奈多。鈴の答えには、
「前は、違反したら何でもかんでもしゃくしじょーぎに罰則だったけど、今はいろんな事情をかんがえてしごとをしてる。」
「ありがとう。そういってくれて光栄よ、棗さん。」
そう行って、左腕の腕章をぽん、と叩く。
「前はこれがただ重かったけど、この重さの招待は皆が平穏無事な学生生活を送るための責任と期待だと考えたら、なんかこれを支える力が湧いてくる気がしてね…ってのはガラじゃないかしら?」
「いや、とても二木さんらしいよ。」
「うん、今の台詞はクサいが格好よかったぞ。」
「あ、あら?褒めても取り締まりは手加減しないわよ。」
と、佳奈多が照れつつ答えたその瞬間、
「委員長!第二グランドで騒動です!」
その声の瞬間、表情を引き締め、叫びと共に飛び込んできた委員の方へ向き直る佳奈多。間髪いれずに尋ねる。
「…一体何があったの!?」
「それが…第二グランド中にビー玉を撒き散らし、“宝探しゲームだー!”とか三枝葉留佳が叫んだところ、例のリトルバスターズのほかにも何人も乱入してきまして…。」
「…あれ?珍しいわね、貴女達抜きで騒ぎ始めるなんて。」
不思議そうに理樹を振り向き、そう呟く佳奈多。当の理樹も、
「うーん、どうしたんだろ、いつもはフルメンバー揃うまで待ってるのに…。」
「あとであたし達もまぜるつもりにしちゃ、予告もなしだからなあ…。」
鈴と一緒に困惑していると、窓の外から叫び声が聴こえてきた。
「こらぁ、お姉ちゃん!理樹くんや鈴ちゃんだけじゃなくたまにはわたしも構えー!!」
その間違えようもない声色に、脱力する三人。
「…あいつ、きょーだいがともだちと遊ぶと置いてけぼりにされたと考える子供か…?」
「あはは…まさか僕と鈴が二木さんとくっついてたのが不満だったとは…。」
「ふぅ…いいわよ、ご指名というならお望みどおり取り締まってあげようじゃない。」
呆れた声色とは裏腹に、表情は凛々しい笑みを浮かべた佳奈多が、そばで指示を待っていた楓を振り向き。
「楓さん!全委員を第二グランドに招集しなさい。…直枝理樹に棗さん、貴方たちのお仲間を取り締まることになるけど、構わないでしょ?」
「うん、今日はさすがにあいつら、痛い目にあったほうがいいだろ。」
「うーん、手荒なことはして欲しくないけど、明らかに二木さんを挑発してるしなあ…今日ばっかりは自業自得かな。」
二人の返答に、くすりと一瞬微笑むと、
「では、行くわよ、楓さん!ペナルティとして全員、校庭の草むしりさせてあげるわ!」
「はいです!」
楓を従えつつ、真っ直ぐ前を向いて委員室から出て行く佳奈多。それを見送った理樹と鈴は、佳奈多の姿が見えなくなる頃にお互い向き合うと、くすりと微笑んだ。

END










あとがき
まず、最初に。風紀委員の楓さんは、笹桐ゆうや氏の『リトルバスターズ!The4コマ』シリーズのオリジナルキャラクターから取材いたしております。見たらどうしても出したかったので、関係者の皆様、万一ご覧になっていてもご容赦いただきたいと思います。
でもって、この話ですが、なんか自分が呼んだ佳奈多ネタのSSって、二木佳奈多の描かれ方が可愛いとか妹思いとかいうイメージが多いかなと思ったので、敢えて風紀として格好良い佳奈多を書いたつもりですが、上手く表現できていましたでしょうか?そういう印象を読者の方々に与えられれば、私の狙いがきちんと伝えられたんじゃないかなと思います。
あと、ゴメンよ勝沢と高宮。悪役を振れそうなのがゲーム中にほとんどいなかったから貧乏くじを引かせちまったいw

BTL





押したりコメントいただければ、狂喜しますw

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