「理樹,今日は何の日だか知ってるか?」
「何だよ恭介,藪から棒に……えっと,日曜だから……あ,そうか!ねえ,早く食べないとすーぱーひーろーあんどひろいんたいむ始まっちゃうんじゃないの?」
「違ぇよ日曜なのは合ってるが意図するところはそこじゃねえ!」
「じゃ,じゃあ何なんだよ?別に今日は誰とも何も約束もないし…」
「……おい,ちょっとその話詳しく聞こうか?」
「な,何だよそんな急に怖い顔して……真人は例によって寝坊してる(多分午後まで寝た上で筋トレ)し,謙吾は今日も朝練から一日ずっと部活だって言ってるし鈴は小毬さんと出かけてるし,クドと美魚さんと唯湖さんは昨日から見ないし,葉留佳さんと佳奈多さんにはなぜか昨日から避けられてるし,笹瀬川さんは部活の子たちと一緒だしで……ほら,見事なまでに今日は何もないよ?」
「むう」
「そういう恭介はどうなのさ。と,言うか本当に何の日なの今日?紀元節はおとといだったし……」
「戦前かよ!今は建国記念日って名称になってんだよ!第一そんなこと言い出すと各種問題がだな……」
「マスコミじゃないから問題ないでしょ」
「ああ,それはそうだな……ってそうじゃねえよ,今日は2月の14日,バレンタインデーだろうが!」
「……おお!」
「おお!じゃねえだろ,一部女子の間では直枝君がどうとか割と耳にするんだよ。おまえが今日どうするかってのはちょっと注目の的なんだぞ?」
「……注目の的も何も,去年までの毎年の実績が鈴がくれた『チロリチョコ』10コだけな僕に対する何かの新手のいじめですか恭介さん?いじめ,良くない!カッコワルイ!」
「……テメエ,鈴のチョコになんか文句があるってのか?ああん?」
「わーちょっと待って待って!発言の趣旨はそこじゃないよ!ソレにほら朝の食堂で騒ぐとみんなに迷惑ー!」
「……『みんな』ったって誰もいないじゃねえか!」
「……あれ?ほんとだ……そー言えば中庭でなんか男子がいっぱい集まってたけど?」
「ああ,アレは『バレンタイン中止集会』だな。確か。気持ち的には俺も参加したいとこではあるが」
「女子がかわいそうでしょ!楽しみにしてる子もいるみたいなんだから」
「……ま,まあそれはそれとして,今日はどうする?」
「とりあえず午前中は洗濯して午後からは積んでた本を消化する方向だね。恭介は……なに?ソレはデートとかのメール?」
「……内緒」
「……なんか変なこと考えてないよね?そのミョーな口元の笑みは」
「……さ,行こ行こ」
「恭介ー!」
「……う……ん」
『うおーい!理樹ー!開けてくれー!!』
「……あ,どしたんだろ真人,窓から?」
「うっひょー,なんか体育館側の廊下が人いっぱいで通れなくてさ。コッチのが早いからよ……ってなんなんだ?入り口のアレ」
「入り口?……あー,うん,本読んでる間に眠ってたんで気づかなかった」
「おう,そんなことよりも聞いてくれよ理樹,なあ,俺今日こんなんもらっちまったぜ!」
「……『スーパープロ(チョコ味)』……プロテイン?」
「おうよ!毎日筋トレで一緒になる女子レスリング部の……なんつっかっけ……まあいいや,とにかく,そいつにもらったんだ。これ良い効果有るらしいんでありがたいぜ。値段も結構するらしいからなおさらだ。……うーん,あいつ,いいやつだったんだな……」
「(……あんだけ毎日筋トレで一緒になるんだから,名前くらい覚えてあげようよ真人……うっ!)」
「ん,どうした理樹涙目で?早速飲んでみようぜ!あ,でもこれは筋トレの後じゃない効果がな。さあ,一緒にバーベルを!さあ,筋肉筋肉ー!」
「筋肉筋肉ー!……っていやいやいやいやソレは真人だけが飲まないとだね……」
「何だよ,遠慮すんなほれほれ」
『おーい,理樹,真人,いるかー?』
「あれ?謙吾?」
「うおい,あけてくれよ,ココ。今,練習終わったとこなんだが入り口がなんか人いっぱいで入れなくてな」
「ありゃ,まだふさがってるのか」
「そんなわけで差し入れ持ってきたぞ。なんか今日は女子でイベントだったらしくて,いっぱいチョコもらったんで一緒に食べようと思ってな」
「うわ,なにその数!モテるんだね謙吾ー」
「うっひょー,いっぱいあんじゃん!!」
「とても食べ切れそうにないんで一緒に食べよう。体力回復とか勉強疲れには甘いモノは良いって言うぜ?さあ理樹も一つ……」
「……二人とも,そういうのは時間かかってもいいから,もらった人が自分で食べるべきだよ……」
「?(もぐもぐ)」
「?(むぐむぐ)」
「……まあ,いいや。あんまり良くないけど。……ところで,恭介は?」
「さあ?」
「今日は見てないなあ?」
「おーい,直枝いるー?」
「あ,恭介と同室の」
「棗がえらいことになってるんだが,その,おまえら仲良いだろ?手伝ってもらえないかな?」
「???」
「……うう……」
「恭介!なんだってそんなとこに吊されてるんだ!」
「うお,さっきの人だかりってこれだったのか!!」
「えーと,なになに,『この者,バレンタインの仕儀に伴い著しい妨害があったため磔一日とする』……?って何やったのさ恭介!しかも体中のあちこちからチョコはみ出させて!!」
「なんか,直枝の部屋の前で来る子来る子を硬軟各種取り混ぜてブロックしてたらしいよ?何でかは知らないけど」
「恭介こらーー!!!!!」
「くっ!くくくくくっ!どうやら俺の勝ちだ……」
「ってか何だよそれ!何でそんなハナシになってるんだ!」
「ふっふっふ,おまえは知らない間にモテ過ぎちまったのさ……俺に出来ることは,せいぜいリトルバスターズのみんなのチョコが間に合うまでお前をガードすることくらいなのさ」
「言ってることの意味が全然わかんないよ恭介!っていうか僕のガードって何なんだよ!」
「前方にターゲット確認!!」
「なお前方に障害物有る模様,排除して進むべきか判断を請う!」
「薙ぎ払え!」
「うお?!り,理樹!あ,アレは女子寮のっ!!……10……20……一体何人いるんだ!」
「い,一体何が起こってるのさ!!」
「みんな目が血走ってるぞ!危険だ!!逃げろっ!」
「おっ!わっ!!うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ああああああああああああああああああああああああ」ぷち
「あ!恭介が飲み込まれたっ!」
「うぎょわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そんなどたばたバレンタインが今,始まる!
……良いのか始まって。
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