雨の日。
私は雨が好きだ。
漫画や小説で「雨音を子守唄に」なんていうのに憧れた事もある。
雨が降ると、用も無いのに外に出る。
傘を差し、どこに行くでもなく、ただ歩く。
アスファルトが濡れる匂い。
雨が地面に落ちる音。
雨が傘を叩く音。
湿った空気の柔らかさ。
それらを邪魔することのない周りの静けさ。
私は夜に降る雨が好きなのだ。
夜十一時。
今日も私は外に出る。
大学生になり独り暮らしを始める時、親からは「夜の一人歩きはやめなさい」と言われたけれど、そんなことは忘れたことにしている。
私みたいなのを襲っても良いことないのに。
ん、男の人はそれでいいんだっけ?
まあそんなのはどうでもいい。
一応、防犯グッズの一つや二つは持っては行く。
外に出て傘を差す。
そう強くない雨。この程度なら服が濡れることもないだろう。
もし雨が強かったら、すぐに部屋に戻って寝るところだ。
この辺りは学生向けのアパートが多く、夜になると車の通りがほとんどない。
街灯の数も少なく、家やアパートの明かりで照らされている。
家々からの声はほとんど聞こえてこない。車の通りも少ないから静かなものだ。
私はいつものように当てもなく歩いている。
パタパタと雨が傘を叩く。その感触も心地よい。
雨は今日の夕方から降っていて、アスファルトが濡れる匂いがしないのが少し残念。
湿度の上がった空気は最後に入るお風呂と同じでとても柔らかい。
軟らかいと言う方が正しいのだろうが、私はこちらでいいと思う。
包まれ、守られているという感じがする。
以前「雨が好きか嫌いか」で友人と話したことがあった。
私は当然好きと答え、好きな理由も話した。
その時は五、六人で話していたが誰一人として賛同を得られず、変人扱いされてしまった。
未だに雨が降っている日は「今日は歩くの?」と聞かれる。
はい、今日も歩いてますよ。
雨が作り出す空間の心地よさを堪能してますよ。
私は三十分ほど歩き回り、部屋に戻った。
あと少しで日付が変わる。
明日は一限目から講義。
雨の音が聞こえる中、私は穏やかな気持ちでベッドに寝転がった。