「それでね、理樹君。ここなんだけどー」
「うん? あ、確かクリスマス仕様になってるんだっけ」
「そうなんだよ〜! だからね、ここは絶対行きたいと思うんだけど――」

 夜。小毬さんと一緒に夕食を取りながら、本を見つつ明日の予定を立てる。
 二学期も昨日で終わり、今日から少し早い冬休み。そして明日は12月24日。つまりイヴ。
 せっかくイヴが休みなんだからというわけで、僕たちは少し遠出の計画を立てていた。

「二人で秘密会議か。ずるいじゃないか、私も混ぜろ」
「あ、来ヶ谷さん」
「あ、ゆいちゃんー。こんばんわ〜」

 横から声がして振り返ると、サンドウィッチをもった来ヶ谷さん。
 小毬さんの肩越しに本を覗き込むと「なるほど」といった顔にかわる。

「なるほど、明日はクリスマスイヴか。楽しくクリスマスデートかね」
「うんっ」
「えっと、まあ……そんなところ」

 満面の笑みで頷く小毬さんに、僕はちょっと照れくさくてそんな返事になる。
 来ヶ谷さんは来ヶ谷さんで「なるほどなるほど」と実に楽しそうに笑う。

「つまり明日はしっぽりむふふと行くわけだ。……ふむ、私も混ざってかまわないか?」
「しっぽ……ってふぇえええええええ!?」
「しないよっ」
「はっはっはっ、冗談だ。馬に蹴られるようなまねはせんよ。まあゆっくりと楽しんでくるといい」

 軽くからかわれたあと、来ヶ谷さんはそのままどこかに行った。サンドウィッチだったから、もしかしたら自室でたべるのかもしれない。

「もうっ! ゆいちゃんたら……」
「あはは……」

 去っていく来ヶ谷さんの方に振り返ってぷーっと頬を膨らませる小毬さん。
 僕といえば、苦笑いしかできなかった。下手に何か言ってさらに突っ込まれて弄られるのが目に見えてるし。

「でも、門限とかどうしよう」
「うーん、そうですねぇ……できれば、最後のパレードまでゆっくり見てきたい、よね?」
「うん。でもそうするとどうやっても寮の門限を越えちゃうんだよなぁ」

 一応冬休みに入って監視の目は緩くなってるけど、それでもしっかりと門限はある。
 まともに玄関から入ったら一発で見つかりそうだ。特に日にち的に抜け出す人も多そうだし。

「お部屋にまで行ければ大丈夫なんだけどねぇ」
「僕は一階に部屋があるからいいけど、小毬さんは三階だったっけ?」
「そうなんだよ〜。夜遅くになれば大丈夫かなぁ……」
「うーん……ちょっと不安だけど」

 あれこれ考えるけど、いい案は中々思い浮かばない。
 抜け出す人が絶対多い以上、確実に見つかったら大目玉だろう。何かいい案が思い浮かばない場合の結末は怖いものがある。
 けど、そういうのを考えるのもまた楽しかった。
 結局はいい考えは浮かばなかったけど、最終手段だけはしっかりと確保してから僕たちはお互いの部屋に戻った。
 明日は早朝の電車で行かなきゃいけないから、その日は部屋に戻ったらすぐに眠りについた。










「えっと、忘れ物は……」

 サイフに携帯、西園さんから借りたカメラ。それからあらかじめ取っておいたチケットの引換券。
 そんなにあるわけじゃないけど、念のために確認しておく。特にチケットを忘れたなんて言ったらシャレにならない。
 うん、ちゃんとサイフの中に入ってる。お金もいつもより多めにいれたから、たぶん大丈夫。

「んあ、理樹……? こんな朝早くから何やってんだ?」
「あ、ごめん真人。起こしちゃった?」
「いや、別にいいけどよ。どうせこれからランニングするしな、っよっと!」

 寝起きですぐに二段ベッドの上から飛び降りてくる。
 ちらっと動いた視線は壁に掛けてある時計を見る。釣られるように僕もみて、ちょっと慌てる。

「うわ!? もうこんな時間!?」
「なんだ? こんな時間からどっかいくのか?」
「うんっ。今日はちょっと小毬さんと遊園地に行くから」

 ああ、と思いだしたように頷いてる真人をわき目に、急いでコートをはおる。
 サイフと携帯をポケットにねじ込んで、マフラーを首に巻く。

「それじゃあ真人、僕もう行くから。戸締りとかお願いね!」
「おうっ。ま、精々楽しんでこい。ベランダの鍵は夜にでも開けておいてやるからよ」
「うん、ありがとう真人。それじゃあ行ってきます」

 ストレッチをするために半裸になった真人に戸締りように部屋の鍵を渡して、待ち合わせ場所の校門に向かって行った。



「あ、りきくーん」
「お、おはよう小毬さんっ。ごめん……ちょっと遅れて」
「ううん、そんなことないよ〜」

 待ち合わせ場所の校門に向かったら、もう小毬さんが待っていた。こっちに気づいて、ぶんぶんと手を振ってくれる。
 うわぁ、せっかくのデートなのに最初からちょっとつまづいちゃった……。
 少し急いで走ってきた息は白く、よく晴れた冬の空気に溶けていく。日は差してるけど、やっぱりそれくらいには寒い。

「でも、寒かったでしょ。ホント、ごめん……」
「うーん、ちょっと寒かったかな? でも、このコートは暖かいからあまり気にならないのです」
「あ、この間買いに行ったコート」
「うんっ。ふわっふわでぬくぬくなのです」

 白いふわふわの袖を軽くつかんで、その場でくるりと一回転。襟元についたぼんぼんが少し遅れて揺れる。
 同じように、ひらひらのレースが斜めにたくさんついてるスカートもふわっと風にたなびいて元の位置にもどる。
 そしてその場で「えへへ」と少し照れくさそうにほほ笑む。
 うん、なんていうか

「似合ってるよ、小毬さん」
「えへへ、よかったぁ。昨日の夜一生懸命悩んだのです」

 同じように白で統一したポシェットを揺らしながら、今度はうれしそうにほほ笑む。
 その顔の横に光が一瞬反射して、視線がそっちにずれる。

「イヤリング?」
「あ、うんー。えっと、ちょっとつけて見たんだけど、どうかな」

 近くによって、よく見させてもらう。左の耳にだけ、ほんの小さな金色に光る星が付いていた。
 ともすれば見逃しそうなそれは短い鎖につながって、きらきらと揺れる。

「あ、あんまりこういうのつけたことないんだけど……やっぱり変、かな?」
「う、ううん! そんなことないよ。そ、その……すごい、かわいいと思う」

 ふいに少し不安そうにそうきく小毬さんに、慌ててそういう。
 その様子がすごく愛らしくて、最後の方は恥ずかしくて少し小声になっちゃったけど。
 普段そういうのを身につけてるのを見たことがなかったから、新鮮だった。

「ほんと!? えへへっ」
「わっ、と!」

 とたんに左腕を取られて、一瞬たたらを踏む。
 赤い顔で、でも幸せそうに笑う小毬さんに驚いて、そして同じように僕の顔も熱を持つ。
 なんとなく気恥ずかしくて、右手で頬をぽりぽりとかいて空を見上げる。

「……えっと、それじゃ行こっか」
「うんっ」









「ふわー……いっぱいいるねぇ」
「そうだね。やっぱりイヴだから、かな……」

 電車を何度か乗り継いで、最後に乗ったモノレールから降りてまずおもった感想はそれだった。
 ここの遊園地は初めて来たけど、なんていうか予想以上に人がたくさんいた。
 まだ開園してもいないにもかかわらず、右にも人、左にも人。とにかく人の数がすごい。

「お休みも重なったし、やっぱりみんな来るんだね」
「うん……なんか、はぐれちゃいそ――ふや!?」
「っと! 大丈夫? 小毬さん」
「うわっ、と! わりぃ。大丈夫だったか?」
「う、うんー……なんとか」

 突然前のめりに倒れそうになった小毬さんを慌てて掴む。
 人混みでぶつかったらしい。ぶつかってきた男の人もなんとか転ばないで済んだらしい。

「あーもうほらっ。だから走っちゃダメだって言ったのに……」
「いや、ほんとスマン。怪我とかしなかったか?」
「あ、はい。このとーり大丈夫です」

 にこっと笑って、小毬さんが大丈夫だと主張して相手もほっと息をついた。
 一緒らしい女の人も安堵の息を吐く。

「ごめんね、うちのバカが不用意に走ったりするから」
「む、バカとはなんだ」
「だって本当のことでしょ? はぁ、やっぱりちゃんと見てる人がいないとダメだよ」
「それはこっちのセリフだ、このだよもん星人。朝チケット見当たらなくて大慌てしてたくせに」
「あれはどこかのバカバカ星人さんが『チケットは任せておけ』って言ったのにどこにやったかわからなくなったからだよっ」

 ええ!? いきなり喧嘩!?
 流れるような会話の流れで自然に口喧嘩を始めた人たちに思わず心の中で突っ込みを入れる。
 けど人があっけに取られてる間にもう決着はついたらしく、女の人が男の人の頭を押して下げさせる。

「ほんと、ごめんね。怪我させなくてよかったよ」
「ばか、放せだよもん星人! 謝ることくらい自分で出来るわっ」
「あ、いえ。ぼーっとしてた私も悪いですし」
「そういってもらえると助かるよ。ほら、もう行くよ浩平。もう走らないようにちゃんと手繋いでいくんだよー」
「だから、もう言われなくても走らんわっ! 子供じゃないんだから引っ張ってくな、おいこらっ! 聞けだよもんせ――」

 男の人の抗議を無視して、女の人はずるずると引っ張って中へと入っていく。
 嵐のように去って行った二人に、ボー然と取り残される僕たち。

「なんていうか、すごい人たちだったね……」
「でもすごい仲良かったね〜」
「え、そう……?」
「うん。すごい仲良しさんだったよ?」
「う、うーん……」

 そう言われれば、確かにそう言えなくもない気がする。
 あれだけ言いたいこと言い合ってたのに全然ギスギスした空気を出してなかったから、もしかしたら長い付き合いなのかもしれない。

「なんか、あこがれちゃうね」
「うん。僕たちもああいう風にずっと仲良くいれるといいね」

 まあ、あそこまで独特な二人じゃなくてもいいけど……。
 でも、あんな風に何でも言い合える仲っていうのはちょっと憧れるかもしれない。それだけ仲が良いって証拠なんだし。

「僕たちもいこっか」
「うん」

 手をつないで、僕たちも人の流れに乗って入園口を目指していく。

「最初何に乗るか悩むね〜」
「うーん、とりあえずお城にでもいこっか。ほら、小毬さん楽しみにしてた」
「あ、うんっ!」







「ふわー、かわいかったねー」
「うん、あのがいこつとか結構おちゃめだったよね」

 アトラクションから出て、さっき乗ってた感想を言う。
 次のアトラクションは予約を取っておいたので少しのんびり目にあるく。

「初めてきたけど、やっぱり楽しいよ〜」
「あれ、小毬さんも初めてなの?」
「うん、小さい頃に行きたいーってすごいねだったんだけどねえ。連れてってもらえなかったの」
「あ、なんとなく想像できた」

 しょんぼり言う小毬さんの隣で、その小さい頃を頭の中に思い描いてみる。
 かわいらしい服を着た小さい小毬さんが、両親の腕を引っ張って必死にねだってる絵が思い浮かぶ。
 あんまりに出来すぎた絵だったので、思わずふいてしまう。

「あー! なんかひどい想像したでしょー」
「いや、ごめん。ちょっと想像したらハマっちゃって」
「もう。私、そんなに変なねだりかたしてないよ〜」
「いや、変とかじゃなくて。小さい小毬さんが、両親の腕を引っ張って必死にお願いしてる絵が浮かんで、なんかよくある構図が浮かんだから」

 床に倒れこんで手足をじたばたさせるのと並んで、基本的なねだり方だと思う。

「あう……どうしてわかったの……」
「あ、やっぱり合ってたんだ」
「うんー。でもね、私引っ越し多かったからあんまり遠出する機会ってなくて。遊園地は行ったことあるんだけどここは初めてなんだよ」
「じゃあ、今日は楽しい?」
「うんっ。すっごい楽しいよ〜」

 にこにこ笑顔でそういう小毬さん。
 それだけでも今日来てよかったと思える。

「あ」
「ん、何?」
「ほら、あそこ!」

 ぐいぐいと腕を引っ張られて指さされた方をみると、白くて大きいネコが一匹。
 たくさんの人に囲まれて握手したり一緒に写真を撮ったりしている。

「あ、確かここの遊園地の」
「うんー、びっくすりーの一人だよ〜。ふわぁ、すごい運がいいよ〜」
「確か一人しかいないんだっけ?」
「うん、どこかの遊園地にいるときは、他の場所には絶対いないんだよ〜」

 きらきらした目でその大人気のネコをじーっとみてる小毬さん。

「行って一緒に写真撮る? 一応カメラも持ってきたし」
「あ、うん!」





「えへへ〜りんちゃんに自慢できちゃいますね」
「そういえば、りんもそのキャラクター好きだったっけ」
「そうですよ〜。お部屋にも一人、ぬいぐるみが飾られてたりします」
「へぇー」

 それは初耳だった。
 にこにこした笑顔で、小毬さんはそのキャラクターと一緒にとったデジカメの画像をみている。
 僕と小毬さんがふたり、そのキャラクターに肩を抱かれて笑顔で写っている。

「帰ったらさっそく現像に出さないとだね〜」
「どうせだったら携帯のカメラでも取ってもらえばよかったね」
「はっ! そうすれば待ち受けにできたのかあ……」

 喜びから一転、盛大に落ち込む小毬さん。
 未だに大人気のネコは、今は姉妹らしい二人と……あれは、イヌ? と一緒に写真を取っている。

「……イヌって中に入ってもだいじょうぶなのかな?」
「ふぇ?」
「あ、ううんなんでもない。そうだ、来ヶ谷さんに頼めば携帯用に加工してくれるかもよ」
「そういえばゆいちゃんそういうの得意だよねぇ。前も理樹君の制服姿を待ち受けに……あ!」
「僕の……? 何か取ったっけ……」

 あんまり覚えがないけど、何か取ったっけと思いだそうとしてみる。
 でも、なんか失言したって感じで途中で切られたのが気になるよう……な……

「って、せいふく……?」
「あー、えーっと……うん。ようし、聞かなかったことに――」
「できないよっ! 制服って、まさか……?」
「うん、だいじょうぶ。すっごくかわいいから問題ないのです」
「って、問題おおありだよー!」
「うわああああん! うっかりしゃべっちゃったー!」

 慌てて小毬さんに携帯を見せてくれるように頼むけど、なかなか見せてくれない。
 けど、何度も頼んでようやく写真のフォルダを見せてもらうと案の定、前に一度連れて行かれた女子寮でのお泊り会の時の写真が。
 って、こんな風に加工して何考えてるんだあの人はー!

「うん、これは消そ――」
「わーだめー! 消したらもったいないよ〜」
「もったいなくないよ! むしろ凄い恥ずかしいよ!」
「理樹君からのメール画像なのー。毎回メール来る時にみるのがすごい楽しみなんだよ?」
「もっとダメだよ!」

 人の往来できゃーきゃーと携帯電話の取り合いを繰り広げる。
 はた目から見たら、もしかしたら浮気疑惑とか、そういう喧嘩に見えるのかもしれないけど、ある意味それ以上に必死で重要だ。
 結局、最後は半分涙目でお願いされて消すことはできなかったけど……

「それで、その写真を持ってるのはほぼ全員と思っていいのかな?」
「う、うんー……あ、あとさーちゃんとかなちゃんも持ってたかも……」
「ってあの二人も!?」

 とりあえず、小毬さん以外の写真は完全に消去することだけは心に誓った。








「ふぁー、おいしいね〜」
「うん、あんまり中にあるお店って美味しくないって聞いてたんだけど」

 たくさんまわって、夜になる少し前に早めに調べてたカフェに入って食事を取ることにした。
 たまに聞いたりする話だと「パーク内のカフェとかレストランはあんまり美味しくない」とか聞くこともあったんだけど、そんなことはなかった。
 普通においしいし、お店の雰囲気もよかった。

「でも、まだ早い時間なのにすごい混んでるね……」
「うん、早めに入って正解だったね〜」
「まあ、パレード見るために早めに食べようっていう人たちが多いんだと思うけど」
「私たちもそうだしね」

 お互いくすりと笑いあう。

「あ、これもおいしい〜」
「ほんと? どれ」
「ほら、これだよ〜」

 どれ、と聞いて出てきたのはフォークにまかれたパスタ。
 そのフォークの向こうにはニコニコとした顔の小毬さん。

「はい、あーん」
「えー、っと……」

 右を向いて、左を向いて、前に向きなおる。
 正面には変わらずにこにこ顔の小毬さん。まわりには満席になるくらいのお客さんたち。
 逃げ場はなくて、でも流石にこのまま素直に口に運ぶには人が多すぎる。

「おいしいよ?」
「いや、そうじゃなくて……ああ、もう」

 そうじゃないといいかけて、諦める。
 こうなったら小毬さんは絶対に引かないし、このままでいたらきっと次は涙目で聞いてくるのは目に見えてるし。

「えー、っと……あ、あーん」
「はい、あーん」

 覚悟を決めて、一口。
 多分顔は真っ赤だと思う。羞恥と、でもちょっとした幸せを同時に感じながらパスタを飲み込む。

「あ、おいしい……」
「ね、おいしいでしょ」
「うん。それじゃあ、もらいっぱなしなのも悪いし、こっちのも食べてみて」
「うん、あーん」
「え、っと……い、言わなきゃ、ダメ?」

 かわいらしくそう言った小毬さんに、流石に恥ずかしくてそう聞く。

「ふぇ……食べさせてくれないの?」

 そして涙目でそう聞かれる。
 半ば諦めも入りつつ、フォークで刺したものを小毬さんの方に差し出して

「あ、あーん」
「あーん♪」

 ぱく、っと小毬さんが口に入れる。
 そして「おいしいー」と幸せそうな表情で食べている。
 まあ、こんな表情が見れたんだから恥ずかしさを耐えた甲斐はあったかもしれない。
 そんなことを考えながら食べてたら、奥の方の席から何か騒ぎ声が聞こえた。

「ふぇ?」
「なにかあったのかな?」

 二人で顔を見合せ、首をかしげる。
 そしてその騒ぎのあったほうの席を見ようと振り返ったところで。」

「うわ、ちょ、ちょっとまって!」
「待ってる暇なんかないよー! ほら、急いで急いで!」
「ほわっ!?」
「うわっ」

 ものすごい勢いで二人の男の子と女の子がすぐ横の通路を駆け抜けていく。

「あ、お客様おつり――」
「ごめん、そんな暇ないー!」

 そのまま、何もわからないまま嵐のごとくカフェを出て行った。

「なんだったんだろ………ねえ、こま――うわ!? だ、だいじょうぶ!?」
「あうー……目が回ったよぉ〜」

 後に残ったのは、さっきの二人組が通った際に目を回した小毬さんだけだった。









「お父さん、はやくはやく〜!」
「ほら智也さん、急いでくださいっ!」
「わかった、わかったからちょっと待て!」

 人でがやがやと混む中を、どこかにスペースがないかと歩きまわる。

「あ、小毬さんあそこ!」
「よかったー、まだ空いてる場所あった〜」

 運良くまだ空いてる一角を見つけて、そこを確保する。
 準備がいい小毬さんが持ってきたシートを敷いて、それに座る。

「もうちょっと遅かったら、席取れなかったかもね」
「うん、早めにご飯食べてて正解だったかも」

 夜の一大イベント、そして最大の目玉でもあるパレードを見るための座席取りに、なんとかギリギリで滑り込む。
 ほっと一息をつく。あとはパレードが始まるのを待つだけだ。

「はい、理樹君。お茶でもどうぞ〜」
「あ、ありがとう。どこかで買っておいたの?」
「うん、ここに来るちょっと前に。あったかいホットココアですよー」
「……うん、甘くておいしい」
「私ものもーっと」

 もう一つ小毬さんもとりだして、ココアに口をつける。
 そしてほわーっとした幸せそうな表情になって、ココアを味わう。

「寒いからココアがおいしいねー」
「うん、流石に夜になったら少し寒くなってきたし」

 ぴっちりと閉めたコートの上からでも、夜の冷気はどこからともなく入ってきて体を凍えさせる。
 海辺にある施設だから余計に風が寒いのもあるかもしれない。
 すこし熱いくらいのココアが、今はとても美味しい。

「小毬さんは寒くない?」
「ふぇ? あ、うーん……ちょっと寒いかも」
「使い捨てカイロとか持ってくればよかったかなぁ」

 耐えられないほどじゃないけど、さすがに動いてないとちょっと辛い。
 今さらながらにそこまで気が回らなかったことに少し後悔する。

「うーん……理樹君も寒い?」
「さすがに少しね。でも耐えられるしパレードは見られるよ」
「あ、うん。それはうれしいけど……」

 何か歯切れ悪く、ちらちらとこっちを見てくる小毬さんに首をかしげる。
 顔を真っ赤にしたと思ったら、なにやらぐっと手を握ったりしてせわしなく表情をコロコロと変えている。
 やがて何か決意したのか、「ようしっ」というと僕の方を見上げる。

「あ、あのですね理樹君!」
「う、うん」

 なにやら気迫の入った呼びかけに、思わずつっかえながら返す。

「冬の夜は寒いのです」
「うん、そうだね」
「そして海辺の風はもっと寒いです」
「うん」

 指をぴっと立てて、何かを説明するような感じでそう言う小毬さん。

「そして、一人だとそれはとっても辛いのです。で、でもきっと二人なら暖かいのです。だから、えっと、あうー……」

 段々と語尾に行くにつれて、小毬さんの口調が小さくなっていく。
 そこまで言われて、やっと小毬さんが言いたいことが分かった。

「えっと……もっとくっついて座る?」
「……うんっ」

 破顔一笑、満面の笑みを浮かべた小毬さんがぎゅっとくっ付いてきて頭を肩に乗せられる。
 そして上目づかいに僕を覗き込んでくる。

「えへへ、温かいですね〜」
「うん、そうだね」

 お互い顔を真っ赤にしながら、でも笑い合う。
 そして、今日の出来事を話しているうちに、パレードが始まった。







「ふぁー、すっごいきれいだったねー」

 パレードを見終わって、夢見心地に小毬さんは歩いている。
 こうして手をつないで歩いてなかったら、スキップでもしだしそうな感じだ。

「あれならもう一度見たくなるよね」
「うん。今度はみんなで見てみたいなぁ」
「みんなでかぁ……」

 みんなで見たときの事を想像してみる。
 きっとクドは純粋に目を輝かせてみて、西園さんは静かに見て楽しむんだろう。
 鈴は無言で食い入るように見て、葉留佳さんはきっとすごいすごいとはしゃぐんだと思う。
 真人や謙吾はきっと無駄に張り合おうとしだしそうだし、来ヶ谷さんは……少し想像できない。
 意外とすっごい気に入って、鈴みたいに真剣に眺めてるかもしれない。
 そして、恭介はきっと影響を受けて次の日あたりに「パレードをするぞ」とか言い出したりしそうだ。

「うん、それも楽しそうだね」
「きょーすけさんとか、次の日あたりに『パレードをしよう』とか言いだしちゃいそうだけどね」
「あ、やっぱり小毬さんもそう思った?」
「理樹君も?」
「うん」

 二人で顔を見合せて、そして笑い出す。

「ね、理樹君」
「ん、なに?」
「また、来ようね」
「……うん、みんなとも。それに、また二人で、ね」
「うんっ」


あとがき



えーっと…………途中から力尽きましたorz
3、4個バランスの都合だったり時間的にだったり気力的にだったりで削られてます。
あうー、もっとこまりんを可愛く描きたかったんですけど、実力不足でした。
遊園地、意外と書きづらかったです。思ったよりもアトラクションのことって表現しづらくて、一つ勉強になりました。
いつかどこかで、機会があったら削除された部分を修正して出しなおしたいです!


ではでは、稚拙ですがお読みいただきありがとうございましたー!















お囃子・感想などいただけましたら。

おなまえ(省略可)



お囃子!(→盛大)

ぱち ぱちぱち ぱちぱちぱち

よろしければ何か一言!(省略可)





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