『バーニング・クリスマス! Side YUIKO』  
 
 
 私、来ヶ谷唯湖は、恋人の直枝理樹と過ごした初めてのクリスマスを生涯忘れる事は無いだろう。


「12月23日にデート?」
「うん、12月24日はリトルバスターズ皆でパーティーやるから、その前にと思ってるんだけど、どうかな?」
11月中頃、理樹君が私をデートに誘ってくれた。
「ふむふむ、そうやって、デートとプレゼントの二段構えで私を喜ばせておいて、夜は私としっぽりむふふな性夜を楽しもうという腹だな?」
「いやいやいや、そこまでは考えて無いよ!」
「なんだつまらん、理樹君がそのつもりなら、超セクシーな勝負下着を着けてあげようと思ったのに」
理樹君が『えっ、悪いの僕?』と言う顔をする。これだから理樹君弄りはやめられない。
「まぁ良い。23日は予定を空けておくよ」
断る理由は何も無い。
「ただ、これから暫くの間時間取れないと思うんだ」
「私へのプレゼントを買う為にアルバイトでもするのか?」
本当は分かっていても黙ってやるのが優しさなのだろうが、これが私だし、そのあたりは理樹君も承知の上だろう。
「そのつもりなんだけど、良い?」
「私としては、プレゼントよりも君が側に居てくれれば良いんだが、理樹君とて男の子としての意地も有るだろうしな。了解だ」
元々物への執着が薄い私だから、理樹君>プレゼントなのだが、理樹君が私の為に頑張ろうとしているのに水を差すのも無粋だろう。
それに私も前から考えていた計画を実行に移そうと思っていたので、丁度良かったのもある。
「ありがとう来ヶ谷さん」
「構わないさ、私もこれから暫くの間、放課後は君との時間が取れないと言おうと思ってたからな」
「あ、そうなんだ」
「だから、君に寂しい思いをさせてしまうかもしれないが、許して欲しい」
「ううん、そんな事無いよ。それはお互い様だし」
「やはり理樹君は優しいな、だからそんな君にはこれをあげよう」
彼に紙袋を手渡す。
「なんだろう? うえええええええっ!?」
ドッキリ大成功。
「うむ、私に会えない寂しさをそれで紛らわせて貰おうと思ってね。あぁ、その下着は私の今一番のお気に入りだ、堪能すると良い」
「本当、勘弁して下さい」
慌てて紙袋を押し返してくる。
「そうか、残念だ」
まぁ、本気で喜ばれたらそれはそれで考え物だがな。
「それに、やっぱり下着や写真より、本物の来ヶ谷さんの方が断然良いからさ」
「う゛っ、またそんな恥かしい事を言ってくれちゃって」
思わぬカウンターに顔が赤くなるのを自覚する。
「と、とにかく事情は理解した。プレゼント期待してるぞ、理樹君」
「が、頑張ります」
これ以上付け入る隙を与えないように私は話を切り上げた。


 理樹君とそんな話をした翌日の放課後、私は計画を確実な物にする為、小毬君とクドリャフカ君を私の部屋に招いた。
「すまないな、急に呼び出してしまって」
「それは良いよ〜。それよりもゆいちゃんが私とクーちゃんにお願いってなぁに?」
小毬君のその呼び方について訂正するのはもう諦めた。ここぞという時の頑固さは理樹君に匹敵する。
「私で良ければお手伝いします」
「この前君達は今年は編み物をするって言ってたな?」
「うん、そうだよ〜」
小毬君は鈴君に、クドリャフカ君は佳奈多君にそれぞれマフラーを編むと聞いている。
「そのついでで構わないから、私にマフラーの編み方を教えてくれないだろうか?」
「ほえぇぇぇぇぇっ!?」
「わふ〜っ!?」
二人が驚きで目を丸くする。普段どう見られてるんだ私は?
「私が編み物は変か?」
なんだか悔しいのでちょっと拗ねてみる。
「ち、ちちちちち違うの〜、怒らないで〜。変だなんて思ってないから〜」
「そ、そそそそうなのです。おかしくなんて無いのです。ただ、意外だっただけなのです」
「意外?」
「はい、来ヶ谷さんなら編み物なんてお茶の子さいさいで出来るものだと思ってたので」
「うん、ゆいちゃん何でも出来るからね〜」
自分の万能ぶりがこんなとこで仇になろうとは。
「私だって何でも出来るって訳じゃ無いさ。それに編み物はやった事が無い。だから君達に協力を頼みたい」
「そっか〜。ようしっ! 私で良ければ教えてあげるね」
「不肖能美クドリャフカ、来ヶ谷さんの為に一肌脱ぎましょう」
「あ〜クドリャフカ君、一肌と言わず全裸でもおねーさんは構わないぞ〜?」
「わふ〜っ!? て、てててて貞操の危機なのです〜?」
「もう、ダメだよゆいちゃん」
「はっはっは。すまんすまん。まぁ、よろしく頼む」
それから放課後は三人で編み物をするようになった。


「思ったより上手く行かないものだな」
「ねぇゆいちゃん、編み物で大切な事は何か分かる?」
ある日、苦戦する私に小毬君がそんな事を聞いてきた。
「やはり、編み目を間違えず、綺麗に作る事じゃないか? 着けてくれる人にも失礼だしな」
「ぶっぶー、大大大不正解ー」
「な゛っ!?」
小毬君からダメ出しをされようとは。
「ゆいちゃん、編み物もそうだけど物を作る時に大切なのは愛情を込める事です」
こんな恥かしい台詞をさらりと素で言えるのは小毬君くらいだと思う。
「編み物だったら、着けてくれる人があったかくなりますようにって、一編み一編みに想いを込めて編むんだよ」
「想いを込める、か」
「だいじょ〜うぶ、ゆいちゃんの想いが篭もったマフラーなら、理樹君きっと喜んでくれるよ」
「わ、私は理樹君に編むとは一言も言って無いぞ?」
「ごまかさなくても良いのですよ、来ヶ谷さん。来ヶ谷さんはリキのすてでぃ〜なのですから」
「クドリャフカ君まで」
ごまかせるとは思っていなかったが、改めて他人に言われると恥かしいものがある。
「ゆいちゃん顔真っ赤。すっごい可愛いよ〜♪」
「はい、乙女な来ヶ谷さんは以前よりもずっと綺麗になってると思うのですよ♪」
二人して私をからかう。くそっ、私が弄られる立場になろうとは。
「こ、この事は他言無用で頼む」
「大丈夫です。こう見えても口は固いですから安心して下さい」
「私達だけの秘密だね♪」
くすくすと小毬君とクドリャフカ君が笑う。気恥ずかしさも有ったが、同時に嬉しさも感じてしまい、私も末期だなと心で苦笑した。
それからも空いている時間は二人と一緒に、時には一人で教えてもらった事を反芻しながら編み続けた。
理樹君が喜んでくれる事を願いながら。
何度か編み目を間違えたりもしたが、自分が予想していたよりも早く完成させる事が出来た。
一通りチェックしてみたが問題点は見当たらない、上出来だ。
後はデート当日に渡すだけだ。



 12月23日デート当日。
目が覚めた私は、シャワーを浴びた後、身支度を整え、完成したマフラーと身の回りの物をバッグに詰めて部屋を出た。
時間ぴったりに校門に行くと、既に理樹君が待っていた。
「やぁ、理樹君。お待たせ」
「ううん、僕がただ早く来ただけだからさ」
スーツ風のジャケットにスラックス、その上にロングコートを身に付け、普段飾らない彼が、一生懸命おしゃれしているのが見てとれた。
そんな彼が私の顔を惚けた表情で見詰めている。
「どうした? 私の顔をじろじろ見て、照れるじゃないか」
「あ、ごめん、いつもより唇に艶が有ったから口紅してるのかなぁってね?」
「あぁ、これはグロスのリップクリームだよ。唇はしっかり保護しないとな。ひび割れた唇で君とキスするなんて、私のプライドが許さない」
「そ、そうですか」
「今度はどうしたんだ? 申し訳なさそうな顔して」
「あ〜、僕そこまでケアとか考えた事無かったからさ」
「それは男の子と女の子の意識の違いというものだよ。そんなに気にする事は無い」
「そうかもしれないけど」
過失をした訳でも無いのに謝る。私の事を想うからこそとは分かっているが、折角のデートに最初からケチがついたのでは面白くない。
こういう時はショック療法に限る。
「まぁ、どうしても気になると言うなら、こうすれば良い」
「えっ、うむっ!?」
校門の影に引き込み、唇を奪う。それから理樹君の唇にいつもより強めに私の唇を押し付けてリップを塗りつける。
「ぷはっ、どうしたの急に」
「良いから、唇を触ってみろ」
「へ?」
「それで今日の所は大丈夫だろう」
バッグからコンパクトとリップを取り出し、手早く塗りなおす。
「うん、これでOKだな」
「だからってこんな事しなくても普通に塗ってくれれば良かったんじゃ?」
「嫌だったのか?」
「いえ、大歓迎です」
「なら、良いじゃないか。ほらほら今日は折角のデートなんだ、しっかりエスコートを頼むぞ?」
「そうだね、それじゃ行こうか」
理樹君の腕に自分の腕を絡ませる。抱きつくといまだに照れて赤くなる理樹君に気を良くしつつ、クリスマスの町に繰り出した。


 まず最初はデートの定番の映画鑑賞。
普段は、休日に私の部屋で一緒にコメディーやアクション映画を見る事が多い。
(理樹君の部屋だと筋肉とか(21)とかマーン!等がしょっちゅう邪魔をするのでその対応に追われ静かに鑑賞できない為だ)
今日は折角のデートだからと理樹君はよりにもよって恋愛映画を選択しやがった。
二人きりで見るのも恥かしいのに、他に人間が大勢居る映画館で恋愛映画とは。理樹君のサディストめ。
『柄じゃない』とさんざんゴネて拒否したにも関わらず『まぁまぁ』と強引に映画館に引っ張り込まれた。
それからも少し文句を言ってやったが、実際に始まると、私は映画に引き込まれて最後までずっと見続けてしまった。
 映画が終って、映画館を出る。
少し切なくて、でも、最後はハッピーエンドで終わる。そんなとある北の町の奇跡をモチーフにした話。
余韻に浸っていた私は、彼の腕にぎゅっと抱き付いた。
「どうしたの? 映画面白くなかった?」
「あぁ、違うんだ。ただ、君をもっと感じたいと思ったんだ。あの映画にあてられたのかもしれないな」
「そっか」
「映画の中で出てきた『何気無い日常はそれこそ奇跡が積み重なって出来ているのかもしれない』という言葉。無味乾燥な日常を過ごしていたかつての
私ならきっと嘲笑しただろう。でも、君と出会って、リトルバスターズの皆と過ごして、そしてあの事故を乗り越えた今なら、それも実感出来る」
「うん、そうだね。僕もあの事故でそれを強く実感させられた」
私達は日常がいとも簡単に非日常になってしまう事を身を持って体験した。
毎日を退屈に思い、刹那的快楽だけを求めていたかつての自分が、いかにつまらない人生を送っていたことかを改めて思い知る。
リトルバスターズの皆と、そして理樹君と出会えた事は私の最高の宝物だと、今なら胸を張って言える。
「だから、もっと君を感じていたい。暫くこのままでいさせてくれ」
こうやって理樹君と過ごせる事をもっともっと実感したかった私は、そう理樹君にお願いした。
「良いよ、僕ももっと来ヶ谷さんを感じていたい」
理樹君も同じ事を思っていたようで、私を抱き寄せしばらくそうしていてくれた。


 映画館を出たら丁度お昼だったので、近くの喫茶店で軽く食事を摂って、クリスマス一色の町の中を二人で歩く。
それからデパートに入り、夕食の時間までの時間を潰した。
 CDコーナーでぶっとんだ題名のCDを理樹君に見せては呆れさせたり、嫌がる彼を下着売り場に連れて行こうとしたり(「男が下着売り場なんて入れないよ」
と全力で抵抗したので、今度女装させてから連れて行こうと思う、恋人として彼の下着の好みの傾向も気になるしな)
ゲームセンターで格闘ゲームで対戦してこてんぱんにしてしまったり、ガンシューティングで1コインクリアを達成したり、UFOキャッチャーであえて不細工な
ぬいぐるみをゲットし、それを小毬君やクドリャフカ君にあげてその反応が見たい、と意地悪な計画を立てようとして理樹君に怒られたりした。


 そして、私達は理樹君がは前日予約をしていたと言うレストランの中に居る。
「なぁ、理樹君。ここ高かったんじゃないのか?」
「大丈夫だよ。クリスマスディナーで格安になってるんだ」
デートに備えて、タウン情報誌を読んでリーズナブルな所を選んだから問題無いと彼は言う。
私の為に情報誌を漁り、必死で探してくれる理樹君を想像して頬が緩む。
「そうか、それじゃあ遠慮なくご馳走になろう」
二人でテーブルに着き、出された料理に舌鼓を打つ。
海外で生活した事も有り、この手の食事は私にとっては慣れたものだったが、理樹君は慣れて無かったのか悪戦苦闘していた。
「コース料理は外側から順番にナイフとフォークを使うんだ。それとスプーンの尻は人に見せ無いように使うんだ」
見ていられなかったので、ちょっとアドバイスをしたが、なおさらへこむ理樹君。
「そんなにしょげるな理樹君。こういう機会は滅多に無いだろうし、これから覚えて行けば良いじゃないか。今後も誘ってくれるんだろう?」
私の言葉に次こそはと言う顔になる理樹君。
やはり君はそうでなくてはな。


  レストランを出て、二人学園の寮までの道を並んで歩く。理樹君が真剣な面持ちをしている。
「ねぇ来ヶ谷さん。ちょっとそこの公園入らない?」
目の前に見えた学園近くの公園を指差す。
「ん? 理樹君は野外プレイが良いのか? 流石にこの時期は寒いんじゃないか?」
「ぶっ! いや、やらないから」
流れ的に彼が何をするつもりなのか悟った私は、ちょっとふざけてみた。本気なのだろう、最低限なツッコミしか返って来ない。
「そうか、まぁ時間は有るから構わないよ」
彼の真剣な気持ちを茶化すのも悪いと思ったので私もそれ以上ふざける事はやめた。
二人で誰も居ない公園のベンチに座る。
「もう、分かってると思うけど。これプレゼント」
コートのポケットに入れていた小箱を私に渡す。
「ここで開けて良いのか?」
彼は黙って頷く。開けてすぐに私は驚きで目を見開いた。
「理樹君。これ」
私の手の中に有る物は、シンプルなデザインのシルバーリング。イヤリングやネックレスかなと思っていたので、これは完全に予想外だった。
「うん、今の僕にはこれが精一杯」
「これ、結構値段が張ったんじゃないか?」
私もアクセサリーに詳しい訳では無いが、これが学生が買うにしては高価な代物だと言うのは分かる。
「まぁ、ちょっと痛かったけどね。でも、来ヶ谷さんと二人で過ごす初めてのクリスマスだったし、ちょっと頑張ったんだ。僕は来ヶ谷さんに釣り合ってる
とはまだ思えない。でも努力して胸を張って来ヶ谷さんの隣に立てるようになってみせる。だから来ヶ谷さんの隣、予約して良いかな?」
私を愛してくれて、そして、これから先も共に歩いてくれる。
彼の言葉と指輪からその想いが伝わり、私の胸が熱くなる。
「馬鹿、こんなとんでもない女の為に頑張って。君に相応しくないのはむしろ私の方だ」
「そんな事無いよ、僕にとっては誰よりも素敵で可愛い一人の女の子だよ」
彼の優しさに、歓喜の涙がとめどなく私の瞳から流れる。
「ふふふ、嬉し涙を流すなんて一生涯無いと思っていた。君はいつも私の想像を飛び越える。良いよ理樹君。
私の隣は一生涯君だけの物だ、だから君の隣も私の物だぞ? 私は嫉妬深いぞ? セクハラ沢山しちゃうぞ? 
二度と離してやらんぞ? それでも良いんだな?」
無駄な抵抗だと分かっていても、あえて自分の悪い所を上げて突き離してみる、だけど
「そんな所全部ひっくるめて僕は来ヶ谷唯湖って女の子を愛しているんだから」
ほら、こんなにも彼は優しい。
「全く君はとんでも無い物を盗んでくれたな。ルパン3世も真っ青だ」
「えっと、それってやっぱり」
「そう、私のハート、だよ」
彼をぎゅっと抱き締めてキスをした。



 「あぁ、そうだ。こんな素敵なプレゼントをもらった後じゃ見劣りしてしまうだろうが」
私はバックから紙袋を取り出して彼に手渡す。
「私からのクリスマスプレゼントだ。受け取って欲しい」
「有難う、来ヶ谷さん。でもこれ来ヶ谷さんの下着とかじゃないよね?」
「いくらなんでもこんな時にそんな悪戯するほど無粋じゃないぞ、私は」
「ごめんごめん」
私の自業自得なのだろうが、理樹君も結構失礼だ。
「マフラー? 来ヶ谷さん、もしかしてこれって」
「うむ、私の手編みだ。何分編み物は初めてだったんでな、経験の有る小毬君やクドリャフカ君に教わりながら編んだんだ」
「有難う、凄く嬉しいよ」
「君の指輪にくらべたら大した事じゃないさ」
「そんな事無い、今、体も心も凄く暖かいよ」
理樹君が心から喜んでくれている、編んだ甲斐が有ったと思う。
教えてくれた小毬君とクドリャフカ君にはまた改めてお礼をしよう。
「そうか、なら頑張った甲斐が有ったよ。なぁ、理樹君お願いが二つ有るんだ」
「何? 僕で良ければ何でも聞くよ」
「今晩、ずっと私と一緒に居て欲しい。今日は1秒たりとも君と離れていたくない」
この愛しい人と僅かな時間も離れていたくない、彼に身も心も委ねて甘えてしまいたかった。
「えと、あの、それ」
「ええい、察しろ。鈍い男は嫌いだぞ」
自分の発言に恥かしさを感じ、彼に背を向ける。
「ぼ、僕も来ヶ谷さんと一緒に居たい、です」
照れたのか、上ずった声で了承の返事をしてくれた。
「それともう一つ、これからは私の事は名前で呼んでくれ」
「分かったよ、唯湖さん」
「なっ、いきなり順応し過ぎだろうそれは」
もう少し照れてどもりながら『ゆ、ゆゆ唯湖さん』と一生懸命言おうと頑張る姿を予想していたのに。
「でも、唯湖さんがOKしたんだから、早く慣れてね? 唯湖さん」
完全に計算外だ。
「くっ、ここぞとばかりに。やっぱり君はドSだ。もう良い、早く私の部屋に行くぞ」
「はいはい♪」
楽しそうな理樹君の声が凄く憎らしい。
「全くもう、こうなったらベッドでたっぷり搾り取ってやる」
「あ、待ってよ唯湖さん」
嬉しさと恥かしさと照れで思考がぐちゃぐちゃになってしまった私に出来る事は、憎まれ口を叩きながら早足で部屋に戻る事だけだった。



 「結局聖夜が性夜になってしまったな」
華奢な見た目よりはずっと逞しい彼の胸板に頭を乗せて呟く私。
「誘ったのは確かに私だが、調子に乗って何度も何度も。可愛い顔して本当にエロスだな君は」
愛されて、求められて嬉しくはあるが、腰が抜ける程はヤリ過ぎじゃないか理樹君?
「ちょっ、唯湖さんだってもっと、もっとっておねだりしてきたじゃないか? 僕だけのせいにしないでよ」
「そ、それは理樹君が上手だから、気持ち良くなってついおねだりしたくなっただけだ。だからやっぱり理樹君のせいだ」
搾り取ってやろうと思っていたのに、理樹君の技巧に翻弄され、最後には彼にしがみついて甘える事しか出来なくなっていた。
全くもって不覚だ。
「いやいやいやいや、だからそうなっちゃうのは唯湖さんの反応が可愛いからもっと見たくなるだけで」
「理樹君が」
「唯湖さんが、ってやめようか」
「そうだな、実に不毛だ。私は理樹君が好きで、理樹君は私が好き。だからついつい求め過ぎてしまうって事で妥協しよう」
「異議無し、でも、次からはもうちょっと控えようか、体に力入らないや」
「うむ、葉留佳君あたりに見られたらおもちゃにされること必至だ」
それを想像してしまったのか、理樹君の顔が引きつる。
まぁ、おもちゃにしようものならその後、『地獄の方がまだマシ!』と言いたくなるようなお仕置きをくれてやるつもりだが。
「こんなオチがついてしまったが、有難う理樹君。今までで最高のクリスマスだ」
そう言う私に、理樹君は不敵な笑みを浮かべる。
「来年はもっと喜んで貰えるよう頑張るからさ、期待してて欲しいな」
「ほう、いつになく強気な発言だな? だが、私のハードルは高いぞ?」
「だったらそれに応えるまでだよ。それと、遅くなっちゃったけどメリークリスマス唯湖さん。これからもよろしく」
「メリークリスマス理樹君。それは私の台詞だよ」
私は彼の頬に軽くキスをし、ベッドの中で彼に甘えながら、パーティーが始まるまでの時間を過ごした。

 

 実は、パーティーでの事はあまり覚えていない。 
理樹君が突然メイド服で現れたかと思ったら、恭介氏にスカートの端を持ち上げて挨拶し、『ご奉仕いたしますご主人様♪』
なんて言い出した時点で私の理性の大半が吹っ飛んでしまったからだ。
理樹君がメイド喫茶で女装してアルバイトしていただと? 
不特定多数の野郎達に『お帰りなさいご主人様♪』なんて言ってただと?
私を差し置いて理樹君とメイドさんとご主人様プレイだと?
この私ですらそんなプレイした事無いんだぞっ?
この時の私の心境を語るならば正しく「最高にハイって奴だっ!」だろう。
完全にプッツンしてた私は、あの時は時間すら超越出来そうな高揚感が有った。
恭介氏をぼこぼこにしている姿はさながらDI○様(英語のオーじゃなく記号の丸だ念の為)のようだったと理樹君は後で教えてくれた。
この後、理樹君を弄る際には私の許可を必ず取ろうと言う暗黙の了解が出来たとか。
なお、恭介氏を締め上げて何故こんな事をしたのかと聞いてみたら、理樹君が私とばかりいちゃいちゃして最近かまってくれず悔しかったからだとか。
相変わらず彼の発想はぶっ飛んでいる、私ですら予想出来ない。
まぁ、今回メンバー全員+αにドン引きされリーダーとしての評価ががた落ちになったので、少しは懲りたと思いたい。



 パーティーの翌日私の部屋。
「理樹ちゃん、お茶」
「はーいただいまー」
私が差し出したカップに紅茶を注ぐメイド服姿の理樹君。
「そんな愉快な事を私に黙っていた罰だ。今日一日メイド服を着てのご奉仕を命じる」
「分かったよ・・・・・・とほほ」
とまぁこういう訳だ。
君がいけないんだぞ理樹君? 全力で嫌がれば無理強いするつもり無いんだからな。
だけど、『君がしょうがないなぁ』って顔で苦笑して受け入れてくれるからついつい甘えて無茶を言ってしまうんだぞ?
「あの時はつい頭に来て恭介氏をフルボッコしてしまったが、これはおかしくなってもしょうがないな、可愛すぎるぞ理樹君」
こんな可愛い彼が不特定多数の野郎達にいやらしい目で見られていたかと思うと、凄く不愉快になる。
「僕としては凄く複雑だよ」
「心配するな、君が男の子だって事は私がちゃんと理解してるからな」
独占欲に駆られた私は、理樹君を背後からぎゅっと抱き締めた。
「うん、有難う」
「特にここは立派に男の子してるから安心して良いぞ理樹君?」
「あっ、駄目っ、そこは握っちゃらめぇぇぇぇぇぇっ」
あぁ、可愛い。我慢なんてしてやるものか。
「むぅ、なんかムラムラしてきた。良しこのまましっぽりむふふと行こうか」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
彼を押し倒し、存分に愛でながら、彼とこれからも一緒に居られる事を嬉しく思う私だった。
「愛してるぞ、理樹君♪」


バーニングクリスマス! Side YUIKO FIN
























お囃子・感想などいただけましたら。

おなまえ(省略可)



お囃子!(→盛大)

ぱち ぱちぱち ぱちぱちぱち

よろしければ何か一言!(省略可)





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