BTL Presents

Little Busters! Short Story

Pardon day

Chapter 1 An incledible proposal

「おーい、二木。」
「…棗さん?何用かしら?」
二学期の終業式の放課後。佳奈多が二学期中の活動内容をまとめて、風紀委員室から出てきたとこに恭介が声を掛けてきた。
「いやさ、24日にうちのメンバーでクリスマスパーティーをやることになったんだが…。」
いきなりそんなことを切り出してきた恭介を、佳奈多はそんなこと私に何か関係あるのか、という風情の表情を向け、
「…また馬鹿騒ぎ?…まあ、冬休み中だから多少のことには目をつぶるけど、あまりはしゃぎ過ぎないように…、」
「それでだな、二木。」
自分の発言を遮られた佳奈多。多少棘のある口調で、
「何?」
「いやな、会場のことなんだが、お前ン家使わせてほしいんだが。」
「私のうち…?」
更に訝るような表情の佳奈多。恭介の真意がいまひとつ理解できないものの、一応一家ですんでいる邸宅の間取りを考えて、
「…まあ、葉留佳が良いなら別に私も異存はないけど…うちでやるくらいだったら学食借りたほうが広くていいんじゃない?」
「ちげーよ、そっちの家じゃねーって。」
「?」
「お前んとこの本家使わして欲しいってんだよ。」
「…な…なにいいいいいっ!?」
使ったことのないような口調で驚愕の叫びが漏れるほど、恭介の申し出は予想外だった。

「…おいおい二木…言葉遣い言葉遣い。」
「…はっ!…わ、私としたことが…って棗さん、貴方まともでそんなこと言ってるの?」
恭介の指摘で我に返った佳奈多だが、恭介の発言を思い出し改めて食って掛かる。
「まともかどーかは俺にも良くわからんが、とりあえず伊達や酔狂じゃねーってことは確かだな。」
「…そりゃあ、この前までと違って、貴方たちを招待するくらいは私の口利きでも可能だけど…私の家の事情、知らないわけじゃないでしょ?」
いくつかの愚かな因習と不幸な偶然、それが悪意によって増幅された故の佳奈多の実家――三枝・二木両家の対立に生誕時から巻き込まれてきた佳奈多と妹の葉留佳。両家の優劣を決定する手駒として使われ、憎悪と苦痛、諦観のみを与えられてきた17年余。一時期は葉留佳とさえ絶縁していた最悪の状態が変化したのは半年ほど前、修学旅行先で事故に遭い、しばらく入院していた葉留佳と久しぶりに会話したところ、どういう訳か今までのわだかまりが嘘のようにお互いのことを理解できるようになっていた。
(…あの事故のとき…何か長い時間、あの子とやりあった気がするけど…気のせいかしらね。)
佳奈多がそう思うその通りのことがまさにあの時に起こっていたのだが、それはさておき。事故後はすっかり昔の関係を取り戻した(とはいえ、葉留佳の問題児扱いは変わらないが)二人、葉留佳の退院を機に行動に出る。どちらかというと日和っていた親戚を抱きこみ、この悪意に満ちた状況を設定していた、両家の中枢に近いところにいる面々を糾弾し、警察沙汰までにはしないものの、事実上家内での発言権を奪うというクーデターを敢行した、その結果佳奈多の発言権は強くなったものの、まだ両家のわだかまりは残っているし、この対立の原因を押し付けられた彼女らの父母の勘当も未だ解けてはいない。そして何より、葉留佳が未だ三枝家の忌み子だという扱いから脱却できていないことは佳奈多としては未だ不満が残るところであり、彼女自身としては、そんな空気のところに他人を招待できるはずがないと思うのが正直なところだった。
「…ああ、詳細は知らないが大体のところは知ってる。」
「だったら…私が是と言えないことくらい予想できるでしょ?」
自嘲気味に、肩をすくめてそう答える佳奈多。これで結論は出たと恭介に背を向けて帰りかけるが、
「知った上で言っているんだ、二木の家を使わせて欲しいってな。…ああそれと、一つ言い忘れてたが…、」
「…はあ?」
今までの佳奈多の返答など聞いてなかったように続ける恭介に、やれやれとばかりに振り返りながら生返事を返す佳奈多だったが、次の発言には心臓が飛び出るほど驚愕した。
「…ただ使わせてくれるのも悪いな。よし、当日はお前の親戚連も招待することにしよう、うん、それがいいな、よし決まった。」
「ちょっと…待てえええええええい!」
予想の遥か斜め上を行く発言に、再び声を荒げる佳奈多。恭介はそれを耳をふさいで聞くと、
「…うるさいなあ。そんなでけえ声で叫ばれたら近所迷惑だろーが。」
「さらっと言わないで頂戴!
いつものポーカーフェイスはどこへやら、恭介に噛み付かんばかりの勢いで食って掛かる。
「うちの親戚、どんな連中なのか棗さんなら解っているでしょ!いるだけで酒がまずくなる顔、なんでせっかくのクリスマスに揃えなきゃなんないのよ!」
「…二木お前、未成年なのに酒飲むのか?」
「言葉のあやよ!…ああもう、ああ言えばこう言う…いったい何を考えて…む!?」
怒りも呆れも超越した何か良くわからない感情がわきあがってきた佳奈多、うんざりした口調で恭介に言い返している途中で、恭介の口元が意味ありげににやりと笑っていることに気付き、途端冷静さを取り戻す。
「お、どうした二木。」
「…ちょっと何企んでるのか聞かせて頂戴。返事はそれからにするわ。」
と、じろりと恭介を睨めつけて呟くと、恭介は瞳の奥で笑って、
「お、もう察したか。まーな、わざわざお前ん家まで出向くのには理由があってだな…まあ、こう言うミッションを考えたわけだ…ちょいと耳貸せ…。」
といって、佳奈多に耳打ちする恭介。聞いた佳奈多は目を丸くして恭介に向き直り、
「…それ、本気でやる気なの…?」
半ば呆然として訊き返す佳奈多に、恭介は口だけで笑って、
「ああ、言っておくが俺たちはミッションのときは真面目だぜ、馬鹿やってるようでも大真面目に馬鹿やってるんだ。なあなあでやったことなんかねーよ。」
「ったく…そこまで調べて実行しますか…もうやめろって言っても間に合わないじゃない。…でもいいのね?失敗したらあたしたちはともかく、貴方たちリトルバスターズにとっても不利な事態になりかねないわよ。」
「構わねえ…というより、そんな事態にはならねーよ。理樹が総指揮で、全員がそれぞれに知恵絞ってるんだから、これで成敗できねえ悪があればお目に掛かりたいもんだぜ。」
「その自信はどこからくるんだか…判ったわ、とりあえず会場確保しないと始まらないから、そこは引き受けたわよ。」
「おう、任せたぜ!」
「…それはこっちの台詞よ、やるからには成功以外認めないからね…それじゃ。」
そう言い残して去っていく佳奈多を見送りつつ、恭介は、
「…やりにくいこと頼んじまって悪かったな…。俺たちも本気で行くからそれで帳消しにしてくれや…。」
聞こえないようにそっと呟いた。


Chapter 2 Close mission


話は数日前に遡る。
「…ちょいと、恭介さん。クリスマスパーティーのことでちょっと相談があるんですがネ…。」
「何だよ三枝。入り口から声かけるなんてらしくねーな、相談なら中に入れよ。」
珍しく一人で部室―――今だに野球部は休部状態なので、引き続きリトルバスターズが借用している―――にいた恭介に、入り口から顔だけ出して葉留佳が声を掛けてきたので、恭介はストーブを引っ張り出しながら葉留佳を促して中に入れる。
「いやー…みんながいるところではさすがに話しにくいと思いまして。」
その物言いにピンと来た恭介。搦め手はやめにしていきなり核心を衝いてみる。
「二木がどうかしたのか?」
「!」
恭介の問いに、一瞬硬直した葉留佳だったが、すぐいつもの調子に戻って、
「いやー、さすが鋭いっすね。…できればお姉ちゃんも、クリスマスパーティーに呼んでくれないかなーとか思ったりして…。」
「そりゃ構わないが…なんだよ、いきなり改まることでもねーだろうが。」
そう返された葉留佳、少々寂しげな眼差しになり、
「冷静に考えりゃそうなんだけどね。…お姉ちゃん、クリスマスパーティーってのに出たことないから…。」
「…む。」
考えてみると、一族で宗教やってる一家の跡取りとして育った佳奈多、あの一族の様子ではクリスマスなんて異郷の行事に触れさせてもらえなかったことは想像に難くない。
「そうだな…そういうことなら俺としてはOKだが…。」
「だが?」
奥歯に物の挟まったような口ぶりの恭介に、訝って訊き返す葉留佳。その声に反応して葉留佳の方を向いた恭介の瞳に、なにやら悪戯を思いついたような光がゆれているのを葉留佳ははっきりと見た。
「俺たちのパーティーに二木をこっそり呼ぶ、それは簡単だ。でもな、お前らの親戚から隠れるようにこそこそ動くんじゃ、所詮その場しのぎだ。それに…、」
そこで恭介は言葉を切り、にやりと笑みを浮かべて、
「第一、そんなんじゃ俺たちがお前の親戚から逃げ回ってるようで面白くないだろ。」
恭介に妙なスイッチが入ったと感づいた葉留佳。無論止めるより乗ってしまう葉留佳は、
「ほー、それはなんかよからぬことを考えてますネ?」
と、煽り口調で言うと、
「まーな、ただお前たちの親戚をギャフンと言わせることになるが…構うか?」
「いーえー、連中、結構鈍感ですからねー、叩きのめすまで行くのはちょっと待ってほしいけど、その程度だったら遠慮なしでいーよ。」
にやにや笑い継続と、くすりと笑いながらの両名、
「OKOK、しっかし、お前も丸くなったよな、詳しい事情まではしらねーが、お前たち、相当やられてたらしいから、徹底的にやれとか言うと思ったが。」
恭介の言葉に、葉留佳はおどけて首を振ってみせ、
「いやいや、お姉ちゃんと私でやっつけた連中以外は、どっちかというと既得権を守れればそれでいいって感じのビビリばっかりだからね、全力で叩いたらリトルバスターズが弱いものいじめしてるみたいで感じ悪いでしょ。ビビらすだけで十分よ。」
すっかり悪人面になっている二人、性格悪そうな笑みを浮かべあうと、恭介はポケットから携帯電話を取り出す。
「よーし、そうと決まれば早速ミッションだぜ。“おーい、皆緊急作戦会議だ、部室集まれー”よし、こう書けばいいだろ。」
そういってしばらく待っていると、ちらほらと現れるリトルバスターズメンバー。
「あらいばるですっ、どうしました、恭介さんっ。」
「よーす。いきなりなんだよ恭介…おや三枝も居たのか。」
「む?恭介と三枝という組み合わせは…何かよからぬことでも考えているのではないか?」
「珍しくも謙吾少年に同意だな。お前たち、何を企んでいる?おねーさんが笑っているうちに吐いたほうが幸せだぞ…?」
「ちげーよ、普段からどんな目で俺と三枝を見てやがんだ、謙吾も来ヶ谷も…全員そろったか…それじゃ、三枝、お前ん家の事情少々話すことになるが、構わんか?」
一瞬ためらったものの、はっきりと葉留佳が首を縦に振るのを確認した恭介、やや声のトーンを落として話し始めた。

「…ふぇ…!」
「なああっ!?」
「…ふん。」
恭介は必要最小限のことだけ話したつもりだったが、うすうす感づいてはいたものの、改めてそれを聞いたメンバーの表情は一様に強張っている。特に鈴、唯湖、謙吾などは露骨に嫌悪感を表している。
「…なるほど、先日伝え聞いた“クーデター”というのは、そういう事情があったのですか。」
対照的にポーカーフェイスを崩さない美魚。その呟きを唯湖が受けて、
「そういう事情か、それは佳奈多君と葉留佳君はよくやったと言っておくべきだろうな。しかし憤懣やるかたない話だな、葉留佳君の前だから言いづらいが…。」
「あたしもくるがやの気分わかる、なんで姉妹が他の連中の都合でケンカしなくちゃならないんだ?あたしと恭介は自分の意思で敵に回ってるが。」
「…落ち着いて二人とも。でも、はるちゃんは別にこれ以上親戚の人とどうこうしようって訳じゃないと思うけど?」
爆発しそうになった唯湖と鈴を制して、小毬が葉留佳に聞くと、
「うん…成功はしたんだけど、今度はみんながお姉ちゃんのこと触らぬ神になんとやらで敬遠しちゃうし、私もはたかれたりすることはなくなったけど、やっぱ避けられてるし…立場が逆になっちゃっただけな感じなんだよね。」
と、苦笑しつつの葉留佳の返答。それを恭介が受けて、
「そこで、だ。ふとこう言うことを思いついてみた。」
と、改めてメンバーを寄せると、説明を始めた。

『なー!?』
恭介の説明が終わって、他のメンバーの最初の反応はそれだった。呆れたのかそれ以上ものも言えない様子のメンバーを代表して、理樹が、
「恭介、それマジで言ってるの?」
「失礼な、俺が今までミッションをジョークで言ったことがあるか?」
「ないな、いつでも無理無茶無策の三無主義だけどな。」
鈴の横槍を無視して、恭介はさらに続ける。
「いいか、三枝は俺たちリトルバスターズのメンバーだ。メンバーの悩みは俺たち全員の懊悩だ。そんなメンバーが居るなら手を貸すのは当然じゃないか。」
「理念は解ったよ、でもなんでそれがパーティーの予定変更につながるのさ?」
「簡単だ、そのほうが燃えるからだ。」
相変わらず馬鹿正直に一言で説明する恭介。理樹はもう匙を投げた様子で、
「解ったよ…でも、一人一芸って、なんでもいいの?」
「ああ、できれば自分の得意分野がいい。連中が俺たちのことを只者じゃないって思えるくらいな…。」
そういって、愉快そうに笑う恭介。それを頭を押さえて聞いていた鈴が、
「…まあわかった、要はその連中にあたしたちの実力を見せ付ければいいんだな?」
「珍しく察しがいいじゃないか鈴。そういうわけだ、皆異論があるなら今のうちだぞ?」
鈴にそう返して、改めて皆を見て確認を取る恭介、
「…少々甘いかとは思うが、これはこれで面白そうだから乗ってやろう。」
「このくらいでいいと思うよ〜というわけで私はなにをやろうかな…?」
「うわ、僕何にも考えて無かったよ、今から間に合うかな…?」
「きゃないあすきゅー? ストレルカは連れて行っていいですか?」
「学校等ではないから大丈夫でしょう。さて、私も何か披露しましょう。」
「よーしっ、俺は筋肉センセーションで…!」
「いつもやっている事は、かくし芸とは言わんぞ。仕方ない、乗りかかった船だ、俺も付き合おう。」
なんだかんだ行って、皆やる気であるのを確認した恭介、満足そうに笑って、
「よし、それじゃ各自考えてくること、三枝は例のヤツの準備、二木には俺から話しておく。」
そこで一旦切ると、右手を高々と上げて宣言した。
「よし、ミッション・スタート!!」


Chapter 3 Each preparation


「お邪魔しますわ、叔父様。」
「…お、おお佳奈多か、珍しいな平日にこちらに来るなんて。何か用事か?」
最近は何かの行事のときにしか門をくぐることも無くなった三枝本家を訪れた佳奈多。いまこの屋敷を管理している最年長の叔父――佳奈多と葉留佳の母のすぐ下の弟――に声を掛けると、そのような返答が返ってくる。用事でもなければこんなところ来たくもないわよ、と一瞬表情を強張らせた佳奈多だったが、彼の声にどこか腰の引けたところを感じた佳奈多、それを声にすることはなかった。
(…まあ、うちの家風にどっぷり浸かってなければ、彼も普通の“いい人”なんだけどね…。)
「ええ、単刀直入に申しますと、友人たちがクリスマスパーティーを開くのに、校外で広い場所が必要と相談されましたの。それでうちの広間を使わせていただけないかと思いまして。」
それを聞いた叔父は、
「…クリスマス?」
一瞬、不満そうに佳奈多を見やるが、逆に佳奈多に見据えられ慌てて表情を和らげて、
「ま、まあパーティーに使うくらいならいいだろう、でもあまり羽目を外さないように言ってくれよ。」
「ありがとうございます。…それでですね、彼らが言うには、使わせてもらうだけじゃ申し訳ないから、叔父様達も招待したいと。」
「…は?」
また怪訝そうな顔で佳奈多を見るが、今度は佳奈多も当惑したような表情で、
「…そんな目で見ないでくださいな。私はただ伝言を頼まれただけですので。…お仕事がお忙しいのなら仕方ありませんが。」
「い、いやいや、せっかく招待してくれるのを断るのも失礼だな、うん。なんなら二木だけでなく三枝の連中にも声を掛けてみればいい。」
(………。)
数ヶ月前までは考えられなかった譲歩、しかしその源泉が佳奈多へのご機嫌取りであることが見え見えだけに、佳奈多としても素直に感謝する気にはなれない。
「…ありがとうございます。では用件は終わりましたので、これにて失礼します。」
「あ、ああ。茶も出さずに失礼したな、うん。…あ、でもな、三枝のほかの連中はいいが、奴が来ると他の兄弟がうるさくてな…その…なんだ。」
そら来た。と佳奈多は片手で頭を押さえる。佳奈多としては親族で最も呼びたい人物を呼ぶなと言われ、声を荒げそうになるのをようやく押さえ、感情のこもらない返事を言い捨てた。
「ええ、解ってますわ“三枝の出来損ない”は招待しません。」

「…なあ、理樹。」
「何?」
同じ頃、中庭を美魚から譲ってもらって、隠し芸のアイデアを練る理樹に、もう出し物は決まっているらしく、棒と紐で何かを作っている鈴が声を掛ける。
「…はるかときょーすけ、いったい何を狙ってるんだ?だいたいの事情はのみこめたが、いきなりかなたの実家でパーティーなんて、発想がおとといの方向にぶっとんでるだろ。」
「…明後日じゃなくて一昨日なんだ…。んーとね、実は最初は葉留佳さんから僕に相談が来たんだよ。」
「なにぃ?」
「葉留佳さんと佳奈多さん家、いろいろあるのはさっき知っただろ?二人が思い切った行動したお陰で、二人にとってはだいぶ改善されたみたいだけど、今の状態は単に上下関係が一部入れ替わってるだけにすぎないから、これで良しとは言えない。だけど、色々しがらみがあって、下手に歩み寄るとまた元に戻ってしまうかもしれない…だから、きっかけが欲しいんだよ、お互いに…で、それなら僕より恭介のほうが適任だと思ったから、恭介に回したって訳なんだよ。」
「…ふむ。なるほど、それなら合点が行った。しかしあの二人、最近仲がいいな、そのうちあたしははるかのこと姉貴と呼ばなきゃならないのか?」
「ぷっ!」
突然飛躍した理論に、思わず噴出してしまった理樹。訝った鈴に、
「そりゃ仲いいのは確かだけどさ。どっちかというとリトルバスターズの仲間として、あと悪巧みコンビとして仲がいいんだと思うよ。将来結婚するかどうかなんてのはまだまだ話題にも上らないんじゃないかな。」
「そうか、ならまだ理樹と付き合う可能性もあるって訳だ。」
「…だから、なんで事あるごとにその話題にくっつけるのさ…。」
「お前がいー加減誰と付き合うか決めないからだ。お前が決められないならあたしが決めるぞ。」
「…ああもう!何でか知らないけどそんな怖い顔で言わないでよ、必ず決めるからもうちょっと待っててよ!」
「…わかった、じゃあしばらくまつ。」
そう行って、また作業に没頭する鈴を見つつ、理樹はため息をつく。
(…ったく、なんで鈴ってば最近やたらこの話題につなげたがるんだ?しかも自分で振った話題で自分が不機嫌なるし…。)
そう思いつつも、思い直して再び出し物を考える理樹。鈴の真意を理解するには二人とも敏感ではなかった。


Chapter 4 Ten expedition


「よし皆、行くよ!」
『おー!』
12月24日。校門に集合したメンバーを前に、理樹が出発の音頭を取る。各自、出し物の小道具が入ったバッグを持ち、恭介がまた借りてきたワゴン車に乗り込む。
「お?なんだ荷台に詰め込まれてるのは。」
「今日食べる飲み物や料理だ。何しろ今日は俺たちだけじゃねーからな、量もハンパねえ。」
と、疑問を呈した真人に答えた恭介の脇で頷くのは小毬、唯湖、クドリャフカ、美魚、葉留佳、そして鈴。
「頑張ったよ〜、何しろ人数倍になっちゃったからねー。」
「うむ。おねーさんとしても久々に作り甲斐があった。」
「あたしも…一応がんばった。」
「一応はつけなくて構いませんよ、鈴さん。…ですよね、三枝さん?」
「…え?う、うんうん、りんちゃんもいっぱしのキッチンマスターですヨ!」
(…葉留佳さん?仕方ないか…やっぱり構えちゃうよね。)
今の反応を見るに、一瞬だけだが、心ここにあらずといった感じだった葉留佳を見て、理樹がそう思うが、それを知ってか知らずか、
「ほらほら、早く乗り込めよ。クリスマスで道路混んでるから、早めに出るぞ。」
恭介が一同を急かして、車内へと押し込んで行く。全員乗ったのを確認すると、最後に運転席に乗り込み、
「それじゃ発進するぞ、でっぱーつ!」
言うと同時に、発車させる。助手席に乗った理樹は、
「……。」
そっと後部座席の葉留佳の様子を伺うが、すでに何事も無いように隣と談笑している様子を見て、
(…大丈夫…だよね?)
誰に対してか言い聞かせるようにそう呟いた。

「とうつきー、ここが会場だぜ。」
郊外の高台にある屋敷の前で停車する恭介。
「…でかっ!こわっ、でかっ!」
「わふーっ、お祖父様のお屋敷より広いですー!」
「なるほど、確かに往時の名門だけはあるな…。」
「おおう、謙吾ン家の道場より広いんじゃねーか?ここまでありゃ筋トレなんか自由自在だぜ!」
「住宅街にある俺の家と比べるな…しかしたしかに凄いな、うちの門弟全員連れてきて立会いが出来そうだ。」
思い思いに感想を述べる一行の中、葉留佳は正門の前でじっと立ち尽くしている。それを見た鈴が、
「はるか?」
「…はっ!ゴメンゴメン、やっぱ入りづらいもんですネ。…うん、ここは小毬ちゃん直伝のコマリマジックで行きましょう。」
「?」
意味が解らない単語に、首をかしげる鈴の脇で、葉留佳は下腹に力を入れて、
「………よおおおっし!」
気合とともに一歩前に踏み出し、正門を潜る。
「…葉留佳さん!」
「よーっし、まず第一段階は突破だな、三枝。」
そう言葉を掛けた理樹と恭介、そして残りのメンバーも葉留佳に続くようにぞろぞろと敷地内へと入っていく。
「はるちゃんがんばったね〜。教えておいて良かったよ、前向きマジック。」
「そうだな、葉留佳君が自分で潜れなかったら本番の成功もおぼつかなかったからな。」
「え、えへへ、このくらいでそんなに褒めないでくださいよ、これからが本番なんですから。」
玄関へ向かう道を、そのようなやり取りをしつつ進む一同。いつの間にか玄関前に到着していた。
「よし、それじゃ行くぞ、ミッションスタート…!」
恭介が静かにそう言うと、皆頷く、それを確認した恭介は、屋敷の中に向かって声を張り上げた。
「ごめんください、二木佳奈多に招待された者ですー!」

(一体何がどうなっているんだ…?)
佳奈多と葉留佳の叔父―――前述の葉留佳の父のすぐ下の弟―――は、ノンアルコールビールを口に運びながら考えていた。
佳奈多が学友をこちらの屋敷につれてくること自体考えられないことだったのに、一気に9人――葉留佳は姿を見せていない――、しかも動機が“パーティをするのに場所が無い”という、およそ友人宅を訪問する理由としてはかなり特殊なものだと、彼にも理解できていた。
(…他の奴らも戸惑っているみたいだな…)
二木家から5人、三枝家から4人。彼を含めて10名の三枝・二木に縁のものが、彼同様に訪問者達の供応を受けていたが、予想外の美味を楽しみながらも、どこか戸惑ったような、不安げな表情を浮かべている。
「あれ、どうしました。なんか難しい顔してますねー?もう一杯どうですか?」
「い、いやなんでもない…そうだな、もう一杯貰おうか。」
「はーい♪」
あれこれ考える間も与えないように、訪問者の一人で、ふわりとした印象の少女――小毬――がノンアルコールビールをグラスに満たす。それに彼が口をつけたそのとき、よく通る男性の声が響き渡った。
「Ladies & Gentleman!盛り上がってるところ恐縮だが、今から我がリトルバスターズがそれぞれ今日のために特訓してきたパフォーマンスを疲労するぜ、刮目せよ!」


Chapter 5 Divine judgement


「おおおおっ!?」
誰が上げたのか、驚愕の歓声が広間に響き渡る。広間の奥に特設されたステージ上で、スポットライトに照らされた鈴と12匹の猫が、見事なパフォーマンスを見せていた。
「よしっ、次はヒョードル、お前!」
そう言って、鈴が鞭――キャットナインテールとも呼ばれる、先が9つに分かれた派手な音を立てる代物――を鳴らすと、心得たとばかりに鈴の足元から背中へを一気に駆け上がったヒョードルが捻りを加えながら飛び降り、着地点に居たテヅカとアインシュタインを踏み台に再びジャンプ、反転して鈴の肩へ飛び乗る。
「ほう…!」
件の彼も、感嘆のため息を漏らす。素人目でも、うまく猫を操っているどころの話ではない、鞭はあくまで演出用、おそらく猫自身が使い手の意図を理解するほど通じ合ってることは用意に見て取れた。
(ただの高校生だと思っていたが…ものすごいなこの連中は…。)
そう思いつつも、彼もその周りの面々も、早くもリトルバスターズメンバーに呑まれはじめていることに気付いていなかった。

「ひゅー、トップバッターだから心配したが…鈴もやるなあ。」
舞台袖代わりの廊下から、舞台の様子を伺う恭介が感心してそう呟く。
「そうだね〜、早くも皆さんのこと雰囲気に巻き込んでるし…でもあの鞭って必要だったの?」
「いや、あくまで演出なんだってさ。本当は鞭とか遣いたくないんだけど、それだとそれらしくないって言ってた。」
「そうだな…、でもあの鞭も鈴君の手作りか…どこで習ったから知らないがなかなかいい音を立ててるじゃないか。」
他の面々も、トップバッターである鈴の健闘を感嘆の体で囁きあう。そんな中、
「…でも…大丈夫ですカお姉ちゃん。」
「…へ、平気よ……ッ!…。」
鈴が鞭を鳴らすたびに、両腕を思い切り掴んで身を竦ませる佳奈多を気遣って、葉留佳が声をかける。
「…すみません二木さん。この後の作戦でもあの鞭は必要ですので、もう少し堪えてください…。」
「気にしないで頂戴…このくらいなんてことないわ、それに…ほら、もう終わった。」
そう佳奈多が舞台を示すと、満場の拍手の中一礼して戻ってくる鈴。
「…終わった、つかれた…それと、かなた大丈夫か?」
「周りの皆にも言ったけど、平気よ。それと、今の出し物良かったわよ、猫さんたちも。」
それを聞いて鈴が頬を紅潮させてそっぽを向き、猫達は対照的にはしゃいでいる。
「…よしお疲れ。さて、次は謙吾だな、行って来い!」
「承知!」
恭介の指示で、二番手の謙吾はそう答えると勢いよく襖を開けて中に入っていった。

(…これは…単なる学生の子供だましと侮っていたが…!)
上座に座っている彼のみならず、観客はすでにリトルバスターズの術中に嵌ったようになっていた。鈴の猫使いに続き、謙吾の音速剣舞、唯湖のひとりイリュージョン、真人のお手バーベル等々、完全に人間離れしたパフォーマンスに魅了された一同、小毬のお菓子爆弾(本人はクラスターキャンディボムと呼んでいたが)などは、年甲斐もなく散乱したお菓子に飛びついていたものも何人も居た。そんな中、彼がふと思い直す。
(…恐ろしい連中だな…只者じゃないことは見て解るが…それ以上に他の連中、すでに夢中なっているとは…。しかし、リトルバスターズとか言ったか…何故こんなことを…目的は?)
そんなことを考えているうち、恭介と理樹のバトルパフォーマンスが終了する。そして理樹がそのままマイクを持ち、
「ご照覧ありがとうございます、いよいよ最後の出し物になります。リトルバスターズによるクリスマスパーティーのトリを飾るのは…三枝葉留佳!そしてゲストメンバーの、二木佳奈多!」
「…な…!?」
そのコールに、思わず席から腰を浮かしかける。しかし回りは完全に雰囲気に酔っているのか、その名前にも目立った反応を見せない。
(…なぜ…聞き間違いか…!?)
そう考えているうち、襖が開き、廊下から入ってきた揃いのタキシードを着用した葉留佳と佳奈多の姿を見て、一同もようやく事態に気付いた、

「…な、なんで奴がここにいるんだ!」
「そうよ!三枝の穀潰しなんて来て良いはずがないでしょ!」
「佳奈多も佳奈多だ!呼ばないって約束しておいて何を考えて…!」
雰囲気が一変した会場。怒声とともに何人かが立ち上がろうとしたが、
「ちょーっと、待った!」
恭介の手のひらと、大声に押さえつけられる。
「いくらゲストとはいえ、無粋な真似は困るな。それに二木も、約束を破ってなんかいねーよ、ここにいるのは“リトルバスターズに欠かせぬメンバーである三枝葉留佳”で“三枝家の出来損ない”なんてどこ向いても居ないぜ。」
「へ、屁理屈よ…!気分を害しました、失礼します!」
婦人の一人がそう言って憤然と立ち上がり、出口へ向かおうとするが、
「!」
いつの間に居たのか、鈴と美魚が入り口を固めていることに気付く。
「あ、あなた達…?」
「…急用でもあるのか?」
鈴がぶっきらぼうに声を掛けてくる。それに対し何か言おうとしたその婦人だったが、鞭を握ったままの鈴の眼光に射すくめられ、そのまま硬直する。
「…っ!」
一方、彼女に追随し、退出しようとした面々も、他の出入り口もことごとくリトルバスターズが固めていることに気付く。
「お前達―――、一体何を―――!?」
誰かがそう怒鳴ろうとするが、先ほどのパフォーマンスですっかり圧倒されてしまっているために、語尾までその威勢が続かない。出るに出られずその場で立ちすくむ一行を、
「はいはい、これでラストだからもうちょっと見てってくれよ、最後は観客も参加するんだからよ。」
「そういうことだ、恐縮だが、もう少し時間をいただけないか?せっかく準備してきたんだ、最後までご覧じろ。」
丁寧な口調ながら、真人と謙吾が有無を言わさずもとの席に座らせていく。そして全員が座りなおしたとき、葉留佳が台車に何かを載せてくる。載っているもの――蛇口つきの酒樽に、なにやら茶色に濁った液体の入っている水差しにグラスがいくつか―――を見たとき、不吉な予感を一同が感じる。そして、次の瞬間、それは確信となり一同に襲い掛かってきた。
「お待たせしましたっ!ではトリはわたしたちの、『泥水をお酒に変える手品』をお送りしますっ!」

その瞬間、客席が凍りついた。そしてこんな大掛かりなイベントに自分たちを巻き込んだその理由に気付いた。一連のクーデターで両家を歪めていた中心となる面子がことごとく失脚した、それで済んだ筈、否、済んだ筈だと思い込もうとしていた一同は、今までの扱いをじっと耐え続けていた二人が、この場で自分たちをも粛清する積もりだったとの結論に至った。そして怯えきった一同に見せ付けるように、舞台上の二人はパフォーマンスを続行していた。
「はい、ここにあるのはどこにでもある泥水です。これをこの樽の中に入れて呪文を唱えます。」
「するとあら不思議、泥水がお酒に早変わりしてしまうんですヨ。わたしたちは未成年ですから、客席の皆さんに飲んでもらいますけどネ。」
「そ、そ、そ、そんなこと…出来るわけが…!」
「そ、そうよ、それってまるで…!」
勇気を振り絞って抗議の声を上げようとする者もいたが、
「―――!」
パン!!
『ひぃっ!』
鈴が鳴らした鞭の音に、黙らされてしまう。
「…演出でしかたなくつかったが、あいつらを怯えさせそうでほんとうはつかいたくなかった。自分で殴ってみたから解るが、これは音だけじゃなく本当に痛いんだ。だから…、」
「この痛みを知っている二木さんの芸を無視するのなら、同じ痛みを与えなくてはならない、鈴さんはそう仰りたいようです。」
鈴も美魚も決して激しい調子で言われたわけではないが、発言の内容は一同から抵抗の意思を奪うのには十分だった。一部立ち上がりかけた者も、へなへなと席に崩れ落ちる。そんな中、いつの間にかグラスに酒樽の中身が注がれ、茶色に濁った液体に満たされたそれが一堂の目の前に差し出される。
「…こ、これを飲めというのか…?」
どう見ても泥水にしか見えないそれを目の前に、もう抵抗する気力もない一同。
「…なんで…こんな…。」
「うっ…ううっ…。」
ぐったりとそう呟いたり、嗚咽を漏らし始め許しを請うように佳奈多を見つめるものも出てきたが、佳奈多は無慈悲とも取れる口調で言い放った。
「皆様、…本来はここまで言いたくはなかったのですが…。三枝家次期当主、二木佳奈多が命令します…お飲みなさい。」
その言葉に、がっくりと肩を落とす一同。最後に見落としていた逃げ道でも探すように、ちらちらと視線を泳がせるが、リトルバスターズにがっちりと周囲を固められていることを再確認したに過ぎない、皆が震える手でしばらくグラスを持ったまま硬直していたが、しばらく経って観念したかのように、上座に座っている最年長の彼がゆっくりとグラスを唇に付け、グラスを傾けた。
「…………!?」
恐る恐る茶色の液体を唇の間から流し込むと、予想したような味ではなかった、何か混ぜ物をしたのか奇妙な味が付いてはいたが、基本の味自体は悪くはない、というよりこれは、
「…ワイン?」
先ほどの恐怖はどこへやら、当惑した表情を浮かべつつその液体を飲み干し、改めて佳奈多のほうを向くと、
「…お酒になりましたか?」
先ほどの鉄仮面がうそのような柔和な表情を浮かべた佳奈多が、優しい声でそう声をかけた。


Chapter 6 Twins forgave


「かな…た?」
呆然として呟く叔父に、佳奈多がもう一度告げる。
「お酒になりましたか、叔父様?」
「佳奈多…これって…?」
「…見ての通りですわ、お酒になったのなら、それでよろしいではありませんか。」
さらりと告げるかなたに、他の親戚の面々も唖然として集まってくる。
「…佳奈多…私達のこと…許してくれると…そう言うんですか…?」
「いえ。」
その台詞に表情を歪めて返した佳奈多、叔母の一人が一瞬怯えるが、その瞬間には表情を緩め、
「私一人だったら許しませんでしたが。葉留佳と一緒なら許します、ね、葉留佳?」
と、自分の脇にいた妹に振ると、葉留佳もくすりと笑い、
「まー、最初はホントに泥水飲ませようかとも思ったけど、今のビビリ具合でなんというか、大体帳消しにしちゃえますよ、叔母さん?」
「葉留佳…。」
その婦人、立ち尽くしてそう呟いたかと思うと、次の瞬間葉留佳を抱きしめる。
「お、叔母さん!?」
「…ごめん…ごめんなさい…葉留佳には、いま私達が感じたよりずっと怖くて痛い思いさせてしまったのに…、」
嗚咽を漏らして自分を抱きしめる父の妹に、唖然としてされるがままになっていた葉留佳、思い直すと叔母を抱きしめ返し、
「…もう、さっきあんなこと言っといて調子良すぎですヨ。でももういいや、別にはるちんだって、今までの仕返しじゃーってしたいわけじゃないし。」
「そうね、私としても、親戚同士でアタリだのハズレだの言い合うのはもう充分だと思うわ。…他の皆もそう思うでしょ?」
そう言って周囲を見渡すと、他の親族も済まなさそうな顔ではあるが、今までのこともあって後ろめたいのか、お互い顔を見合わせてばかりいる。
「…やれやれ、それじゃ、こちらには謝って欲しいんだけどね…、入ってきて頂戴。」
佳奈多の声と同時に、戸が開けられて人間が3人入ってくる。その人物を見た一堂は思わず絶句した。
「…兄さんに姉さん…それに、晶!?」
入ってきたのは、彼らの長兄でもあり、葉留佳と佳奈多の3人の両親だった。
「…なんだなんだ、子供に脅かされて情けない顔になりやがって。」
「ふふ、久しぶりですけどお元気そうで何よりですこと。」
「………。」
葉留佳や佳奈多もほとんどお目にかかったことのない盛装で登場した三人、そのうち照れているのかそっぽを向いている三枝晶以外の二人は、今までのことなどおくびにも出さず、ただ弟との再会を懐かしむような口調で挨拶をする。
「…兄さん…私達は…その…。」
「何も言うなって。誰が悪いって訳じゃない。私達が我が家の呪縛から抜けられなかっただけだ…でも、あの二人がそれに見事に風穴を開けてくれたじゃないか。…もう私達が何も言うことはない。…晶もそう思うだろ?」
「…あ、ああ。」
まだ視線も合わせないが、声は穏やかになっている晶。それを見て後ろでくすくす笑う影が5つ。
「…うふふ、こういう展開には慣れてないみたいだね〜、晶さんも。」
「そうだな…しかし、ホームレス生活が長かったのか、あんなに入浴を嫌がるのには参ったぞ、おねーさんと真人少年、謙吾少年の三人がかりでようやく風呂に放り込んだからな。」
「零落した美形と、それを強引に着飾らせているうちに…アリですね。」
「でもまあ、結果オーライだからいいじゃねーか。…さて、俺達はそろそろ撤収するか。」
「…え、帰るの?」
恭介が突然帰ると言い出したことに驚いた理樹が訊き返すと、恭介は涼しい顔で、
「元々仲の良い本家と分家だったんだから、これ以上は放っておいてもうまくいくだろ。これ以上部外者が居るのは野暮ってもんさ。」


Epirogue The party after party


「〜♪」
「ねえ、恭介。」
調子よくワゴン車を駆る恭介に、理樹が話しかける。
「何だ?」
「結構やっつけのミッションだったけど、あれってわざと?」
「…まー、結構手抜きした嫌いはあるが…なんでだ?」
「いや、恭介のことだから、カチカチに緻密なミッションだったら、彼らが強制的に仲を修復させられたから、って反発すると思ったからとか…?」
「よせやい、俺はそこまで考えてねーよ。あの泥水モドキのワイン作るので精一杯だったんだよ。マジで。」
その返答に、小毬が後ろから割り込んでくる。
「そうだねー、基本的な味はそのままで、外見だけ変えるのって結構苦労したねー、あ、でもあれウコンも入ってるから悪酔いしないでいいかも〜。」
そういっていると、唯湖や美魚も割り込んでくる。
「うむ、殴りこんで全員に制裁というならおねーさんで十分だが、こう言う展開はコマリマックスはじめ皆の協力が必要だったし。」
「はいっ、元々家族というのは仲のいいのが基本ですっ、だからお仕置きしちゃいけませんっ!」
「そうだな。でも考えてみれば俺達はまともに物を食っていないのではないか?」
「あ!そういや出し物に気を取られてて忘れてたぜ、腹減ったー!」
「うっさい、そこで叫ぶな!」
最後は鈴の締めくくりで会話が一段落する。それを待っていたように美魚が、
「心配ご無用です、食堂のおばさまが二次会の用意してくれるように手配済みです。」
「ほ、ホントか西園!?」
反射的に反応した真人が美魚に詰め寄ると、前から恭介が、
「その辺は抜かりねえって、連中の二次会は酒が入るだろうからな、俺達は俺達でやろうぜ。」
その言葉と同時に、
「そーそー、はるちんたちはお酒飲めませんからねー。」
「飲めたとしても、止めるわよ。」
バックシートから現れた二人に、車内にいた全員が驚愕する。
「ふ、二木に三枝!お前達親戚と二次会になったんじゃないのかよ!?」
思わず路肩を踏み外しそうになった恭介が怒鳴るように訪ねるが、てっきり置いてきたとおもった葉留佳と佳奈多はなにごともないように、
「いやー、それも考えたんですけどネ。やっぱ今となってはリトルバスターズに混じったほうが面白そうだからねー。」
「と、葉留佳がよからぬことを考えてるなら、私も付いていかなくちゃならないでしょ?」
かくいう佳奈多だって、葉留佳と同じことを考えているに違いない。それを察してか恭介は苦笑すると。
「よーし、それじゃクリスマスパーティー仕切り直しとしゃれ込むか、…せーの!」
『ミッション、スタート!』
皆の揃った掛け声が車内に響く。そしてワゴン車は彼らの学校へと初冬の街中を走り抜けていった。

――確かに僕は犯罪を一つ見過ごしたかもしれない、ただある男の魂を救ってやったともいえるだろうね、あれだけ脅かしてやればもう二度と間違いを起こそうなんて思わないだろう、それに今日はクリスマス、人を赦す日だよ―――コナン・ドイル“青い紅玉”より


あとがき
とりあえず、メリークリスマスw
最初に言っておきますが…ごめんなさい。実はこれ、“泥ヲ以テ酒ト成ス”という葉留佳が作中で受けた虐待を逆手にとって、一旦追い詰めた親族を葉留佳、佳奈多の二人が赦すイベントが書きたいなということが主眼なので、周りのシーンはは結構乱暴だったりしますw。
元々、あの一族の行状にはどちらかというと失笑を禁じえなかった感じで、長兄一家にした仕打ちは洒落にならないものの、おそらく一部の中心となる者が抜けてしまえば葉留佳、佳奈多には敵わないと思ってます、でもそれを叩きつぶすよりも、『ひぐらしのなく頃に』であったフレーズ「罪を受け入れよう、そして皆で許そう」という感じに持って行きたく、こういう展開にしてみました。
それでは、できるだけ無いようにはしたいですが、めでたい席に免じて誤字脱字の類はご容赦くださいませ。

















お囃子・感想などいただけましたら。

おなまえ(省略可)



お囃子!(→盛大)

ぱち ぱちぱち ぱちぱちぱち

よろしければ何か一言!(省略可)





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